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個人的仏教探索 (11) [個人的仏教探索]

いよいよ「聖地チベット -ポタラ宮と天空の至宝-」を訪れる日が近づいた。今日は、各展示物についての基礎知識を再確認したい。私はこれを印刷して美術館へ持って行き、展示物の前で確認するつもりだ。今回の記事は拝観前の「まとめ」なので、前回の記事と一部重複するが、ご容赦いただきたい。

042 チャクラサンヴァラ父母仏立像タンカ
「サンヴァラ・タントラ」の主尊。母タントラの代表格。ヤブユム。青黒で四面十二臂。各面は3眼。忿怒相。象の生皮をまとい、人間の生首と髑髏で作られた輪を頚にかける。虎皮のパンツをはく。シヴァ神とその妃を踏みつける。サンヴァラ系タントラはあらゆるタントラの中で最も人気を博した。
ネット上の写真を見ると、展示物は金色一色で色分けされていない。図像的特徴は私が知るものと似ていて、生首と髑髏の輪もある。しかし色が付いていないためにわかりにくいか、少なくともインパクトに欠けると推測される。つまり展示来訪者にとってインパクトに欠け、ブログに書く気にならず、だからネット上の検索「チャクラサンヴァラ父母仏立像タンカ」にあまりヒットしなかったと私は推測する。私の推測が合っているかどうかは、実際に拝観すればわかるだろう。

043 カーラチャクラ父母仏立像
「カーラチャクラ・タントラ」の主尊。双入不二タントラの代表格。ヤブユム。主尊の図像的特徴やマンダラ(身口意具足時輪マンダラ)は複雑を極める。面の数は四面と少なめだが臂は二十四臂と多い。体は5色に色分けされている。各面は3眼。控えめな忿怒相。
ネット上の写真を見ると、展示物は金色一色で色分けされていない。しかしタンカと違い3次元だからインパクトがある。ネット上の写真は正面から撮ったものが比較的多いが、これは「正面であって正面でない」。なぜなら写っている顔はユムの後ろの顔だし、写っている体はユムの背中だ。何よりも、これでは見た人がユムの表情をカーラチャクラ全体の印象として受け取ってしまう。ヤブの正面の顔の表情を写そうとすると、撮影者は苦労しそうだ。そしてその微妙なアングルからの写真もまたネット上にあった。このアングルからの写真こそが、ヤブユムであるカーラチャクラの特徴を一番伝えられる写真ということになるだろう。ヤブの顔が写り、ユムの(横と後ろの)顔も写り、父母仏が抱擁しているのだとわかる写真が。

044 グヒヤサマージャ坐像タンカ
父タントラ。無上瑜伽タントラの初期に現れた「グヒヤサマージャ・タントラ」の主尊であり、父タントラの代表格。忿怒相でなく寂静相なのが特徴。ヤブユム。ジュニャーナパーダ流の文殊金剛(サフラン色)と聖者流の阿閦金剛(青)がある。三面六臂。各面は3眼。金剛跏趺坐。とくにゲルク派がこれを讃え、自派のイダムとする。
ネット上の写真を見ると、展示物は青色だ。聖者流の阿閦金剛ということになる。今回の展示物はヤブユムではない。

045 ヘーヴァジュラ父母仏立像
「ヘーヴァジュラ・タントラ」の主尊。母タントラ。ヘーヴァジュラ・タントラは最もエロティックな比喩や隠喩に富む。ということはもちろんヤブユム。八面十六臂。8つの面には青黒が多いが、白面、赤面、牙のある茶面が各1。果たして展示物は、手にカパーラをもつカパーラ・ヘーヴァジュラだろうか。忿怒相で青黒。人間の生首と髑髏で作られた輪を頚にかける。虎皮のパンツ。四魔を踏む。
展示物は金色一色で色分けされていない。ネット上の写真を見たところ顔が大きいようだが、それでも像全体の均整がとれていると感じる。十六臂が整然と並び、カーラチャクラ父母仏立像よりもわかりやすい。ネット上の写真は意外と少なかった。拝観者がカーラチャクラ父母仏立像のインパクトに圧倒されてブログでそちらを取り上げ、ヘーヴァジュラ父母仏立像のほうにあまり言及しないのだろうか。そういえばネット上の写真を見ただけでは大きさがわからない。カーラチャクラ父母仏立像は背景から察するに大きそうだが、ひょっとするとヘーヴァジュラ父母仏立像は小さいのだろうか。

046 ヤマーンタカ立像
047 ヤマーンタカ父母仏立像
父タントラ。私が知っているヤマーンタカは青黒、面は9もある。メインの面は水牛。その左右に面。頭の上にまた頭があり、正面、左右とこれで6面。さらにその頭の上にまた頭があり、正面、左右と全部で9面。面はたいてい3眼、忿怒相で、面ごとにさまざまな色に色分けされている。最上部の正面だけは文殊菩薩の柔和面。臂は34もあり、多すぎて何が何だかわからない。さまざまな持物。その中には恐ろしいものもある。象の生皮をまとい、人間の生首で作られた輪を頚にかける。ヤマーンタカのトレードマークかとも思える淫欲相。足で色々踏んづけているのはよくある通り。私はヤブユムのヤマーンタカを知らなかったが、今回父母仏立像が展示されると知りインターネットで調べてみた。水牛の顔と母仏の組み合わせがどうも想像しにくかったのだが、ネット上の写真に確かにある。
ネット上の写真を見ると、ヤマーンタカ立像は彩色されている。父母仏立像のほうは金色一色で色分けされていない。

051 マハーカーラ立像
マハーカーラについては私はかなり若いころに興味をもったことがあるので、ほんの少し知っている。でもそれ以後長い間ご無沙汰だったし、後期密教関係の手持ちの書物には載っていない。

061 カーラチャクラ・マンダラ タンカ
私が持っている書物にはカーラチャクラの曼荼羅は載っていない。インターネット上で探すと、大体どんな図像かはわかる。でも日本の非常に多くのサイトが、この曼荼羅を宗教として取り上げるのでなく、学問として取り上げるのでもなく、開運のお守りとして取り上げている。これでは、図像がもつ意味を知ることができない。意味を理解するにはタントラを理解しなければならないが、これは一般人には不可能に近く、仮にそのアウトラインだけでも知ろうとするならば研究者が書いた本を読み漁らなければならない。今回の「聖地チベット -ポタラ宮と天空の至宝-」を見に行くまでにはとても出来ない。
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