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標題電子ミュジーク・コンクレート(16) [  標題電子MC(補完計画)]

1. Reaperから呼び出したVSTにはMIDIのノートが送られない
2. XILS 3の最終出力部のCVによる制御は細かい芸当に向かないかもしれない
3. 記事休載のお知らせと、それでもMS-20は続くという予告




1. Reaperから呼び出したVSTにはMIDIのノートが送られない

エフェクターであるVSTは、普通は音程に依存せずに効果を付加する。普通はそれで困らない。ところが私は困った。

私は今、梵鐘002という音の高調波を減衰につれてカットしたい。

それを実現するには、普通はシンセのVCFのカットオフ周波数をEGで制御する。しかしXILS 3のFILTERはRESPONSEを上げているので、これのカットオフ周波数を変化させると音が変になってしまう。だから002の音色を作った後で、別のVCFで音を変えなければならない。

しかしXILS 3のVCFはひとつだけで、それはもう使っている。そこでMS-20FXを直列につなぐことを考えた。現在ReaperのトラックのfxとしてXILS 3だけが設定されているが、これにMS-20FXをAddする。AUDIO INをONにする必要があるので、MS-20でなくMS-20FXを使わなければならない。

MS-20FXのAUDIO INをONにする。VCOはどちらもLEVELを0、VCFはひとまず全帯域通過、PEAKは0、CUTOFF FREQUENCY MODULATIONをひとまず0、VCAはXILS 3のほうでかけているのでMS-20FXでは常に全開とし、ホイールをINITIAL GAINに接続して一杯に回す。

音を出してみたところ、XILS 3単独では歪まないのに、その後でMS-20FXを通すと歪んで聞こえた。XILS 3の音声出力レベルを絶対安全圏まで下げる目的で、RING MOD. のLEVELを0.54%まで落とす。最終的な音量が下がった分はReaperのマスターフェーダーを上げる。MIDI録音ではこのフェーダーは効かないが、今回はwavとして保存するので大丈夫ではないだろうか。

LPFをかけずに音を出す所まではうまく行った。次に高調波を減衰につれてカットする。MS-20FXのEG2のADSRを減衰音のエンベロープに設定する。これをVCAには通さず、VCFのカットオフ周波数に加算する。加算の分LPFのつまみの値は下げておく。

あらかじめ「ペンちゃんの不思議なけんばん」を起動して「監視ON」にしてあるのでPCのキーボードのキーを押せばXILS 3が発音し、MS-20FXではエンベロープに従って高音がカットされてゆくと考えた。

ところが、音が減衰しても音色が変わらない。調べてみたら、PCのキーボードのキーを押してもMS-20FXの鍵盤の鍵が押されないことがわかった。MS-20FXのせいなのだろうかと思い、VCOのLEVELを上げてMS-20FXのキーボードをクリックしたらこれは音が出たし、エンベロープも効いた。MS-20FXのせいではない。ということは、ReaperがMIDIのノート情報をVSTi(楽器)には送るがVST(エフェクター)には送らないということなのか。

VSTとしてシンセを使ってもトリガーが来ずEGが働かないならば、VSTiであるXILS 3で何とかするしかない。




2. XILS 3の最終出力部のCVによる制御は細かい芸当に向かないかもしれない

たしかにXILS 3にはVCFがひとつしかない。しかし最終出力部は2系統あり、それぞれにスタティック・フィルターが付いている。スタティックだからフィルター自体の効きはCVで変更できないが、出力の音量はCVで変更できる。

そこで、2系統の出力のうち片方をそのまま(高調波つき)とし、もう一方をスタティック・フィルターをLPFにして高調波をカットする。高調波をカットしたほうは音量をCVで変更せずそのまま出力し、高調波つきのほうはマトリックスのTRAPEZOIDをOUT LVLに接続し、[ENVELOPE SHAPER]のTRAPEZOIDつまみを右へ一杯に回す。両方のPAN EXT.をセンターにし、音をミックスする。

結果は、また音が変わらなかった。設定中に何となくわかっていた。この方法にはEGが2つ要る、と。高調波つきの出力はDECAYを極端に短くして、音の鳴り出し部分だけ高調波を強調しなければならない。しかしXILS 3にはVCFだけでなくEGもひとつしかないので、私は仕方なく、音を減衰するのに使うエンベロープを高調波制御にも使った。これでは、音の減衰につれて高調波が明らかに減ってゆく感じが出ない。

XILS 3の作者さんはシーケンサーまで付けているが、そんなものは今どき別ソフトとして用意すれば済むだろうに。それよりも、どうしてVCFやEGのモジュールを増やそうと思わなかったんだろう。

さらに、これはXILS 3の癖なのだろうが、音の立ち上がりが妙に軟弱になった。まず、ATTACKタイムを最短にすると立ち上がりがブツッという音に聞こえるので、私は少しATTACKタイムを設けていた。この状態でTRAPEZOID制御したほうの出力を聴いてみたら、音の立ち上がりがボワンとなっていた。それは理解できる。ATTACKタイムが最短ではないのだから。そこで私はATTACKタイムを最短にして再度試した。ところが、音の立ち上がりはそれでも鋭くなりきらなかった。厳密には、何度も試すと鋭い時と微妙に軟弱な時があるという不思議な現象が起きた。KEYBOARDのPORTAMENTOがONになっていたのでこれかと思いOFFにしたが結果は変わらず。

こういう失敗作の音をUPするのはあまり意味がないかもしれないが、私が嘘を言っていないという証拠に聴いてもらおう。2系統の出力をミックスしてwavにした時に上記の軟弱な立ち上がりがそのままwavになったので、それを聴いてもらおう。これでATTACKタイムが最短だ。立ち上がりが軟弱になった原因はATTACKそれ自体ではなく、最終出力のCVによる制御にあると思われる。



こちらが、今回色々いじる前の音。よっぽどましだ。



今回の記事は失敗の報告が多くて申し訳ないが、私が音色ひとつのために日夜頑張っているのはわかっていただけると思う。




3. 記事休載のお知らせと、それでもMS-20は続くという予告

ひとつ前にブログに出した記事で、私が天袋の整理を始めたと書いた。それが予想以上に大変で、他の事が出来ないでいる。今、けっして広くない私の部屋には天袋から下ろした本が積まれていて、布団を敷くのが大変だ。とにかく早くこれらの本を天袋に上げなければ。前の記事に書いたが、本の写真を撮りつつ作業を進めているので、少しずつしか進まない。そこで、「標題電子ミュジーク・コンクレート」は天袋の作業が終わるまで休むしかないと思う。

でも、進展もあった。天袋から昔のシンセの本が出て来た。多くは思い出としての価値しか残っていないが、一冊使える本があった。その本にはアコースティックな楽器音の作り方が実例つきで載っているのだが、その写真がこれだ。MS-20をお持ちの方なら、どこかで見たようなシンセのデザインだと気づくはず。

yokoku.jpg

私は、本当にこれで楽器音が作れるのかどうか試してみようと思った。実はすでに一度試した。本のとおりの数値ではディレイビブラートのタイミングと速度が違う。私がもっているのがソフトウェアMS-20で、この本は昔のハードとしてのMS-20を意図しているから、そのせいかもしれない。残響もかけてみた。ある程度それらしくなった。でも、それ以上をやるなら本格的に時間をとらないと駄目だと思った。本物のヴァイオリンの音と聴き比べながらGEQをかけたりしなければならないだろう。

この本に載っているのはヴァイオリンだけではない。次はギター、つまり弦楽器から始まり、管楽器、ドラムスなども載っている。手元にMS-20があるならば、試してみる価値はある。ただし、さっき書いたとおりに、まずは天袋を何とかしなくては。これに1ヶ月以上かかりそうだ。(前の記事では10月半ばまでかかると書いたが、週末の自由時間を使っての作業ではもっと長引きそうだ。)

ひとまず、「標題電子ミュジーク・コンクレート」は休載をお許しいただきたい。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(15) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 音色の保存読み込みができない無償版XILS 3は後から起動・設定する
2. XILS 3で梵鐘の音を作り保存した
3. 音色サンプルをふるいにかけた
4. 次にやること




1. 音色の保存読み込みができない無償版XILS 3は後から起動・設定する

XILS 3の無償版は音色の保存読み込みが出来ない。これの一番厄介な点は、せっかく苦労して音色設定を作っても、その後でどこかからProgramChangeの信号が送られてきたら全部水の泡という事だ。「ペンちゃんの不思議なけんばん」を起動するたびにこれが起きた。そのたびに私はショックを受けた。「ペンちゃん・・・」のマニュアルを読み直していないので、ペンちゃん側でProgramChangeの送信をしない設定があるかどうかは知らないが、ひとつの解決策は最初に「ペンちゃん・・・」を起動し、それからXILS 3(実際にはホストであるReaper)を起動するというものだ。

あと、「監視ON」の状態で音色についてメモするためにWindowsの「メモ帳」に文章を書き込んでいたら、ProgramChangeされてしまった事がある。おそらくどれかのキーにProgramChangeが割り当てられているのだろう。だから文章を書く時は「監視OFF」にする。




2. XILS 3で梵鐘の音を作り保存した

今日の晩は実に有意義な時間を過ごせた。XILS 3で梵鐘の音を作ってwavとして保存した。初めて梵鐘らしき音を出した時の設定をメモしておいたので、それを元にした。でも当時はまだXILS 3の使い方を知らないで適当にいじっていたので、一部のつまみはよくわからないまま初期値で使っていた。今回はそれを改めて設定した。

よくわからないまま初期値で使っていたという件で、ひとつ以前の記事に不正確な事を書いてしまった。MS-20のリング・モジュレーターの音とXILS 3のリング・モジュレーターの音を比較したが、その時XILS 3のFILTERのRESPONSEが上がっていた(自己発振するほどではない)。これは一般にレゾナンスと呼ばれる機能で、MS-20ではPEAKと呼ばれる。MS-20で音を出した時はPEAKを上げていなかったはずだ。両方のソフトの音を比較したけれども、一方だけレゾナンスが上がっているのでは正しい比較でない。とはいえ、XILS 3のような音をMS-20で作れないという件に変更はない。

今回の梵鐘は、以下の設定を基準とし、一部のパラメータを変更してイメージに合う音が他にないかと模索した。実際に音を出してみるとわかるが、梵鐘といってもお寺の鐘ほど大きなものの音ではない。ある種の音楽に使うような、小形の梵鐘だ。音色はかなりおとなしく、高調波が少ないが、これは私がイメージする「涅槃」寄りの音だ。この世の雑踏を離れた、魂の静まったあの世の音が「涅槃」だ。この音はまだ涅槃に入りきっていないので、さらに調整して「涅槃」に近づける。あるいは逆に高調波を多くして、現実味のある「此岸」(この世)の音にする。



左パネル

タブMATRIXをクリック
左上マトリックスはピンを一本も挿さない状態
右上マトリックスはKEYB ONとKEYB OFFを両方ともTRAPEZに接続、他はピンなし



右パネル

OSCILLATOR 1のRangeリングは0、Coarse Tuneを1.08
OSCILLATOR 1のSHAPEつまみを50.00%に(これは回しても変化なし)
OSCILLATOR 1のサイン波のLEVELつまみを右一杯に回す

OSCILLATOR 2のRangeリングは0、Coarse Tuneを-2.52
OSCILLATOR 2のSHAPEつまみを55.00%
OSCILLATOR 2の三角波のLEVELつまみを右一杯に回す

RING MOD.のLEVELつまみを右一杯に回す

FILTER OSCILLATORのFREQUENCYつまみを500.00Hzに
FILTER OSCILLATORのRESPONSEつまみを0.90(POLES=4) つまみ位置が同じでもPOLES=2ならば数値は2.65となる
FILTER OSCILLATORのPOLESを4に
FILTER OSCILLATORのLEVELつまみを右一杯に回す

ENVELOPE SHAPERのATTACKつまみをを1.50ms
ENVELOPE SHAPERのONつまみを左一杯に回す
ENVELOPE SHAPERのDECAYつまみを650.00ms
ENVELOPE SHAPERのOFFつまみを右一杯に回す
ENVELOPE SHAPERのLEVELのSIGNALつまみを右一杯に回す

マトリックスにて・・・
OSC1サイン波をR.M. Aに接続
OSC2三角波をR.M. Bに接続
RING MODをFILTERに接続
FILTERをENVに接続
ENV. SIGNALをOUT 1とOUT 2の2つに接続
他はピンなし

OUTPUT FILTERのCHANNEL 1とCHANNEL 2のトグルスイッチを両方ともOFF
General Output Levelつまみを右一杯に回す
OUTPUT CHANNEL1のLEVELつまみを右一杯に回す
OUTPUT CHANNEL2のLEVELつまみを右一杯に回す

ピッチベンドホイールは50.00%

どのキーを押しても同じ音が出るようにしてある。
音量はすべての関係するLEVELつまみを最大まで上げてある。必要に応じて音源に近いRING MOD. LEVELを下げよ。
trapezoidなるEGの、とくにONとOFFの意味する所はいまだ理解できず。

とくに変化を試すのは、2つのVCOのピッチ、VCO2のSHAPE、FILTERのPOLES、ENVELOPE SHAPERのDECAY。
FILTERのFREQUENCYやRESPONSEは上げすぎても下げすぎても余分な音が聞こえてくるので、あまり動かせない。
ピッチベンドホイールも、イメージする梵鐘の音程がだいたい決まっているので変更の必要がなかった。
ENVELOPE SHAPERのATTACKはあまり短かすぎるとブツッという音が聞こえるので、それが聞こえなくなるまでつまみを回した。



今日は、全部で9種類の音を保存した。VCOの音程などは、多くの場合が使えず、たまたま見つけたほんのわずかなピッチ域の音が梵鐘に聞こえる。そういう音を見つけるのは、大学生時代も今も、じつに楽しい。私はマニピュレーターというより、本来エンジニアだから。

見つけた9種類の音を全部採用するつもりはない。この中から絞り込んでいくつかが使えると思う。それだけでは音色が足りないから、また日を改めて音を探す。すべてが大学生時代にやった作業と同じで、私はまるで大学生の頃に戻ったような気分だ。当時は目の前にデジタルシンセ音源ユニットとデジタルシーケンサーがあり、私は音源ユニットのプリセット音のパラメータをこれでもかというほど変更して梵鐘の音を探し出した。

サッカーが趣味の人、読書が趣味の人、その他巷で一般的な趣味をもつ人が見たら、「この人は一体何が面白くてそんな事をやっているのか」と思うのだろう。しかしどんな趣味でも、その趣味を好きな人にとっては趣味は奥深いものなのだ。逆に運動が苦手でチームプレイで仲間に迷惑をかけっぱなしの私がサッカーをすれば、それは趣味でも楽しみでもなく苦痛になってしまう。人それぞれにその人に適した事をする時、人生は奥深くなる。




3. 音色サンプルをふるいにかけた

上の2とはまた別の日だ。前に書いたとおり、「梵鐘」の作業は一日に集中してやるとその日の精神状態が音色や間(ま)に影響しすぎるので、日を改めてはまた続きをする。

保存した9つの音色をふるいにかけるのが今日の目的だ。いずれは音色をお聴かせするが、不採用の音色までお聴かせしても意味がないので、音をUPするのは採用がはっきり決まってからにする。

まず9つの音色を聴き比べ、相互の違い、個性、採用/不採用を考えた。その結果3つの音程が不自然だったり落ち着きがなかったりで、不採用となった。

残った6つの音色を分類した。音程的に高中低と分けた時点で、高音003,008中音004が同種の音だと気づいた。この中で008だけが飛びぬけて高調波が多く003や004と混ぜて使えないので008を不採用とした。残り5音色。

ここで曲の構想を再確認した。梵鐘を鳴らす順番は
此岸から涅槃へ
大きい鐘から小さい鐘へ
低音から高音へ

「此岸」「涅槃」というのは私の頭の中のイメージだが、パラメータ的には高調波が多く減衰につれて高調波成分が変化するのが此岸、高調波が少なく音の変化がないのが涅槃。

上記の構想により、此岸が大きい鐘、涅槃が小さい鐘となる。此岸度は大きい鐘で高く、小さい鐘は此岸度が中くらいの物から鳴らし始め、最後は完全に涅槃の音になる。

低音000,001,002のうち000,001は涅槃寄りの音として気に入るけれども、実際に必要なのは002の此岸度だ。000,001は残念ながら不採用。これで002,003,004の3音色だけが残った。




4. 次にやること

002は梵鐘というよりも柱時計のボーンの音なので、さらにいじって梵鐘の音を見つけなければならない。

今回のサンプルではFILTERのRESPONSEを上げた都合でEGをCUTOFF FREQに効かせられなかった。しかし此岸度の高い梵鐘はEGにより高調波を変化させる必要がある。低音の鐘はMS-20FXを併用してこれの実現を試みる。

003,004は此岸度が中くらいの中高音の鐘として採用できるが、高音003はまだ此岸度が中くらいなので、これをさらにいじって完全に涅槃の音を作らなければならない。

XILS 3のtrapezoidの使い方の詳細を知ろうと再度ネット検索したが見つからなかった。すでに知っている人はわかっている事として書いているし、知らない人は知らない。よくわからん物を使うよりもADSRに切り替えたほうが良いかもしれない。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(14) [  標題電子MC(補完計画)]

1. ASIOの導入。Reaperで音が出ない現象を解決する




1. ASIOの導入。Reaperで音が出ない現象を解決する

シンセサイザーから音が出たという安心感と、私が今までに作っている曲は巷の曲と違いリズムやテンポというものがほとんどないという事情から、私は今までASIOの導入を面倒がっていた。でも音の遅延を抑える目的でそろそろ導入しておくべきだ。いつまともな(しっかりしたリズムとテンポのある)曲にとりかかるかわからないのだから。

まず情報収集した。
RealtekのサウンドチップはASIOに対応していないという情報あり。
そもそも私のPCの仕様を見ても、チップセット内臓とあるだけで他は何もわからん。ASIO非対応じゃないかなあという予感がする。
ASIO非対応のデバイスでASIOの動作をエミュレートするASIO4ALLというものがあるらしい。
ASIOの稼働中は、ASIO対応のソフトウェアでしか音が出ないらしい。つまり、ASIO対応のソフトでASIOを使って音を出している間は、ASIO非対応のソフトから音が出なくなるらしい。

よくわからん事だらけだが、とにかく試してみる。
ASIO4ALLをDLしてexeを実行。インストールは簡単に終わった。
次は再生ソフト側の設定をする。

KORGのMS-20やLegacyCellならば
メニューのシステムをクリックして環境設定を選択
デバイスの種類をASIOに変更
ドライバ名をASIO4ALL v2に変更
サンプリングレートを48000Hzに変更
結果:音は出た

VSTHostならば
メニューのDevicesをクリックしてWaveを選択
Output PortをASIO: ASIO4ALL v2に変更
Sample Rateを48000に変更
結果:音は出た

Reaperならば
Ctrl+P
AudioのDeviceを選択
Audio systemをASIOに変更
他にドライバがないからかASIO Driverは最初からASIO4ALL v2になっている
Request sample rateにチェックを付け、48000に変更
結果:音が出なくなった。レベルメーターは動いているが音は出ない。
もしもーし!?

なんでReaperだけ音が出ないの?
私がReaperの使い方を学んだサイト
http://pohwa.adam.ne.jp/you/music/isogi/reaper.html
には、次のように書かれている:

もし、Reaperが「音声入出力をする他のソフト」とI/Oの奪い合い(オレに音を出させろ、いやオレに録音させろ、みたいな感じでモメて、結果的に録音や再生に支障が出る)でトラブルを起こすようなら、サウンドドライバを他のものにする(やはりASIO以外のサウンドドライバの項を参照)。

私は、競合するようなソフトを使っている覚えがない。それにこの記述だとASIOを諦めて他を使いましょうという意味に取れるが、それしか道がないのか?他の情報を求めて別のサイトも探した。

http://hasuya-free.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/reaper-049b.html
によると:

MSGS(Microsoft GS Wavetable Synth、旧称Microsoft GS Wavetable SW Synth)はASIOドライバやカーネルストリーミングと競合する(どちらが音を出すかをめぐってケンカになる)ことがある。これを回避するには、オーディオの再生を(ASIOなど出力を占有する仕様の経路ではなくDirectSoundで行うのが確実である。

このサイトでもやっぱり、ASIOを諦めて他を使いましょうという意味に取れる記述をしている。でも新情報がひとつあった。Microsoft GS Wavetable SynthはASIOドライバと競合する!私は以前にReaperでMIDI再生用にMicrosoft GS Wavetable Synthを使っていたことがある。今ではもう使っていないから、Microsoft GS Wavetable Synthは使っていない気でいた。私が使っていない気でいても、Reaperが勝手に呼び出している可能性がある。

Reaperの初期状態ではMicrosoft GS Wavetable Synthは認識されなかった。ユーザーである私が設定画面でチェックを付けて初めて認識された。ということは・・・

Reaperを起動
Ctrl+P
AudioのMIDIを選択
MIDI outputs to make availableの
Microsoft GS Wavetable Synthのチェックを外す
Reaperを再起動
結果:音は出た

問題解決。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(13) [  標題電子MC(補完計画)]

1.MS-20ユーザーのためのXILS 3基本操作




目次

1-0. はじめに

1-1. XILS 3の構造とマトリックス(パッチパネル)の使用
1-1-1. 各モジュールの完全独立
1-1-2. マトリックスの使用
1-1-3. ミキサーに代わる出力LEVELつまみ

1-2. 各モジュール(基本モジュールのみ解説)
1-2-1. VCO
1-2-2. VCF
1-2-3. EG/VCA

1-3. 音声出力部




1-0. はじめに

この記述は、ソフトウェアシンセサイザーXILS 3の使い方を、(1)英語のマニュアルを読むのが面倒くさい日本人が気楽に読める日本語簡易マニュアルとして、(2)実際にXILS 3をいじってみてマニュアルに書かれていないが初心者時は注意したい事を書き加えて少しだけ実用性を増すようにと書かれている。(3)シーケンサー機能や外部入力機能(MS-20のESPに相当)を使わずにシンセサイザーとしての基本機能に限るならば、この日本語記述とそこからの類推でXILS 3の使い方がわかることを目指している。

欠点として、(1)私自身が超初心者である。その初心者が英語マニュアルを読みつつ実際に試しながら記述しているので、至らない点、今後修正されうる点がある。(2)XILS 3はあまりにも多機能なので、その全モジュールについて一気に全部調査することも日本語解説を書くことも私には無理があった。そこで、シンセサイザーとして基本的なVCO、VCF、VCA+EGとその周辺について「XILS 3操作の基礎を固める」という書き方をしているが、裏を返せばそれ以外(シーケンサー機能等)には触れていない。(3)私が使っているXILS 3は無料の機能制限版なので、音色バンクの保存等はできない。それでこの記述も機能制限版で実現可能な範囲内のことを書いている。




1-1. XILS 3の構造とマトリックス(パッチパネル)の使用

1-1-1. 各モジュールの完全独立

XILS 3はVCOやVCFなどの各モジュールが完全に独立しており、それらの出力/入力をマニピュレーター(エンジニア兼演奏者)が「マトリックス」と呼ばれるパッチパネルを使って接続することで音が出る。




1-1-2. マトリックスの使用

パッチパネルの使用という意味ではMS-20とコンセプトが似ているが、さらに徹底している。MS-20ならばVCOからVCFを経てVCAまでの音声ストリームと、キーボードからVCOへなどのCVストリームには既定のお膳立てがあり、パッチパネルを使わなくても「もっともありがちな接続」が内部で出来ているが、XILS 3にはそういうお膳立てがない。完全に自由な接続が可能な分だけ、接続しても無意味な組み合わせも当たり前に存在し、マニピュレーターには信号の流れを完全に把握して「マトリックス」にピンを刺す技量が要求される。マトリックスにひとつもピンが刺さっていない状態は、キーボードから最終出力まで何も接続していない状態を意味し、音が出るはずがない。

xils3_matrix.png
「マトリックス」は規則正しく穴の開いた四角形のボードで、イメージ的にはボードの裏側に縦横に何本ものコードが平行して走っているかのような動作をする。穴にピンを刺さない状態では縦のコードと横のコードの交差点は接続していないが、縦横のコードの交差点にある穴にピンを刺すとその部分でコードが接続するというイメージだ。もしも横のコードがVCOの音声出力で縦のコードがVCFの音声入力ならば、これでVCOとVCFがつながったことになる。

マトリックスの左側には全部の出力が書かれ、各出力の表記から水平にたどる一列分の穴が、その出力(上の喩えの「イメージとしてのコード」)を意味する。マトリックスの上側には全部の入力が書かれ、そこから垂直にたどる一列分の穴が、その入力を意味する。マニピュレーターは穴にピンを刺す(実際にはピンの抜き差しはマウスのクリック)ことで目的の接続を得る。




1-1-3. ミキサーに代わる出力LEVELつまみ

前述のとおりに各モジュールは独立し、マトリックスを介して接続されるが、ここでMS-20の動作と比べてみたい。MS-20が同様の動作をする際には時としてミキサーが必要になる。たとえば2つのVCOの音声出力とHPFの間にVCO MIXERがあるように。もしもこれがないと、2つのVCOからの音声をどんな比率でHPFに入れるかが指定できない。XILS 3はミキサーのかわりにマトリックスという方法を用いており、マトリックスの部分にボリュームを付けるわけに行かない。そこで、基本的に各モジュールの中に出力LEVELつまみが存在する。




1-2. 各モジュール(基本モジュールのみ解説)

あまりにも沢山の情報があるので、今は最低限必要な基本的モジュールに絞って見てゆく。

1-2-1. VCO

VCO1(および各VCOに共通部分の説明)

xils3_vco1.png
3つあるVCOのうちの1番目。つまみ類は右パネルの左上にある。

モジュールのつまみのうち、いちばん左側にある大きなつまみはVCOの発振周波数を調整するつまみだが、複雑な構造と操作法になっている。この大きなつまみは中央部のつまみと外側のリングに分かれており、外側のリングはオクターブごとの音程シフトとLOW(VCOをLFOとして使える)を切り替える。中央部のつまみは音程の微調整だが、これをマウスの左ボタンでいじると粗い調整、右ボタンでいじると細かい調整ができる。

SHAPEつまみは波形の変更だが、MS-20のパルス幅変更とは違い全波形に影響する。サイン波にも変調がかかり倍音が現れる(試してみたが、これは結果がわからなかった)。鋸歯状波は追加の鋸歯波形を生む。矩形波(VCO2とVCO3にある)はパルス幅の変更。三角波(VCO2とVCO3にある)は立ち上がりが変化して鋸歯状波になる。

LEVELつまみは2つある。各VCOは2つの波形をもち、それぞれの波形にLEVELつまみがある。2つの波形の比率を調整しつつミックスして出力可能。ただし、出力はこのつまみだけでなく、マトリックスの接続も関係していることを忘れてはならない。たとえば鋸歯状波をFILTER(VCF)に入力して音を出している最中に、サイン波のLEVELをいじっても音は変わらない。

VCOへのCV入力は、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)で確認・設定できる。基本的な接続は、KEYB 1をOSC FREQの1,2,3すべてと接続する。これに関連するものとして、同じ左パネルでKEYBOARDをクリックした時に右上のほうに見えるKEY FOLLOW 1つまみがある。普通はCVをVCOに渡して正しい音階を発振するために、つまみが中央(Range: 50.00)にセットしてある。なお、キーボード出力KCVはVCO以外のCVとすることもあるので、そのために別個にKEYB 2出力とそのレベル調整用KEY FOLLOW 2つまみがある。

VCOからの音声出力は、右パネル左下のマトリックスで他のモジュールと接続する。たとえば、もっともありがちな接続であるVCFへの接続をするならば、まず、どのVCO(1~3;複数選択可)の、どの波形(複数選択可)を出力するか決める。MS-20のように半分お膳立てされたパッチワークとは異なるので注意:各VCOごとでなく、VCOの個々の出力波形ごとに「接続するかしないか」を決める。ここで接続しなかった波形は、たとえそのVCOを(もうひとつの波形で)接続したつもりになっていても、もちろん出力されない。(でもモジュールのつまみ類が並んでいるセクションでは、いかにも波形が有効なようにつまみを操作できてしまうからまぎらわしい。)そして、決めた波形(複数あるならば全て)をSIGNALSセクションのFILTERに接続する。




VCO2についてはVCO1に準じるので解説しない。

VCO3
xils3_vco3.png
VCO3も基本的にVCO1/2と同じだが、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)にVCO3の音声出力がある。このマトリックスはCVを接続するためのもの。つまり、VCO3の発振周波数をLOWに設定してVC-LFOとし、これをVCO1、VCO2、VCFなどのCVとする意図がある。XILS 3にはLFOというモジュールがなく、必要に応じてこのVCO3をLFOとして使う。




1-2-2. VCF

xils3_vcf.png
XILS 3のVCFはLPFひとつであり、HPFはない。

モジュールのつまみ類は右パネルの右上に収まり、FILTER OSCILLATORという名前が付いている。いちばん左側はLPFのカットオフ周波数、その右が一般にレゾナンスと呼ばれるもの(MS-20ではPEAKと呼ばれる)。レゾナンスつまみを右一杯に上げると入力なしでも共振して音を出すのは教科書どおりだが、そのモードが3種類設けられており、トグルスイッチで切り替える。試してみたところ、トグルスイッチが下の状態では自己発振にならないようだ。

いちばん右側のつまみは音声出力LEVEL。「マトリックス」を使ってVCF以外の音声出力とミックスする場合は、このLEVELでVCFの音量を調節することになる。

VCFへの音声入力とVCFからの音声出力はどちらも右パネル左下のマトリックスで他のモジュールと接続する。

VCFへのCV入力は、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)と、右パネル左下のマトリックスの2つに分かれている。カットオフ周波数をエンベロープに連動させるには、右パネル左下のマトリックスのTRAPEZOIDをCONTROLSセクションのFILTERに接続する。連動の強さはENVELOPE SHAPERのTRAPEZOIDのLEVELで決める。カットオフ周波数をキー音程に連動させるには、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)を使う。いまVCOのKCVとしてKEYB 1を使っているならば、使っていないほうのKEYB 2をFILTERに接続する。次に、同じ左パネルでKEYBOARDタブをクリックすると、右上にKEY FOLLOW 2つまみがある。これでKCVの効きの強さを調節し、同時にFILTER OSCILLATORのFREQUENCYでCV全体のゲインを調節する。




1-2-3. EG/VCA

xils3_eg.png
XILS 3は各モジュールが独立しているが、VCAは例外的にEGと一体化している。つまりこのEGは、(マトリックスを使用してVCOやVCFのCVに併用するのは可能だが)常にVCAを通して音声出力する時に使われ、それ以外の特殊用途には使えないことになる。

XILS 3のEGは特殊な仕様だ。よくあるEGはADSRの4パラメータを備えるが、XILS 3のEGはtrapezoid(台形)と命名され、エンベロープを台形として扱う。各パラメータや2つの出力LEVELについてマニュアルには何も書かれていないので、試してみるしかない。また、ぜひともADSR式のEGをと望むユーザーのために、[ENVELOPE SHAPER]の文字をクリックするとADSR式のEGに切り替わるようになっている。

マトリックスを使った入出力の接続は、上記のとおりこのEGがtrapezoidと呼ばれるので、ENV.と書かれている部分だけでなくTRAPEZOIDまたはTRAPEZと書かれている部分もEGの入出力だ。(基本的にEG用のトリガーやエンベロープに関係する名称としてTRAPEZ(OID)、VCAの入出力である音声信号にENVの名称が使われているようだ。ただし例外としてMS-20のESPに相当する機能ではエンベロープがENV. FOLLOWと書かれている。)また、CVとしてはEGへのトリガーだけでなく、DECAYパラメータもCVでコントロール可能のようだ。これらについてはマニュアルに詳しく書かれていないので、試してみるしかない。今のところ、右パネル左下のマトリックスのENV. SIGNALが音声出力、SIGNALSセクションのENVが音声入力を意味し、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(右上)のKEYB ONとKEYB OFFを両方ともTRAPEZに接続するとトリガーになることは確認済み。




1-3. 音声出力部

xils3_main_level.png
XILS 3のEG/VCAを通った音声は、2系統の音声出力部に入る。

マトリックスの基本的な接続は、右パネル左下のマトリックスのENV. SIGNALをSIGNALSセクションのOUT 1とOUT 2の両方に接続する(もちろんEGにはVCF等からの音声が入っているものとする)。この音声出力はCVによるコントロールも可能だが、普通はそこまでしないだろう。

2系統の音声出力部に入った音声は、まずOUTPUT FILTERというスタティック・フィルターを通る。OUTPUT FILTERのつまみは右パネルの中央右寄りにある。大事なのは、このフィルターを使わないならばトグルスイッチを中央(OFF)にしておくということだ。これを忘れると、VCF以外のフィルターもかかった音が出てしまう。このOUTPUT FILTERのON/OFFはマトリックスのピン差し込み状態からはわからないので、忘れやすい。

2系統の音声出力は、そのままステレオ出力の左と右になるのではない。右パネルの右下に2系統それぞれのPAN EXT.があり、ステレオ出力での左右の位置を設定できる。また、2系統それぞれのLEVELもある。

全体の音量調節つまみは右パネルの右端、電源ボタンらしきものの下にある。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(12) [  標題電子MC(補完計画)]

1. リング・モジュレーター、MS-20は見捨てXILS 3を使う
2. 次回予告。XILS 3の操作方法




1. リング・モジュレーター、MS-20は見捨てXILS 3を使う

仏教に筏の譬えというのがある。川を渡るのに絶対必要で大事だった筏も、川を渡り終えたらその場に置いて先へ行くのが正しいように、「教え」ですら捨てるべき時がある、という。私は子供の頃にMS-20に憧れ、それの本をページの端がケバ立つまで読んだ。大人になってからソフトウェアとしてだがMS-20を手に入れ、操作することができた。しかし今、私は人生補完計画という「おおいなる目的」のために先へ行かなければならない。

私が作る2曲目「梵鐘」は、使う音の高調波と、音を置く間隔である「間(ま)」だけが重要だ。高調波成分にこだわる・・・つまり今度の曲は、「何となくそれらしい音」では済まされない。心にしっくり来る音色を見つけるまで試行錯誤し続けるだけのこだわりが必要だ。具体的には、梵鐘だからアナログシンセのインターフェイスをもつソフトならばリング・モジュレーターが適している。

MS-20は2つのVCOをもち、そのうちのVCO2は音源としてリング・モジュレーターも選択できる。リング・モジュレーターは2つの入力から1つの出力を導き出すエフェクトだが、MS-20の場合は内部的にVCO1とVCO2が2つの入力として暗黙のうちに使われ、1つの出力は上記のとおりVCO2の出力として可能になっている。VCO2にかんしては、まさかリング・モジュレーターの出力をそのままリング・モジュレーターの入力にするとも思えないので、内部的にリング・モジュレーターの入力用には他の波形が使われているのだろう。リング・モジュレーターの音色を変えるには2つの入力の波形とピッチを変える。とくに2つの入力のピッチをずらすのが重要だ。MS-20ではVCO2のPITCHを変更することにより音色を変えられる。

早速私はMS-20のリング・モジュレーターを試した。早く梵鐘の音を再現したかった。ただ、一抹の心配はあった。一口にシンセサイザーと言っても、実際には出てくる音には機種ごとの個性がある。VCO2をRINGにし、PITCHをいじったり、音を丸くするためにLPFをいじったりした。でも心にしっくり来る音色が作れなかった。

やはり昔もっていたデジタルシンセ(KAWAI)と同様の音を別の会社のシンセに求めても無理だったか、と私は困った。でもひょっとしたら、と考えた。少し前の記事でVCS3と間違えてぬか喜びしたXILS 3を試してみよう。前に書いたとおり、フリー版は音色の保存や呼び出しが出来ないので、使うたびに音色を再設定しなければならない。しかし、いっそ使えないわけではない。私はXILS 3の使い方を知らないが、こういうのは一生懸命試行錯誤するうちにわかるものだ。事実、必要な部分だけはわかってきた。リング・モジュレーターの音にEGをかけて出力した。ピッチを調節した。すると、梵鐘らしい音になってきたではないか。

ここで、MS-20とXILS 3のリング・モジュレーターの音を聞き比べてみたい。ピッチのつまみを回して、いくつかの音を出してみよう。減衰音の末尾で音程が変わることがあるのは私がピッチのつまみを回したからで、リング・モジュレーターの効果ではない。それから、MS-20もXILS 3も、どちらもLPFをかけて耳障りなキンキンの高調波は取り除き、音を丸くしてある。これは、私が求める梵鐘の音に近づけるためだ。

まずはMS-20のリング・モジュレーターの音。


この落ち着かない音。クラシック系よりもロック系に向くというか。

次にXILS 3のリング・モジュレーターの音。


なんと落ち着いた、柔らかな音なのだろう。機種によりこれだけの違いがある。

そういう事情で、私は現在の2曲目「梵鐘」にはMS-20でなくXILS 3を使う。また3曲目以降でMS-20の音が合うならば、あるいはLegacyCellの様々な機能を必要とするならば、その時点でコルグに戻ろう。




2. 次回予告。XILS 3の操作方法

梵鐘の音を出すのにXILS 3を使うと決まったので、私はすぐにもXILS 3の使い方をマスターしなければならない。上にリング・モジュレーターの音を出したことからわかるように、すでにいいかげんに色々いじって音は出ている。でも、沢山のつまみのほとんどが意味不明だ。MS-20とはずいぶん違うので面食らっている。「これでいい」と思って音を曲として残した後で、つまみの設定にいいかげんな所があったと知って後悔したくない。だから使い方をマスターしなくては。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(11) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 次の曲「梵鐘」
2. (読み飛ばして)
3. 曲「梵鐘」が意図するもの
4. 次回予告。リング・モジュレーター




1. 次の曲「梵鐘」

最初に作った曲は、途中でギブアップしないように一番簡単な曲にした。西洋音階の曲だけが「音楽」だと信じ込んでいる人にはそもそも曲に聞こえないかもしれないが、たとえばミュジーク・コンクレートだって正しく音楽というカテゴリーに入っている。ましてシンセサイザーという楽器で演奏しDominoとReaperで編集した物が曲でないはずがない。

最初の曲は中学生だった私がタンジェリン・ドリームのルビコンを聴いて、それが私の脳裏で変化したイメージだった。さて次の曲「梵鐘」は、それとは成り立ちが全然違う。中学時代に感性で浮かんだイメージではなく、大学時代に理性で考えたイメージだ。

タンジェリンとの出会い以来アナログシンセサイザーに憧れた私だったが、中学生の小遣いで高価なシンセサイザーが買えるはずがなく、結局私がシンセを買えたのは、世の中がデジタルシンセの時代になってからだった。VCOもVCFもVCAもなく、すでに「実験的発振器」としての側面を失っていたデジタルシンセは「ただの楽器」に成り下がっていた。それでも私はめげずにそれで音作りをした。大作は中途で眠りにつき、数十年ぶりに再開しようとしたらデジタルシーケンサーが壊れていたというのは前に書いたと思う。いっぽう大作でなく小品ならば、曲として完成していた。その小品のうちのひとつが「梵鐘」だ。




2. (読み飛ばして)

完成した小品は2つあったが、どちらもシーケンサーが壊れた時点で再生不可能となった。「梵鐘」以外のもうひとつの小品は、おそらく復刻版を再制作する事もないだろうからついでに書いておく。

当時私は若かったので、神保町の芳賀書店にも行った。芳賀書店と書いても地域ネタになるから別の地域の人にはチンプンカンプンだろう。ここは女人禁制の書店だ。エロ本専用の店として有名なのだ。エレベーターに乗って何階だかに行くと、そこは1フロアがまるまるエロ本の書架だらけだった。一種特別な世界だった。その書架の中に、私は1冊の少女漫画を見つけた。再確認するが、少女漫画風のエロ本ではない。本物の少女漫画だ。考えてみてくれ、エロ本売り場なんて普通、どんなに探してもエロ本しかない。その中身はおおかた想像の通りの物だ。「期待や夢に胸膨らませて」来る男はいないだろう。ところがそういう掃き溜めに、何の因果か美しい一輪の花が咲いていた。私はエロ本なんか買うよりもずっと感動して、それを買って大事に家へ持って帰った。

そのコミックスの最初の収録作品は確か「りる・ろん・ろん」というタイトルだった。数十年前の記憶なのでどこまで正確かわからないが、ヨーロッパかどこかの売れない作曲家がいちおう主人公だ。乗り合い馬車に乗っている。乗り合いだから、いろんな人が乗る。銀行の頭取も乗れば、異国の客人も乗り、ロブスター(売り物?)を持ったばあさんも乗る。そこへ刑事が少女を連れて乗り込む。少女を売春宿から保護してきた所だという。馬車の客も御者も、少女を白い目で見て避けようとする。この後、売れない作曲家の曲作りをみんなで手伝ううちに少女にたいする偏見が解けて馬車は港へ着くという話(端折りすぎ)だが、なんと完成した曲の楽譜がコミックスに載っていた。当時デジタルシンセを購入済みだった私は、この楽譜をシーケンサーに打ち込んだ。それが、完成した小品のもうひとつだ。

曲自体はどこかで聴いた事のあるメロディーで、たぶんウィーンのワルツだと思う。私はこの時、2つの事を学んだ。まず、楽譜を譜面どおりにシーケンサーに打ち込んでもロボットの動きみたいに退屈な演奏にしかならないという事。その演奏には一切の表情がない。溜めも、強調も、さらりと流す部分もない。もうひとつは、ヘッドフォンで音のチェックをするのは危ないという事。前に一度書いたが、ヘッドフォンはスピーカーに比べて音の強弱がわかりにくいので、私は強弱がはっきりわかるまでベロシティをいじった。友達がうちに遊びに来た時にこの曲を聞かせようとした。2人で聴くからヘッドフォンでなく、ここで初めてスピーカーから音を出した。そうしたら、ある部分まで来て音がボン!と大きくなり、友達は驚き私は自分の失敗に気づいた。

上記「りる・ろん・ろん」を再度シーケンサーに打ち込んでコミックスの対応ページ(馬車の客が売れない作曲家を手伝って音符を紡ぎ出すシーン)から絵を拝借して動画を作れば、少しはブログのアクセス件数が増えるだろう。(コミックスは捨てた記憶がなく、きっとまだ引き出しの中にある。)でも、私の関心はアクセス件数にない。もっと大事な、過去の自分のサルベージ、人生補完計画にある。だから私は、他人が作った曲「りる・ろん・ろん」ではなく、自分が作った曲「梵鐘」にとりかかる。




3. 曲「梵鐘」が意図するもの

まず初めにはっきり書いておく。この2曲目「梵鐘」は、前回の1曲目Rubicon-Originよりもさらに「大衆向きでない」。

大学生当時、私はタンジェリン・ドリームのZeitを愛聴していた。中学(高校)時代にはPhaedra, Rubyconが好きだったのに、好みが変わり始めていた。Zeitのゆっくりとした時の流れ、それを夜に布団の中でヘッドフォンをして聴いた。聴きながら心はどこかへトリップし、心臓の鼓動は落ち着いた。

当時の私は、曲のもつビートの意味を考えていた。大昔のどこかの原住民の演奏は、おそらく儀式的な要素を含みつつ、その打楽器によるビートで心臓の鼓動を速め、心を高揚させ、非日常へと誘ったのだろう。現代の曲でもビートの速さは、聴く人間の状態に影響する。速い曲を聴けば基本的に人は高揚し、スローテンポの曲を聴けは落ち着く。では私自身はどうなんだ。一体どんなビートを求めているんだ。そう私は考えた。

私が求めていた物は、大昔のどこかの原住民がやっていた魂の高揚と対極の位置にある「静」の音楽だった。曲のテンポをゆっくりとし、それを聴く自分の心臓の鼓動を静め、自分の存在を周囲の物理的存在に溶け込ませ一体化し、涅槃の地へ至る。そのための手段としての音楽。それが当時の私が目指す物だった。

そういう曲を作るとして、どんな音を採用するか。当時もっていたデジタルシンセを色々いじって、私は偶然に梵鐘らしき音を作り出した。音色のパラメータをいじるうちに、一口に梵鐘と言っても微妙に音色を変えるとイメージが変わる事もわかった。それは時に現実的な鐘の音となり、時にまるで非現実のような、あの世の音となる。こう書くと、これを読む過半数の人は「ボーンという音は所詮ボーンだろ?」と思う。それが普通だ。でも当時の私の感覚は普通を超えていた。それは音楽の聴き方に表れていた。私はタンジェリン・ドリームのStratosphereを聴く時、メロディーを聴いていなかった。楽器音の倍音構成を聴いて酔いしれていた。これはアナログシンセで音を作る人間にとってそんなに特殊な事ではない。楽器音をシンセで作ろうとする時はその音がどんな高調波をもっているかを考えて発振器の波形を選び、さらにフィルターのかけ方を考える。その音作りテクニックが音楽リスニングに移行しただけの話だ。ただ、一般人からすれば理解不能だろうな。

結局、曲「梵鐘」にはメロディーがなく、リズムもなく、音の高低変化すらない。あるのは2つ。音の高調波の違いと、音と音との間にある「間(ま)」だ。この曲は、その2つを全神経を傾けて享受するうちに精神と心臓の鼓動が静かになり、トリップしつつ眠りにつけるという物だ。その時の体調や精神状態により、曲を最後まで聴かないうちに眠り込んで朝を迎える事もある。あるいは最後の梵鐘の音を聴くまで目が覚めている事もあるが、その時すでに心も体も静かになっており、眠る少し前だ。

私という人間は考案者だから、何も言われなくても初めから上記の事を知っている。しかし私以外の人間は、それを初めに理解しておかないと大きな誤解をする。「なんだこれは。音が1つだけボーンと鳴ったら、後は何も音が出ないじゃないか。忘れた頃にまた1つボーンと鳴った。これはMIDIデータの設定を間違えたまま演奏させたんじゃないのか?」と、曲が間違っており自分が正しいと信じて疑わないだろう。しかし実際には上記の通り、この曲はそれで正しい。




4. 次回予告。リング・モジュレーター

梵鐘の音といえば、アナログシンセではリング・モジュレーターだ。MS-20のリング・モジュレーターは(内部構造は別として)表面を見ると入力が2つ見当たらないという変なリング・モジュレーターだ。私はこれからそれに取り組もうと思う。

ところで、そろそろ記事掲載の頻度を下げようと思う。今まで、この記事とMS-20のために時間を使いすぎた。人間、仕事とか家事とか、他にやるべき事がある。

それに、上の記事ではまだ書いていないが、曲「梵鐘」の「間(ま)」を決定するには1ヶ月かそれ以上かかる。普通のMIDI演奏や編集の部分はほとんどなく、それに時間はかからないが、それ以外の部分、音色作りと「間(ま)」の取り方は、ほんの一時期だけの自分の感覚を信用してはならない。暫く何もせず、忘れた頃にもう一度試して音色と「間(ま)」が適切かどうかをチェック。それもまたその時だけの精神状態による間かもしれず、さらに暫く何もせず、忘れた頃にまた試すという、ものすごく長い試行錯誤の時間が必要になる。あなたにとって「ただのボーンという音」や「なんにも音の出ない時間が続く」でしかない物も、創る私にとっては自分の体を実験体にして何度も試した結果なのだ。そういう事情で、今後の記事掲載は頻度が下がるだろう。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(10) [  標題電子MC(補完計画)]

1. ゼンハイザー・マイク、残念ながら接続コードなし
2. ヴォーカルシンセならぬオーディオ入力シンセ
3. Reaperでの音量調節心得
4. Rubicon-Origin、ひとまず完成




1. ゼンハイザー・マイク、残念ながら接続コードなし

前回の実験で、MS-20をヴォーカル・シンセサイザーにするには良質の録音機材と録音環境が必要だとわかった。それで私がどうしたかというと、天袋の奥から、はるか昔大学生時代に買ったヴォーカルマイクを引っぱり出してきた。当時の私は歌を歌いたかったのではなく、ミュジーク・コンクレートのために自然界の録音をしたかった。ところが選んだマイクが、家に帰ってよく説明書を読んだらヴォーカルマイクだった。ゼンハイザーとかいう会社のマイクらしい。品物は悪くない。ノイズはとても少ない。ところがこれが、当時の私には逆に仇となった。当時の私は、明るい音が録りたかった。水の音、風の音、虫の音、すべて明るい音として録りたかった。でもこのマイクで録ると何でも暗い音になった。これはつまり、サーというノイズが入っていないからなのだが、それが当時の私の求めるイメージと違った。皮肉な事に、もっとずっと安いウォークマン用エレクトレットコンデンサーマイクのほうが明るい音(サー音付き)が録れた。

今日、私はどちらのマイクも発見した。ウォークマンプロフェッショナル用のマイクはとっくにないと思っていたが、なんと偶然にも出て来た。あのT字形したやつ。ボタン電池まで一緒に出て来た。LR44とかいうの。数十年前の電池だぞ。使えないと思ったが、試しにこのボタン電池をマイクに入れて、それをPCのマイク入力に接続してみた。小さいが、音が聞こえたぞ。信じられん。

ゼンハイザーのほうは、造りからしてウォークマン用マイクとは大違いだ。マイク自体の造りも堅牢だが、一番の違いは、ON/OFFのスイッチ。これを操作するたびにいちいちノイズが出ないような作りになっている。ところが接続端子を見てびっくり。こんな端子、知らないぞ。やがて記憶が蘇ってきた。これに合うメスのほうの接続端子にコードを付けて反対側に標準プラグを付けたのを昔もっていた。そりゃそうだろう、私は若い頃にTASCAMのPORTA05に無理やり乾電池をくっつけて野外へ持ち出して、このマイクで自然音を録っていたんだから。(ただしPORTA05はウォークマンとは用途が違うから、揺れにものすごく弱い。移動しながらの録音で揺れるとすぐに音が歪んだ。)それから私は天袋や押入れを探し回った。MIDIケーブルなら何本も出て来た。標準プラグのケーブル(自作シンセサイザーのパッチ用にアキバで買ったパーツを半田付けして作った)も沢山出て来た。でもマイク用のコードは出てこなかった。以前に大掃除をした時に、いろんな物を捨てた事がある。あんな見た事のない接続端子のコード、捨てたかもしれない。

残念だが、私はせっかく出したゼンハイザーのマイクをまた天袋の奥に仕舞った。




2. ヴォーカルシンセならぬオーディオ入力シンセ

ノイズの少ないマイクを使ってMS-20をヴォーカルシンセとして使いまくるという計画は、おあずけとなってしまった。それならば、あれをやろう。今作っている曲の後半を子供の頃の私が口笛で吹いた録音が見つかったという件。これをMS-20のESPに通し、口笛そのものでない別の音にする。

この口笛はカセットテープに録音したものだから、ヒスノイズは入っている。このままESPに入力したら、マイクの時のように変なCVが出てしまう。しかし世の中にはすごい人がいて、フーリエ変換を利用してヒスノイズを除去してくれるフリーソフトがある。これでまずカセットテープ音声からヒスノイズを強力に取り除く。その結果はwavファイルとして出力されるので、これをReaperへマウスでドラッグ&ドロップする。このトラックのfxとしてVST: MS-20FX (KORG)を設定。MS-20FXはESPを使う設定にする。ただ、元の口笛の音程に出来るだけ忠実にVCOを発振させようとしたら、どうも恥ずかしい出来の物になった。そこであえて音を変質させる。思い出の中の曲のラストは高く明るい音だったなあという記憶から、VCOの発振を1オクターブ上げる。このままでは恥ずかしい出来に変わりはない。エフェクトをかける事にする。fxにAddしてVST: MDE-X (KORG)。効果はCathedral、DRY/WETつまみをWet側一杯に回す。はい、何だかわかんない音の出来上がり。聞いてみたら、まるでタンジェリン・ドリームのPhaedraの最後に子供達が残響つきで喋っているような感じになった。実は私の思い出の中の感じとは違うんだが、今は他の音を作り出せそうにない。ひとまずこれで完成としよう。将来的に手直しするかもしれないが。




3. Reaperでの音量調節心得

私はずっとMS-20を使って、つまりMIDIを使って録音をしてきた。先ほどの、曲の最後を作るのに初めてwavの形でReaperの編集を試した。ずいぶん事情が違うなあと感じる。そこで備忘録の意味で記録しておきたい。

<<midの音量にはMIDIのベロシティとエクスプレッションを使え>>
トラックに入っているのがmidならば、録音時に有効な音量調節はReaperのフェーダーではなくMIDIのベロシティとエクスプレッション。録音時にフェードインのつもりでトラックのフェーダーを上げても影響しない。Reaperのトラックでのフェードイン/フェードアウト(下記wavの場合を参照)も使えない。フェードインはノートの冒頭での音量(ベロシティ)には影響するようだが、その後のエクスプレッションによるフェードインは実現できない。

<<wavの音量にはReaperのフェーダーとフェードイン/フェードアウト機能を使え>>
トラックに入っているのがwavならば、フェードイン/フェードアウトは録音後にReaperで行える。トラックのwavの帯の左端にマウスポインタを持って行くとフェードイン、右端に持って行くとフェードアウトのマウスカーソルになる。その状態でドラッグ。ドラッグのかわりに右クリックすると音量変化のカーブ種を選択/変更できる。その他にwavの帯の上辺にマウスポインタを持って行くと音量調節ができるが、この調節とフェーダーとの関係は未調査。




4. Rubicon-Origin、ひとまず完成

Reaperのトラックは全部で4つとなった。電気音(もとオルガン音)、電子音ピピ、何かがうごめいている音、末尾の適当な音。少し手直しをした。電気音の音程変更から電子音ピピまでの時間がイメージと違ったので電気音のノート開始時間を少しずらした。何かがうごめいている音の最初と最後はフェードイン/フェードアウトに変更、そのためにノートにエクスプレッションを付加、それを実現するためにはMS-20単独ではなくLegacyCellのMIDIコントローラーも必要になった。だからReaperでこの曲のprojectを呼び出したら電気音(もとオルガン音)と何かがうごめいている音の両方にMIDIコントローラーの設定を読み込まなければならない。(MIDIコントローラーの設定はどちらも同じCC11:Expressionなので、設定保存ファイルは共用できる。)

電子音ピピが常に2回ずつ鳴るが、一部で1回だけにし、電気音を短くする事も考えている。これは別の機会に別個に試す。

曲名:Rubicon-Origin
制作者:P.D.
ジャンル:電子音楽
使用音源とソフト:MS-20、whistle、MDE-X、K5 WAVE Filter、LegacyCell、ペンちゃんの不思議なけんばん、Domino、Reaper
構想:おそらく中学1年
制作:2013年9月



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標題電子ミュジーク・コンクレート(9) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 暗闇の中で何かがうごめいている
2. MS-20のAUDIO INはプラグイン動作時には使えない。MS-20FXのほうを使う
3. MS-20をヴォーカル・シンセサイザーにする方法




1. 暗闇の中で何かがうごめいている

私がどんな曲を作りたいかはすでに書いた。その中に、「暗闇の中で何かがうごめいている」という部分がある。私はこの得体の知れない何かを音にしなければならない。もちろん私はこの作業に興味がある。昨日からちょくちょく試している。ノイズジェネレーターを使いVCFとPEAKで音をこもらせ癖を付けたのが良かろうという事になった。うごめいている物は1匹だけだ。へたに残響を付けたりディレイを付加したりすると複数匹いるように聞こえてしまう。それに、今まで作った電子音ピピも電気音(もとはオルガン音)も残響かけまくり状態だから、今度の得体の知れない何かには一切の残響をかけない。

昨日は、ホイールをVCFのCUTOFF FREQ.に使い、ホイールを不規則に動かす事で、機械的・周期的でない「生き物のような」ファジーさを出そうと思っていた。ところがホイールを不規則に回しても変化がイマイチだったので、今日になって、MG(よくある言い方ではLFOというがMS-20ではMG)で周期的に音を変えてみようという気になった。MGの周期はどうしようか。速めの波で緊張感のある音にする(生き物が痙攣しているような)というのも考えたが、やはり心臓の鼓動に近い周期で生き物の脈動を表現したほうが良いと思った。音源がノイズだから、今回はどのキーを押しても音程は同じ。

VCO1の波形をノイズ、VCO2はLEVELを0にして使わない。
HPF CUTOFF 2.50、PEAK 5.50、CUTOFF FREQ. MOD. MG 0.80, EG2 1.40。
LPF CUTOFF 3.67、PEAK 5.40、CUTOFF FREQ. MOD. MG 0.80, EG2 1.80。
MODULATION GENERATOR KEY SYNC OFF, TEMPO SYNC OFF, WAVE FORM 5.00, FREQ. 0.70。
EG2 HOLD TIME 0, ATTACK 4.40, DECAY 0.00, SUSTAIN 10.00, RELEASE 4.40。

今回はLegacyCellを使うまでもない。MS-20単体で表現する。だからReaperのトラックのfxに設定するのはVSTi: MS-20 (KORG)。



なお、曲としてのwav書き出しにはReaperのRenderを使っているから良いが、上のような実験中の音色をちょっとブログ記事用にmp3化する時はステレオミキサーを使っているのでノイズ(シンセの音源としてのノイズでなくヒスノイズのような)が多い。でもまあ、そこまで神経質にならなくても良いだろう。




2. MS-20のAUDIO INはプラグイン動作時には使えない。MS-20FXのほうを使う

この曲の後半のイメージを子供の頃の私が口笛で吹いている録音が見つかった。ただし、子供の頃の私自身が明確な音階としてのイメージをもっていない部分があり、曖昧になっている。だからこれを元に鍵盤で演奏しようとしても変になったり無理だったりするだろう。そこで私は思った。これはひとつ実験的に、EXTERNAL SIGNAL PROCESSORを試してみるいい機会ではないか。

最初にひとつ確認する事がある。EXTERNAL SIGNAL PROCESSORのもっとも一般的な使い方は入力として外部オーディオ入力(たとえばギターの音など)を入れ、それを元にCVとエンベロープまたはトリガーを検出するという方法だから、その際にソフトウェアMS-20のAUDIO INをONにする。ところがソフトウェアMS-20のマニュアルに

「プラグイン動作時は、EXTERNAL SIGNAL PROCESSORのSIGNAL INにオーディオ信号を入力することはできません」

と書いてある。実際に試してみた。ReaperのトラックのfxにVSTi: MS-20 (KORG)を選択してEXTERNAL SIGNAL PROCESSORのAUDIO INのランプをクリックしたが、ONにならなかった。ついでに書いておくとHPF入力のほうのAUDIO INもONにならなかった。マニュアルの通りに、プラグイン動作時にAUDIO INは使えない。

今まで私はReaperで録音する際にトラックのfxにVSTi: MS-20 (KORG)を選択し演奏してきた。しかしMS-20のAUDIO INを使いたいならば、これ以外の方法でReaperと接続しなければならない。暫く試行錯誤した結果、解決策は意外にも簡単だった。ReaperのトラックのfxにVSTi: MS-20 (KORG)ではなくVST: MS-20FX (KORG)を選択する。こうすると、何の事はない、AUDIO INをONにできる。その際、MS-20への音声入力は単体MS-20とは異なり(単体MS-20の場合は下の3-1を参照)、Reaperのトラックのレベルメーターをクリックした時に選択できるInputだ。たとえばマイク入力をMS-20FXに入れたいならば、PCのコントロールパネルで既定の録音デバイスをマイクにし、それからReaperを起動し、トラックの赤丸をクリックしてレベルメーターを出し、もしも表示がLeft等になっていなければレベルメーターをクリックしてMono Input -> Left等を選ぶ。これでトラックにはマイクからのモノラル入力が入るはずであり、それがMS-20FXのAUDIO INに入る。

話は逸れるが私自身の備忘録として書かせてほしい。Reaperのトラックは録音時にレベルメーターをクリックしてMIDI Input以外を選べば「既定の録音デバイス」が効くようだ。コントロールパネルで既定の録音デバイスをマイクに設定すればマイクからの音が録音される。既定の録音デバイスをライン入力にするのはまだ試していないが、当然ライン入力からの音が録音されるだろう。

まずは、単体のMS-20のAUDIO INに音声を入れて、ESPを試す事から始めよう。




3. MS-20をヴォーカル・シンセサイザーにする方法

3-1. 初期設定

外部マイクを接続するならば初めにPCに接続し、もしもドライバの設定を変える等の事情があるならば済ませ、コントロールパネルの録音デバイスの一覧に目的のマイクが表示される状態にしておく。

音声入力を扱うソフトウェアには、既定の録音デバイスから入力するものと、ユーザーがあらかじめ録音デバイスを設定しておいてそこから入力するものがある。MS-20はユーザーがあらかじめ録音デバイスを設定しておくタイプだ。(だから既定の録音デバイスを変更してもMS-20には意味がない。)メニューの「システム」をクリックし「環境設定」を選択。「オーディオの設定」の中に「入力ドライバ名」がある。ここをマイクにする。




3-2. ESPへの音声入力レベル調節

ESPのLOW CUT FREQとHIGH CUT FREQはカットなしで音を開放。VCFもカットなしで音を開放。PEAKは0。

ひとまずマイクからの元音を聞く目的で、VCO1とVCO2のLEVELは0に絞り、ESPのBAND PASS FILTERのOUTをHPFのEXT SIGNAL INに入れる。ホイール出力をVCAのINITIAL GAINに入れてホイールを回す。

VCOとVCFのMODULATIONつまみはすべて0。

MS-20のESPのAUDIO INランプをクリックしてオーディオ信号を入力するモードに切り替える。それからESPのSIGNAL LEVELを調節して、マイクに向かって声を出しつつ音が最大の時だけPEAKが光るようにする。(もしも必要ならばEDIT画面左側のEXT. AUDIO GAINのINPUTも変更する。)

この時点で音声出力に遅延が生じているのに気づく。Reaperで後から音の位置を微調整する事も出来るので、今はこの件をこれ以上気にしない。

この時点でもうひとつチェックすべき事がある。PCの内臓マイクを使う場合は、ヴォーカルだけでなくPCのファンの音も拾ってしまう。無指向性マイクならば周囲の雑音もすべて拾ってしまう。ヒスノイズ状のサーという音が目立つ事もある。これらは内臓マイクでなく外部マイクを使う場合でも、マイクの種類等により生じる。そして、これらの雑音はMS-20のF-Vコンバーターに通すと全て音程になってしまう。そこで、もしも現在の環境でマイク入力にノイズが多いならば、MS-20に音声を入れる前にノイズゲートを通す。ノイズゲートを使うならば、ここでひとまず実験を中止し、MS-20は単体でなくReaperからプラグイン・エフェクトMS-20FXとして呼び出す。この場合(MS-20でなくMS-20FXを使う場合)は上記の3-1初期設定は当てはまらなくなるので無視する。ノイズゲートは必ずしもハード製品を入手する必要はなく、ソフトウェア・エフェクターを探せば無料で入手できるだろう。そしてReaperのトラックのfxに設定する。それから更にfxにAddしてVST: MS-20FX (KORG)を設定する。言うまでもないが、順番はノイズゲートが先、MS-20FXが後にするのが重要。そしてノイズゲートのパラメータを調整してうまく雑音をカットしヴォーカルだけを残したら、次の3-3へ行く。




3-3. VCOに入れるCVの調節

ESPのBAND PASS FILTERのOUTとHPFのEXT SIGNAL INの接続を外す。(自分の声はもう聞かなくていい。)

VCAのINITIAL GAINを今までのホイールからESPのENV OUTに接続変更。(これをしないと、マイクに向かって喋っていない間も始終音が鳴ってうるさい。)

ESPのCV OUTをTOTAL入力(注)に接続。VCO1のLEVELを10。波形は三角波(他も試すと良い)。VCOのMG/T.EXTつまみを回してひとまず7.0くらいにし、ESPのCV ADJUSTつまみを回してひとまず7.3くらいにし、マイクに向かって色々な音程で声を出し、声の音程の変化がVCOの音程に反映するのを確認する。(上の数値は私の声の場合。ひょっとすると声の質により設定に何らかの相違があるかもしれない。)
(注:MS-20のマニュアルではCV OUTはTOTALではなくVCO1+2 CV IN等に接続する事になっている。その場合、MG/T.EXTつまみは0のままとし、CV ADJUSTは私のMS-20ではつまみを右へ一杯に回してようやく音程が合った。)

ESPのLOW CUT FREQとHIGH CUT FREQはどうやらこの段階で調整するのが良い。音程がましに検出される値になるように調整する。




3-4. 問題点が残る

まずは聞いてもらおう。私がマイクに向かってある歌を歌い、それをノイズゲートとMS-20FXに通した物だ。私の声自体は全く残っていない。MS-20FXからの出力だけの100%Wetな状態だ。聞けばわかるが、史上最低のシンセ音。あの歌を自分で歌うのは嫌だと主張する人々でさえ、このひどい音を聞けば、自分の祖国を馬鹿にされた気分になり腹が立ってくるという史上最低のシンセ音だ。



どうしてこんな結果になったのか。VCOから出る音声がめちゃくちゃ汚いのはなぜか。これは恐らく、マイク入力のサーというノイズのせいだ。ノイズゲートを通したのでヴォーカルが発声していない時間帯は無音だが、ヴォーカルの発声中はサーというノイズも常に鳴っている。これをF-Vコンバーターが拾って電圧に変換してしまう。

もうひとつ気になる事がある。それは、かなり狭い音域でのみ、正確に音程を検出出来るのではないかという推測だ。実験中にわざと高い声を出してみたら、変なCVが出たらしく、VCOが変な音程を出した。これも、上記ノイズとの関連も考えられる。つまり高い声の周波数がサーというノイズの高い音に近づいたのでF-Vコンバーターが想定外のCVを出した可能性もある。いずれにしてもMS-20をヴォーカル・シンセとして使うならば、音の入口(マイク)で周囲のノイズを拾わないように、良い環境、良いマイクを使う必要がありそうだ。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(8) [  標題電子MC(補完計画)]

1. ReaperでのMIDI録音時にフェーダーは効かない
2. Dominoでの編集を試す
3. LegacyCellのMIDIコントローラーが必要になった
4. テンポの変更はDominoでなくReaperで行う




1. ReaperでのMIDI録音時にフェーダーは効かない

前回の実験で、Reaperの作業の中でひとつ困った事が起きた。アナログ時代ならばトラックダウン時にミキサーのフェーダーを動かせばフェードインやフェードアウトが出来た。それが当たり前だ。ところがシンセの演奏中にフェーダーを動かしても、それが録音後の音に反映しない。シンセのマスターフェーダーでもReaperのトラックのフェーダーでも同じだ。しかもまぎらわしい事に、録音中のモニター音はちゃんとフェードイン/フェードアウトする。だからてっきりその状態で録音されたと思い込んだ。

私の勝手な推測では、Reaperは本来、音をwavとして扱うのに、ここではMIDIを扱っているから複雑な事情が生じたのではないか。つまりこれらのフェーダーはMIDIの制御に関係せず、音声出力にのみ関係するので、こうなったのではないか。

いずれにせよ私は、出来上がったMIDIデータにフェードイン効果を付加しなければならなくなった。私は若い頃にMIDIを勉強したが、すでに忘れている。音量をベロシティと呼ぶ事をかろうじて覚えていたので、初めはベロシティを段階的に変化させればフェードインが実現できると思った。しかし実際に試そうとして、ベロシティがノート(音符)の途中で変更できない設定だと知った。ノートの途中で音量を変化させるにはエクスプレッションを使うようだ。

MIDIデータの編集はReaperでも出来るそうだが、今回はフェードインだ。音量を連続的に変化させるには、専用のソフトのほうが操作しやすそうだ。そこでDominoを試そうと思った。




2. Dominoでの編集を試す

MIDIデータのエディタとしてDominoを使う場合、(1)Dominoを単独で起動する方法と、(2)Reaperから起動する方法がある。

(1)Dominoを単独で起動する場合。
Dominoを起動
ツールバーのフォルダの絵をクリックしてmid(電気音、もとオルガン音だったもの)を読み込む
なんかメッセージが出るので「はい」をクリック
ノートが見えなかった。よく考えたら今読み込んだ電気音は低音なので、下方へスクロールしたらノートが見えた。

(2)Reaperから起動する場合。Reaperを起動し初期設定をする。
Ctrl+Pでプロパティを出す
External Editorsをクリック
Addをクリック。設定用小窓が出る
Extensionにmidと記入
ProgramはBrowseをクリックしてDomino.exeへのパスを設定
OKをクリック。設定用小窓が閉じる
OKをクリック。プロパティが閉じる
Reaperを再起動する
目的のトラック(MIDIが入っている)を右クリックしてOpen items in editor
なんかメッセージが出るので「はい」をクリック

MIDIデータにエクスプレッションを付加する。
ノートの下のツールバーから>(Expression)をクリック
同じくツールバーの右端にある線種から目的のものを選択
ツールバーより下の部分をマウスでドラッグして目的の線を描く

エクスプレッションを付加したmidを保存する。Domino標準のファイル形式ではReaperが読み込まないので、midとして保存する。
メニューのファイルをクリック、SWF書き出し
元のmidに上書きする
Dominoを終了する。dms形式での保存を促すメッセージが出るが、必要なのはmidなので保存しない




3. LegacyCellのMIDIコントローラーが必要になった

これで終わりというわけには行かなかった。Reaperでの演奏にMicrosoft GS Wavetable Synthを指定すれば、(DominoでProgramChangeを挿入して持続音の音色にすれば)再生でフェードインが効いた。しかしfxに指定したLegacyCellに演奏させようとすると、相変わらずフェードインが効かなかった。

エクスプレッションはコントロール・チェンジの11だという。LegacyCellやMS-20のインプリメンテーション・チャートを見た。コントロール・チェンジの欄に11がなかった。ちょっと慌てた。0から95がアサイナブル・コントロールになっていた。assignableの意味は何だ。英和辞典によると「割り当て可能」。LegacyCellの画面にそれらしき物があったがよくわからんから無視したのを思い出した。マニュアルを読み直した。

電気音(もとオルガン音)担当のLegacyCellのPERFORMANCE画面で、丸いボタンとスライダーが8つ並んでいる部分を見る
今、ボタンは必要ない。スライダーが必要だ。Slider1という部分を右クリックする
出て来たメニューからMixerを選び、MasertのFaderを選ぶ。表示がFaderに変わる
次にスライダー自体を右クリックする
出て来たメニューからControllersを選び、CC11:Expressionを選ぶ。表示は変わらない

Reaperで再生する
(電気音(もとオルガン音)パートのmidはエクスプレッションでフェードインが設定済み)
結果。フェードインは実現した。

パフォーマンス・プログラムを保存してもMIDIコントローラーの設定は保存されないので、次回演奏時にはフェードインがかからない。MIDIコントローラーの設定を保存するにはMIDIコントローラー部のKORGロゴをクリックして出るメニューからSave Controller Map。

Reaperにprojectを読み込めば、トラックのfxに設定してあるシンセサイザーも自動的に読み込まれ、その音色設定(LegacyCellのパフォーマンス・プログラムなど)も自動的に再現されるようだ。ところが上記MIDIコントローラーの設定は再現されない。このまま再生するとフェードインなしになってしまう。そこでReaperにprojectを読み込んだ直後に手作業でLegacyCellのMIDIコントローラー部のKORGロゴをクリックして設定を読み込まなければならない。




4. テンポの変更はDominoでなくReaperで行う

ここまでの出来をwavで保存しておくにあたり、気になっていた2件を手直しする。

電子音ピピと電気音(もとオルガン音)の音程はユニゾンの関係のはずなのに、どうもピピのほうが少し低く感じる。高調波の具合のせいか。電子音担当のMS-20のFINE TUNEを+2.00にした。

Dominoでの編集がReaperに反映しないケースがあるようだ。録音時にReaperのタイムラインの縦線をメトロノームがわりに使った都合で、曲は私が想定するテンポよりもいくらか早くなった。これをDominoで修正しようとした。DominoでMIDIの曲全体のテンポを変更するにはConductorトラックのTempoを変更する(後述のようにこの方法はReaperには効果がない)。
midをDominoで開き、ツールバーの一番左のコンボボックスをクリック、Conductorを選択
メニューの「挿入」をクリック、「テンポ」を選択
Tempoを設定
midを保存
もちろん2つのパートのmidはどちらも同じTempoにした。試しにDominoで演奏してみると、確かにタイムラインの線は遅く動くようになった。ところがこれを保存してReaperで演奏させると、元のテンポで演奏してしまう。ではどうすれば良いかというと、Reaperのトラックのタイムラインをいじる。PCのキーボードのAltを押しながらMIDIデータを表す帯の右端をマウスでクリックし、帯を引き伸ばすか縮める。帯の左端にPlayrate: が出るので、複数のトラックを同じテンポにしたいならばこの値をほぼ同じにする。

今回はここまでとする。2つのパートのシンセの設定は変更したので保存する。Reaperのprojectも保存する。



追伸
そろそろ書いておかなきゃならない事がある。私は音声のモニターに安くて古いヘッドホンを使っている。そのせいで、低音が聞こえなかったり音圧を感じなかったりする。つまり、私が低音が出ないとか音が小さいとか思って調整した結果、まともなスピーカーから音を出した時に低音がむちゃくちゃ出ていたり突然デカい音が鳴ったりする事がある。若い頃に一度それで失敗している。でも今、モニターに使えるまともなスピーカーがないんだ。いつの日か何とかしようと思っているが、低音がひどかったり突然デカい音が鳴ったりした時は、ご勘弁いただきたい。実は上のmp3を低音の出るスピーカーで聞いたらどうなってしまうのか、心配だ。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(7) [  標題電子MC(補完計画)]

たまたま地域新聞の占いコーナーが目に入った。私は普段占いをやらないが、せっかくだから読んでみた。運気は次第に良くなるがまだ先を急ぐなと書いてあった。うーん、と考え、今の私には向いているアドバイスだと思った。私はこの数日の間に一気にMS-20からLegacyCellの使い方を経てReaperにまで手を出している。曲を完成させそうな勢いだ。でもこれは私がよくやる過ちだ。たとえばAviUtlでの動画作成でも、知識がないうちにどんどん済ませたせいで、動画カクカクに気づいた時にはすでに沢山の動画を作り終えた後だった。ゆっくりじっくり知識を溜めてから大事な作業にとりかかるべきだったのだ。そこで今日は曲を完成させるのでなく、試しに多重録音をやってみるという程度にした。

Reaperの使い方は相変わらず適当にいじっては学んでいるにすぎない。どうやら録音時には、トラックのうち赤丸をクリックして光らせた(レベルメーターが出た)トラックが録音となり、他は再生されるようだ。

先に作ったオルガン音と電子音を合わせてみた。まずオルガン音を録音。それを再生しつつ電子音を録音。

頭の中にある音というのを実際の音として表現するのは難しいと知った。音を作った時にはオルガン音として良い出来だと思っていた。ところが曲全体の中ではオルガン音の高調波が目立ちすぎる。音が明確に鳴ってしまい、ぼやけた感じが出ない。もっと、どこかで鳴っている感じにしたいのだが、リバーブを効かせてもそうなってくれない。音量を絞ってもそれだけでは音が小さくなるだけで音自体は明確であり、ぼやけない。

頭の中ではオルガン音の音程を変えると独特の感じが出るのに、実際に音にすると2つの音程の間を行き来するのはただの間抜けに聞こえる。

電子音との差別化を図る目的でオルガン音を中央でなく左寄りで鳴らしたが、これだとセンターから何の音も出ず、オルガン音が左から聞こえるのが変だ。オルガン音をセンターに変更。

オルガン音のマスターエフェクトがSpace Reverbだったが、これの残響にある不協音がどうも気になる。それに長く伸ばす音ではSpace Reverbでも残響を感じない。Cathedralに変更、さらにDRY/WETつまみをWet一杯に。

「ペンちゃんの不思議なけんばん」でオクターブ調節をし、PCキーボードの同じキーを押してもオルガン音と電子音とでピッチを変える。オルガン音は低く、電子音は高く(独特のこもりも表現したいので高くしすぎない)。その上でキーXとZを使う。

電子音を鳴らすタイミングがわからない。自分でオルガン音を演奏したのだからそれを思い出しつつ電子音を鳴らそうとするが、タイミングが変になり電子音のすぐ後でオルガン音の音程が変わったりする。人間の感覚とは曖昧なものだ。Reaperのタイムラインが2秒おきに縦線で区切られているのに注目した。今私が作りたいのはどうせ電子音楽なのだから、この縦線を目安に定期的に鳴らそう。縦線2つおきに電子音を鳴らす。

冒頭のフェードインを表現するのに、演奏しながらシンセのマスターフェーダーを上げていった。ところが録音した後の音はこのマスターフェーダーによるフェードインが効かずに唐突に始まった。なぜだ。次に私はReaper側のフェーダーなら効くと考えた。しかしこれも効かずに唐突に始まった。なぜだ。これらのフェーダーはMIDIのベロシティに影響しないという事か。

オルガン音を色々いじっているうちに、わけがわからなくなった。さらに、MIDIの何かが不調になり、キーも押していないのに音が鳴りっぱなしになり、その音が1オクターブも高かった。この混乱の中でオルガン音は全部作り直しとなり、わざとこもった音にした。設定値はひたすらいいかげん。VCOひとつずつ音を出しては耳で聞いてVCFの値を決めた。VCFのPEAKは0にしたので、EGを効かせてもビニョーンと変な音にならなくなった。でもこの音も曲に合わなかった。合う音を求めるうちに、なんとオルガン音ですらなくなった。いつのまにか電気音を求めていた。家庭用電源ノイズの50/60Hzがブーンとうなる音だと電気音にならないかと考えた。そういえば音程が変わる時に一瞬音が止むのが変だ。これではアコースティックな楽器音になってしまう。MS-20のVOICESのTRIGGERはMULTIからSINGLEへ変更。LegacyCellのマスターエフェクトはさらに変更してLarge Hallに。DRY/WETは適宜調整。

出来上がった音はなんだかタンジェリン・ドリームのルビコンの一部に似てきた。ただし冒頭ではなく、もっと後のミニマル・ミュージックに入る直前。それにルビコンではここでピピッという電子音は入らない。音階だけ辿ればリコシェの冒頭にも似ているが使っている音色は全然違う。

今日は、ここまで。冒頭のフェードインが出来なかったし、最後も他の音に紛らわせて消す予定だがそれがないので、最初と最後はぶっきらぼうだ。でもその中間の音は私の頭の中のイメージに似てきた。



ファイル名がルビコンのruby...でなくrubi...で始まっているのは、わざとだ。今回の音作りは私が子供の頃にルビコンを聴いた時のイメージが元になっているのは確かだけれども、名前をまったく同じにするとタンジェリン・ドリームに悪いじゃないか。だから一文字違いとする予定だ。Rubiconは、英和辞典に載っているルビコン川の綴りでもある。この後に形容詞を付けたいんだが、まだ何語にするかも決まっていない。名詞の後に形容詞を付けるのはたとえばラテン語、イタリア語、フランス語。でもラテン語ならルビコン川はRubico、イタリア語ならRubiconeとしなきゃならない。困った。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(6) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 「ペンちゃんの不思議なけんばん」の使い方補足
2. DAWソフトReaperを使って多重録音を試す




1. 「ペンちゃんの不思議なけんばん」の使い方補足

「使い方補足」と表現したが私はソフト作者ではない。DLしてから何年も使わないうちにマニュアルの中身を忘れていたので、今まで出来なくて困っていた事がある。それが解決した。その記録。

「監視OFF」をクリックして「監視ON」にすると、「ペンちゃんの不思議なけんばん」のウィンドウがアクティブでなくてもキーボードの押下を認識してくれる。つまりLegacyCellやMS-20のウィンドウがアクティブな状態でキーを押しても発音する。これは特に、「鍵を押しながらホイールも回したい」という時に必須となる。鍵はPCのキーを押し、ホイールのほうはマウスで動かす。

MS-20とあまりにもミスマッチな「ペンちゃん」の絵を隠せる。上記「監視ON」の状態では操作できないので、まず「監視OFF」とする。それから「ペンちゃんの不思議なけんばん」のウィンドウがアクティブな状態でPCキーボードのF3を押す。




2. DAWソフトReaperを使って多重録音を試す

とにかくMS-20で音を作った私が次にやる事は、アナログ時代のMTRに相当する何かのソフトで多重録音する事だ。DAWという物があるのは聞いていた。多くはお金を払って購入するが、無償で提供される物もある。Reaperを試してみる事にした。

ネット上にはReaperをDominoと一緒に使う件が書いてあるが、私にとってそこまで同時にやるのは荷が重すぎる。なにしろMIDIの事は若い頃に勉強したが全部忘れた。Dominoはずっと前にDLしたがそのまま放ってあるという人間だ。今はとにかくReaperが使えるかどうかを試す。Dominoは必要に応じて後から考える。


2-1. Reaperのインストールを試す

Reaperのフリー版はバージョン0.999である。これをDLする。
exeを実行してインストールする。
起動する。
そのままではwavをドラッグ&ドロップしてもmidをドラッグ&ドロップしても受け容れてくれないので、初期設定をする。
http://pohwa.adam.ne.jp/you/music/isogi/reaper.html
に従い、Ctrl+Pでプロパティを開き、(ここから先の設定はこの記事を読むよりも上記Webページを見たほうがわかりやすい)
Audio: CHECK Do not render muted tracks
Audio-Device: Audio System: DirectSound
(本格的に演奏するならば遅延時間の問題からDirectSoundでなくASIOの導入を検討したほうが良いらしい)
(私もReaperが私の目的に使えるとわかった時点でASIOの導入を検討する予定)
Audio-MIDI: MIDI inputs to make available: CHECK In From MIDI Yoke: 1
(これをしないとMIDI演奏時に仮想MIDIケーブルが選択できない)
(最初の記事あたりで書いたが、私はすでにPCに仮想MIDIケーブルMidiYokeを入れているからMIDI Yokeが表示されている)
Audio-MIDI: MIDI outputs to make available: CHECK Microsoft GS Wavetable Synth
(これをしないとMIDI再生時にMicrosoft GS Wavetable Synthが選択できない)
(↑Microsoft GS Wavetable Synthは多分今回の記事でしか使わない。私はKORG LegacyCellを使う)
Media: When inserting multiple media items: Insert across tracks
Media: CHECK Set media items to offline when stopped and application is not active
Media: CHECK Build missing/updated peaks when media is brought back online
FX Plug-ins: VST plug-in paths: C:\Program Files\Vstplugins\KORG
(KORG Legacy Collectionのインストール時にプラグインが入るので、そのフォルダを指定)
FX Plug-ins: CHECK Get VST plug-in names/types when scanning
FX Plug-ins: CHECK Save full VST plug-in state if supported
FX Plug-ins: CHECK Better buggy VST compatibility mode
OKをクリック。
Reaperを一度終了して設定を保存しなければならない。
Reaperを起動。


2-2. Reaperで音声ファイルの再生を試す

とにかく再生できるのか、という初めの一歩。トラックに既存の音声ファイルを入れ、再生をテストする。
wavやmidをドラッグ&ドロップするとトラックが現れる。
wavはそのまま再生可能。
midはそのままでは音が出ない。トラックのI/Oをクリックし、設定ウィンドウ下のほうのMicrosoft GS Wavetable Synthを選択してから再生すると音が出る。


2-3. Reaperでトラックに入っている音声の保存を試す

トラックに入っている音は音声ファイルとして保存可能なんだろうな、という第二歩。
テストの第1段階として失敗し、次の第2段階として成功した。順に記録する。

上記2-2の状態のまま、メニューのFileからRenderを選択
結果。wavを入れたトラックは音が保存された。midを入れたトラックは音が保存されなかった。

初め私は、MIDIのデータはwavのような音声そのものでないからミキシング不可能なのだと思った。しかしそういう事情ではなかった。先ほどトラックのI/Oをクリックして選択したMicrosoft GS Wavetable SynthはMIDI Hardware Outputであり、これは再生に使う外部シンセを設定しただけのようだ。いま必要なのはこれではない。そんなわけでI/OもMicrosoft GS Wavetable Synthも使わない。I/OのMIDI Hardware OutputはMicrosoft GS Wavetable SynthでなくNoneに戻す(戻さないと今後もMicrosoft GS Wavetable Synthを使って音が出てしまう)。

トラックのfxをクリック
設定ウィンドウが出るので、VSTi: LegacyCell (KORG)を選択
(上記2-1の初期設定でプラグインのあるフォルダを指定したからVSTi: LegacyCell (KORG)が出る)
OKボタンをクリック

試しに再生ボタンを押す。先ほどのMicrosoft GS Wavetable Synthのように完璧な演奏でなく一部の音しか出ないが、とにかく音が出た。一部の音しか出ないのはおそらく、ネット上から適当に取ってきたmidファイルをLegacyCellのプリセット音色で鳴らしているので、設定が合わないのだろう。今は無視する。この演奏がwavファイルとして保存できるかを試す。

ふたたびメニューのFileからRenderを選択
結果。先ほどLegacyCellが演奏した音色で、演奏したとおりのノート(音符)で保存された。


2-4. Reaperで録音を試す

Reaperを起動
右クリックしてInsert track。新規トラックが出る
トラックのfxをクリックしてVSTi: LegacyCell (KORG)を選択
赤丸をクリックするとレベルメーターが出る
レベルメーターのバーをクリックするとMIDI Inputがある(上記2-1初期設定で設定したからMIDI Inputが出る。設定をしていないと出ない)
その中のIn From MIDI Yoke: 1の、その中のAll Channelsを選択
スピーカーの絵をクリックして音が出るようにする
MIDIキーボードを持っていない私は「ペンちゃんの不思議なけんばん」を起動する
(そのMIDIディバイスにはすでにOut To MIDI Yoke: 1が設定済み)
(今回の記事の1にあるように「監視ON」にする)
PCのキーボードのキーを押すとLegacyCellが音を出し、Reaperのレベルメーターも反応する

録音を試してみる。
Reaperのウィンドウの、トラックよりずっと下の部分にある赤丸の録音ボタンをクリック。タイムラインの線が走り始める
PCのキーボードのキーをいくつか押す。音が出る
Reaperのトラックより下の黒四角の停止ボタンをクリック
なんか小窓が出る。MIDIデータを保存するんだろう。Save Allをクリック
Reaperのウィンドウの、トラックよりずっと下の部分にある再生ボタンをクリック。さっき録音した音が出た。

それを保存してみる。
メニューのFileからRenderを選択
結果。録音した音はwavファイルとして保存されていた。保存時に別のトラックも存在した場合、ミキシングされてwavファイルとして保存されていた。
複数のトラックそれぞれのfxとしてLegacyCellを選択肢、つまりLegacyCellを複数起動しても何の問題も起きない事を確認した。


2-5. MTRとDAWの操作上の違いをひとつ発見した

ここでいうMTRとはアナログ時代のマルチトラックレコーダーだ。これとミキサーを接続し、トラックダウンして別のレコーダーで録音しマスターテープを作るというのがアナログ時代のやり方だった。DAWはアナログ時代のMTRもミキサーも(その他の機材も)含んでいる。さて、アナログ時代には、最後のマスター録音時にもエンジニアは忙しかった。フェードアウトやエフェクトのON/OFFや、新たな演奏の録音をした。トラック数の多い業務用機器ならば、あらかじめ全ての作業を終えた形でマスター録音に臨んだのかもしれないが、アマチュアが使える4トラックMTRでピンポン録音するしかない場合は、最後のトラックダウンも作業の大切なチャンスだった。しかしDAWでは、音を最後にwavファイルとして保存する段階ではフェーダーもエフェクトもいじれず、新たな演奏のミキシングもできない。すべての作業が終わっていなければならない。ファイル書き出し中にはフェーダーをいじれないのだから。

今日のテストはここまで。Reaperは私の目的に使えるとわかった。私はまだReaperの使い方を中途半端にしかわかっていないに違いない。これから少しずつ学ぶ事にする。Reaperが使えるとわかったのでASIOの導入も考える。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(5) [  標題電子MC(補完計画)]

1. MS-20で電子音を作った
2. ヴァーチャルVCS3が出たと思い込んだ
3. MS-20のハードウェア版は販売終了したと思い込んだ




1. MS-20で電子音を作った

電子音と言っても色々あるが、この記事は(1)から続いているから、ここでいう電子音は私が今作りたい2つの音のうちオルガン音でないほうの事だ。

これにはMS-20が1台あれば十分なので、LegacyCellのミキサーでSYNTH2のほうは音が出ないようにしておく。高い音で、鍵を押した時にピピッと2回鳴るのが大事だ。VCOは2つとも使う。VCO1もVCO2もパルス幅50%の矩形波とする。違いは、VCO1が4'でVCO MIXERのLEVELが4、VCO2が2'でVCO MIXERのLEVELが10。VCOのFREQUENCY MODULATIONなし。VCFはHPFもLPFも全帯域通す。PEAKは0。CUTOFF FREQUENCY MODULATIONなし。そもそも電子音だから単調な音で良い。EGはATTACKが0、DECAYが0.7、SUSTAINが0。音が鳴っている途中で鍵を離した場合を考えてRELEASEも0.7。これで、鍵を押すとピッと1回鳴る。

困ったのは、ピピッと2回鳴らす方法だった。初めは、EG1にDELAY TIMEがあるので、2回目のピッはこれで遅らせれば行けるかなと思った。しかしEG1はATTACKとRELEASEしかない。今回の音は減衰音だからDECAYが必要だ。SUSTAINは0でないと困る。パッチパネルのほうも暫く眺めて考えたが、どうにも思いつかない。鍵を素早く2回叩くか。いやしかし、何度鳴らしても正確に同じ間隔でピピッと鳴るから電子音なのであって、こんな所で人間の手作業のファジーさが出てしまっては台無しだ。結局、エフェクターを使うしかないという事になった。

MS-20の下にあるINSERT FXで、使えそうなエフェクトを探した。Dual Delayを使う事にした。そのままでは「ピピッ」ではなく、「ピッピピッ・・ピッ・・・」と効果がかかってしまう。パラメータを変えなければ。
FEEDBACK : L, Rとも0.0
DELAY : L, Rとも160.0ms
SPREAD : +50.0
他は初期値をいじっていない。これでピピッが完成した。

PANは、オルガン音が少し左寄りだったから、こんどは少し右寄り。マスターエフェクトはLarge Hall。音は、こんなになった。

ピッと1回だけの原音


エフェクターでピピッと2回にした音


Large Hallリバーブをかけて完成した音


これで、曲のメイン部分の音が2つとも出来た。次はMTRの代わりになる多重録音ソフトを探して使い方を学ばなければ。それには日にちがかかる。だから、首尾よくそこまで行ったとしても記事の続きが書けるのは少し後だろう。それから、ここまでの部分は「思い立ったが吉日」で1日のうち晩の数時間を使って集中してやってしまったが、思えば私以外の人のネット上の記事も参考にするべきだ。学べる事がたくさんあるに違いない。そうだなあ・・・あまり早くに他人の技法を参考にして感化されてしまうと自分のオリジナリティが引っ込むから、あともう少しだけ時期を待とうか。時期が来たらどんどん人様の努力から学ぶ事にしよう。




2. ヴァーチャルVCS3が出たと思い込んだ

私はまず次のWebページを見つけた。

http://icon.jp/archives/5587

記事タイトルの中に「EMS VCS3をシミュレートしたソフト・シンセ」と書いてある。これで私は舞い上がって喜んだ。で、色々頑張ったんだが、その後ちょっと疑問を感じた。これは本当にVCS3のシミュレートなんだろうか。そんな事はソフトのサイト

http://www.xils-lab.com/pages/XILS-3.html

に書いていない。私はもう一度さっきのWebページに戻って、今度はタイトルでなく記事の中身をよく読んだ。

「『Xils 3』は、そのユーザー・インターフェースからも分かるとおり、EMS VCS3のインスパイア系ソフト・シンセ」

インスパイアというのは、意訳すれば「似てる」という意味だ。「EMS VCS3をシミュレートした」とは意味が違う。私は一気に意欲が減退した。確かにやたらとVCS3やAKSを意識しているのは見てわかるけど。

私が意欲減退するまでに色々頑張って、音を出すまで成功したのを、ここに記録しておこう。まずはダウンロードページへ行く。

http://www.xils-lab.com/pages/XILS3_Check-out-the-demo.html

タダなのは機能限定版だと確認する。作った音の保存はできない。MIDIのコントロールチェンジはできない。

それから、これはプラグインなので、使用にはVSTホストも必要。その入手先は上記ページにリンクがある。VSTホスト側にプラグインのバラメータ(この場合はXILS3の音色)をプロジェクトの一部として保存してくれる機能が付いているが、上記のとおり機能限定版はXILS3自体にパラメータの保存機能がないため、次回起動時には見事に(=皮肉)パラメータが初期化されている。

それでは、必要なファイルをDLする。

VSTHostのほうはインストールも要らず、zipの中身をどっかへコピーしてvsthost.exeを起動すればひとまずソフトのウィンドウが出た。

XILS3のほうはインストール作業が必要だ。exeを起動して、まずはインストールする。ホニャララを以下の場所に、別のホニャララを以下の場所にインストールしますと出たが、何だかわからんし面倒だし、どうせ後でスタートメニューから辿れば何かあるだろうと思ってよく見なかった。インストールが終わった。Windowsのスタートメニューには何の変化もない。どこに何がインストールされたか、もうわかんない。おい!

しかたない。一度アンインストールして、インストールし直し。今度は表示をよく見ておく。

XILS 3 presets folder
C:\Users\Public\Documents\XILS-lab\XILS 3

VSTplugin folder
C:\Program Files\Steinberg\Vstplugins

RTAS folder
C:\Program Files\Common Files\Digidesign\DAE\Plug-Ins

VSTplugin folderかな。XILS 3.dllというのがあったから、試しにVSTHostのウィンドウにドラッグ&ドロップしてみた。XILS 3.dllの小箱が出て、それがOutの小箱とつながった。どうしてInの小箱とはつながらないんだろうと暫く考えたが、マウスで慎重につなげたらつながってしまった。でも、つないでもつながなくても動作に変わりはないように思える。

ところで、シンセの絵が出てない。暫く探した。VSTHostのツールバー・ボタンに、シンセなどに使う丸いボリュームの絵があった。マウスポインタを持って行ったらPlugin Editと出た。ひょっとして?クリックしてみた。あ、シンセの絵が出た。鍵盤が付いてる。試しに鍵をクリックしてみた。あ、鳴った!ろくに初期設定もしないで鳴った!

ソフトウェアMIDIキーボードを仮想MIDIケーブル経由で接続するには、XILS 3(プラグイン)側でなくホスト側で設定をする。VSTHostならばメニューのDevicesをクリックし、MIDIを選択するとMIDI Inputの設定画面が出る。Reaperならば次回記事(6)の2-4を参考にし、トラックのfxにはVSTでなくVSTiのほうのXILS 3 (XILS-lab)を設定しなければならない。




3. MS-20のハードウェア版は販売終了したと思い込んだ

ずっと前に、ソフトウェアMS-20なんだけどコントロール部としてUSB接続のミニMS-20が付属しているという商品が売られていた時期があったと思う。私がそれを知ったのは、それが販売終了した後だった。その時私は欲しかった。その時の目当ては、つまみが沢山並んだ操作面を実際にいじって音を出す事だったから。子供時代にMS-20に憧れた者にとっては、実際につまみを触って音を作るの(ハードウェア商品)とPCの画面を見ながらマウスでクリックするの(ソフトウェア商品)は、やはり違うから。それに何より、MIDIキーボードをもっていない私はハードとしての鍵盤が付いている商品でないと、音を出したり止めたりしながら同時につまみを回して音色を決める事が出来ない。でも販売終了していたから、仕方なく私はハードのミニMS-20が付いていないソフトウェアMS-20を購入した。それから何年経っただろう。さっき私がVCS3の件でネット検索していたら、MS-20 miniの宣伝を見かけた。私はてっきり、ずっと前のミニMS-20の記事がまだネット上に残っているんだと思った。でも違った。新発売だった。今度はソフトウェアシンセではなく、当時のアナログ回路も再現しているらしい。私はその写真をじっと見つめた。あなたが子供時代にMS-20に憧れていたとしたら、どう思う?私は、ずっと前にミニMS-20を買い損ねた時は確かに残念でならなかった。欲しかった。でも今では、昔ほどの執着がない。時の流れが私を変えたのだろうか。今私がやりたいのは、私の頭の中にある曲を実際に演奏する事。そのために必要なソフトウェアMS-20は、すでに手元にある。ハードとしてスタンドアロンで稼動すると思われるMS-20 miniよりも、ソフトウェアとしてPC内で動くほうが、PCを使ったDAWにはより使いやすいと思われる。ソフトウェアならば、設定をそのまま保存し、再現する事も出来る。ハードウェア商品で全つまみの位置を記録して後から再現するのは大変だし、そもそもアナログ時代にはそういう意識はなかった。一期一会の音との出会い、それがアナログ時代の良さでもある。色々考えたが、今私はソフトウェアMS-20で曲作りを続けるつもりでいる。現在、無償のDAWソフトを研究中だ。

コメント(1) 

標題電子ミュジーク・コンクレート(4) [  標題電子MC(補完計画)]

1. MS-20でオルガン的な音を作った(前々回、前回の続き)
2. オルガン音を作るにはLegacyCellが必要だった
3. オルガン音にリバーブをかけた
4. 次回予告。MS-20で電子音を作った




1. MS-20でオルガン的な音を作った(前々回、前回の続き)

私が最終的にどんな曲を作りたいかは前回の記事に書いたが、まず作るのはオルガン的な音だ。アコースティックな音を作るのは苦労しそうだが、オルガンはアコースティック楽器の中でも電子音との類似が多いので何とかなるだろうと思った。MS-20に付属の音色はシンセ的にかっこよすぎて使えない。一から自分で作る。

最初はMS-20ひとつで何とかしようと思った。オルガン(といっても私の頭の中にある音)は厚みがある。単音を鳴らしても低音から高音までがオクターブずつずれてユニゾンしているように聞こえる。いや実際演奏時に複数のパイプに送風してそうしているのかもしれない。VCOひとつでその厚みは出なかった。VCO1を16'、VCO2を2'にしたが、まだ足りない。そこで私はMS-20を2台使うことにした。LegacyCellを使うと一度に2台までのMS-20またはPolysixを使用可能だ。ひょっとするとPolysixを使えばさらに可能性が広がるのかもしれないが、今の私にそれはできない。ほんの数時間前までLegacyCellの使い方さえ知らなかったのだ。手を広げすぎれば疲れてギブアップしてしまうから、MS-20だけでやる。2台目のMS-20はVCO1を8'、VCO2を4'とした。これで2台合わせて16'から2'まで1オクターブずつずらして4つのVCOを発振させる事になる。波形は16'が三角波(たしかLPFのPEAKを上げて音に癖を付けた時点で高調波が変に目立ったから、高調波の少ない波形)、8'と4'はパルス幅の狭い矩形波、2'はパルス幅50%の矩形波(これはLFOのPEAKで癖を付けたかった)。このへんの設定は私の頭の中にある音に近づけた結果こうなった。HPFのCUTOFF FREQ.は4.30。PEAKを6.90まで上げてみたが、これは感覚的にこうしただけ。LPFのCUTOFF FREQは8.75。PEAKは1台目(16'と2')が7.90、2台目(8'と4')が0.00。周知のとおり、LPFのCUTOFF FREQとPEAKの調整は大事だ。PEAKは音に癖を付けるために上げたいが、上げすぎると変な音になる。4つ全てのVCOでPEAKを上げるとしつこかったので、中間の音程を担当するVCO2つ(音色の中堅部分)はおとなしい音にした。EGの設定はオルガン音だから、書くまでもないだろう。VCOのFREQUENCY MODULATIONとVCFのCUTOFF FREQUENCY MODULATIONは0。VCFにEGを効かせないのを変に思うだろう。これは、私がPEAKを上げてしまったせいで、VCFにEGを効かせるとチュイーンと変な音がしてしまうからだ。PANは、後でもうひとつの音を別方向から聞かせるために少し左寄り。ここまでの音は、こんなになった。

1台目のMS-20の音


2台目のMS-20の音


両方のMS-20をLegacyCellでミックス


まだ満足と言えるかどうか、わからないでいるが、初日だし、これから色々試せば良いし、ひとまずオルガン音ができたという意味でよしとする。




3. オルガン音を作るにはLegacyCellが必要だった

MS-20が2台必要というだけでもLegacyCellが必要だ。その他に、リバーブもかけなければならない。私の頭の中にあるオルガン音には残響がかかっているのかって?いや、そうでもない。リバーブは、ごまかしだ。風呂場で鼻歌を歌うと上手く聞こえるという、あれだ。その他にも、リバーブには仮想空間を演出する効果がある。残響の種類と長さから、人は何となくその空間の広さや壁の材質をイメージする。もしもリバーブをかけないと、オルガンはどこか遠くではなく近くで鳴っているように聞こえてしまうだろう。

そこで私はLegacyCellのマニュアルを読まなければならなかった。でも隅から隅まで読む気はない。それは以前に書いた。目的の音を出すのが最優先。それに必要な最低限の知識を得る。

MS-20のフェイスならば小さい頃から見ているから好きだし何でもないが、LegacyCellのフェイスが沢山のつまみと共にドドーンと目の前にあると、私は最初とまどった。とても難しそうに思えた。仕方がないのでマニュアル読んで理解した結果、難しそうという気持ちは失せた。今の私は、こんなだ。

まずLegacyCellの初期表示のフェイス(PERFORMANCE)の右上を見ると、フローチャート的な図がある。これで全体の流れを把握する。フローチャートの中の左端、つまり音の流れでいうと源流には、2つのシンセサイザーがある。初期状態では片方がMS-20、もう片方がPolysixだが、これはマウスの右クリックで変更できる。私は両方ともMS-20にした。ちなみに右クリックでなく左クリックすると、それぞれのシンセサイザーの設定画面が表示される。2つのシンセサイザーから出た音は、ひとつ右側のINSERT FXに入る。そんなものがどこにあるかというと、それぞれのシンセサイザーの設定画面の下のほうにある。個々のシンセに固有のエフェクトをかけたい時はこれを使うが、初心者の私はひとまずエフェクト名を右クリックしてNo Effectを選ぶ。

さて、もう一度LegacyCellの初期表示のフェイス(PERFORMANCE)を表示して、フローチャートの残りの部分を確認しよう。2つのシンセから出た音はそれぞれのINSERT FXを通った後、MIXERに入り、さらにMASTER FXを通る。このMIXERとMASTER FXの順番は、わかりやすく描けばフローチャートのようになるのだろうが、実際にはもっと複雑と思われる。それぞれのシンセから出た音がマスターエフェクトにも入り、シンセの元音出力とマスターエフェクト出力がそれぞれミキサーに入るから。そのミキサーなるものがどこにあるかというと、同じ画面の右下にある。左から順にSYNTH1(シンセ1)、SYNTH2(シンセ2)、MFX1(マスターエフェクト1)、MFX2(マスターエフェクト2)、一番右はマスター・ボリュームだ。さらに細かく見る。音量スライダー(本当はフェーダーと呼ばれるらしいが私はその名前に慣れていないのでスライダーと書く)とパンポットは見りゃわかる。見ただけでわからないのはその上にあるつまみ、MFX1とMFX2。これらは各ソース(SYNTH1等)からマスターエフェクト(1または2)へ音を送るさいのボリュームだ。で、マスターエフェクトから戻ってきた音の大きさはミキサーのSYNTH1とSYNTH2の右側にあるMFX1とMFX2のスライダーで調節する。

ミキサー部についての補足。小さな四角いボタンPREは、マスターエフェクトへ音を送るさいに音量を調節する方法を選択するボタン。PREの意味は、スライダー・ボリューム通過の前(PRE)にマスターエフェクトへ音を送る。だからスライダー・ボリュームを上げ下げしてもマスターエフェクトへの入力レベルは変わらない。POST(後)ならスライダー・ボリュームの上げ下げも影響する。

さっきから名前が出ているマスターエフェクトがどこにあるかというと、ミキサーの上、フローチャートの下。左側にMFX1、右側にMFX2が横長に表示されている。

あとひとつ、大事な説明が必要だ。作った音色の保存と呼び出しについて。LegacyCellの初期表示のフェイス(PERFORMANCE)の左上に大きく音色リストが出ている。LegacyCellは一度に128個の音色をまとめて読み込み、これをパフォーマンス・バンクと呼んでいる。ユーザーがシンセやエフェクトの設定を変えた場合、その変更は128個のうちの現在選択中の音色について行われる。この音色というのはLegacyCellの場合、最大2つのシンセとINSERT FX、それにマスターエフェクトの設定をすべて含んだもので、音色と呼ぶかわりにパフォーマンス・プログラムと呼んでいる。自分の求める音を作った私は、少なくともその設定をPCに保存し、呼び出す方法を知らなければならない。Fileをクリックし、出て来たメニューからSave Programをクリックすると、現在選択中のパフォーマンス・プログラムつまり音色をファイルとして保存できる。保存済みのパフォーマンス・プログラムを読み込むには、まずパフォーマンス・バンクの中の読み込みたい場所のパフォーマンス・プログラムを選択する。それからFileをクリックし、出て来たメニューからLoad Programをクリックすると、保存済みのパフォーマンス・プログラムを読み込める。読み込んだデータは、現在選択中のパフォーマンス・プログラムのデータとなる。

これ以外の事は、私はまだ知らない。MIDIを本格的にやるならばこの先の知識が必要だろうが、私の今の目的は、作りたい音をとにかく作る事だ。




3. オルガン音にリバーブをかけた

マスターエフェクトを使ってオルガン音にリバーブをかけた。色々試した結果、Space Reverbで濃いめのリバーブをかけた。リバーブを付けた音は、こんなになった。



明らかにしつこい残響だが、これで「まあ良し」としたのには理由がある。私が作りたい曲は前の記事に書いた。オルガン音は長く引っぱり、たまにしか音階が変わらない。長く引っぱる間はリバーブの効きが目立たず、音階が変わる時だけ目立つ。オルガン音の最後もキーを離して終わるのでなく、別の音とクロスフェードのようにして終わる予定だから、最後のしつこい残響は完成品の曲には現れない予定。




4. 次回予告。MS-20で電子音を作った

オルガン音を作り終えた私は、もうひとつの必要な音、電子音にとりかかった。私はこれも同じ日の晩の数時間でやった。記事にしたらこんなに長くなってしまったが、実際の作業はよほど集中して短時間のうちに行ったのだろう。自分自身驚いている。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(3) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 今回作りたい曲とはどんなものか(前々回、前回の続き)
2. MS-20の邪魔な拡張機能をリセットする
3. 次回予告。MS-20でオルガン的な音を作った




1. 今回作りたい曲とはどんなものか(前々回、前回の続き)

前回の続き。私はKORG Legacy Collectionの使い方を学びながら、自分が作りたい曲の中でいちばん単純なものに着手した。ではその曲とはどんなものか。これが何とも不思議なものだ。

話は私の中学時代にまで遡る。中学の音楽の先生はユニークな人だった。頭の毛も鳥の巣のようでユニークだったが、授業も型にはまっていなかった。ある時、1枚の紙を渡され、何の予備知識もなしで音楽を聞かされ、感想を書かされた。今までに聞いた事のない不思議な音楽だった。私は紙に「暗闇の中で何かがうごめいている」と書いた。でもこれは、私が感じた感想でないかもしれない。なんか記憶にあるのだが、隣の女の子が書いている文句をちらっと見たら、そう書いていた。それを見て確かにそうだと思い自分も同じ事を書いたような気がする。この時点で私は自分自身の感想を出せずに、隣の女の子の感想に呑まれてしまったのかもしれない。とにかく音楽の時間が終わってから、私は隣の音楽準備室のドアを叩いた。そして先生に、さっきの音楽の名前を尋ねた。それはタンジェリン・ドリームの「ルビコン」だった。

以上の体験が「何とも不思議」なのかというと、そうではない。話にはまだ続きがある。私は近所のレコード屋で「ルビコン」を取り寄せてもらった。やがて来たレコードを買って帰り、小さなレコードプレーヤー(当時はまだ中学生だからステレオをもっていない)で再生した。すると、出てきた音が私の記憶と違った。私が音楽室で聞いた音はこれじゃない。

私は、自分でまったく新しい音楽を創造できるような天才ではない。むしろ、どこかで聞いた音楽を自分が思いついたメロディーだと思い込んでしまう凡才だ。だからその後、この歳になるまで、私が音楽室で聞いた音をもつ曲を探している。でも見つからない。一体あれは何だったのだろう。ルビコンのはずなのにルビコンでない。探しても見つからないから、それを手に入れるには、自分で演奏するしかない。

その曲がどんな感じかというと、電子音楽には違いない。そのメインの部分は、オルガン風の音がどこかで鳴っている。モノフォニーで、和音を奏でない。西洋音階には違いないが、明確な調性を決定できない。なにしろ音程が全部で2つしか出てこないから調が明確には定まらないという意味で。音は旋律を奏でるのでなく、長く引き伸ばされる。暫く引き伸ばされた後、音が落ちてまた引き伸ばされる。暫くして、音が元に戻り引き伸ばされる。これを繰り返す。引き伸ばされるオルガン音の途中で、別の電子音が鳴る。音程はオルガンとユニゾンの関係で高い音。16分音符2つ。これに残響が付く。これがメインの部分だ。

このメインの部分に、尾ひれが付く。この尾ひれは、音でなく映像だ。私の脳裏に浮かんだ映像。その一部は当時音楽室で私の頭に浮かんだイメージだと思う。別の一部は後から曲として完結させるために、私が付け加えたイメージかもしれない。尾ひれの中でいちばん重要なのは、「暗闇の中で何かがうごめいている」部分。これはオルガン音が長く続く間に、暗闇の空間の正面部分に見えてくる。つまりこの暗闇は本当の真っ暗闇ではなく、どこか(おそらく左上方)から薄明かりが差し込んでいる。その光が当たって、何か得体の知れない軟体動物のような物がうごめいている。さて、場所はどうやら地下室だ。暗くて壁は見えず、空間の広さはわからない。ひょっとすると「地下室」ではなく「異空間」なのかもしれない。ただ、「異空間」は音にして表現しにくいから、子供の頃の私は尾ひれとして、地下室へ降りる朽ちた木の階段をギシギシと下りる感じを曲冒頭に付け足してプロローグとした。いっぽう曲の末尾にも、地下室から出て朽ちた木の扉を開け、緑が茂り夏の陽光が満ちる世界へと出るイメージを付け足した。実際に聞いた音は、ルビコンpart 1の冒頭でボーンボーンと暫く鳴った後に急に明るくなる、あそこの感じに似ている。扉を開けて緑と光の中へ出るというのは私が後から付け足したイメージだ。




2. MS-20の邪魔な拡張機能をリセットする

いよいよMS-20の出番だ。今回まず作るのはオルガン的な音だが、その前にどうしてもやらねばならない事があった。MS-20の拡張機能が勝手に音を変えるのを止めさせる事。

私はMS-20の使い方ならば、大体わかる。といっても若い頃にはこれを買う事ができなかったから、本を買ってひたすら読み、何度も読み、そのうちにページの端が擦れてケバ立ち、頭の中に焼きつくほど本を読んだ結果の知識だ。そのせいで、この歳になっても忘れない。たかが本の知識なのに、実際にいじってみると大体予想通りの結果が出る。Legacy Collectionとして売られたソフトウェアMS-20は機能拡張されていて、EDIT画面を出すといちばん左端に、昔のハードウェアMS-20にはなかった部分がある。この拡張部分は昔読んだ本に出てこないから、さっぱりわからなかった。今回解説PDFを読んで理解はしたが、ただでさえ初心者の私がそこまで手を広げると疲れてギブアップしかねない。だから拡張部分は原則として触らない。ただ、左下のPANは使っている。

で、私にはこの左端の拡張部分が結構邪魔だ。この部分がないオリジナルのMS-20ならば、子供の頃からイメージトレーニングして感覚的に掴んでいる。それで、プリセット音の各種設定をデフォルト値に戻して基本から音作りを始めようとした。そうしたらなぜだか音が戻らない。ちょっと焦って自信なくしそうになったが、やがて気づいた。左端の拡張部分の設定が関係していた。この拡張部分の設定をデフォルト値に戻して、本来のMS-20操作面だけで意図する音が出るようにしなければならない。

VOICESセクションについて。ASSIGNは、私はモノフォニック・シンセとして使うのでMONO。ある鍵を押した状態で別の鍵を押すと、後から押された鍵の音が優先される。POLYだと(最大同時発音数の範囲内で)同時発音する。TRIGGERはMULTI。ある鍵を押した状態で別の鍵を押した時、SINGLEだと鍵は押しっぱなしとみなされEGのATTACKやDECAYは効かない。MULTIだと後から鍵が押された時点でATTACK, DECAYが効く。UNISON DETUNEつまみ。これが曲者だ。これが0でないと、たとえVCOやVCFの設定を基本に戻しても変な音が出やがる。エフェクターを通してもいないのに、ある種のエフェクトをかけたような音になる。

PITCHセクションについて。BEND RANGEはホイールを回さない限りは関係しないようだ。TRANSPOSEはオシレーターのピッチ調整だそうで、確かにこれを動かすと同じ鍵を押しても音程が変わる。0にしておく。

EXT.AUDIO GAINはAUDIO IN EXT SIGNAL INを使う時のレベル調整だそうで、ミュジーク・コンクレートもやりたい私はAUDIO IN EXT SIGNAL INを使うかもしれない。気にしておこう。

ANALOGは、わざと音程をランダムに不安定にする。ある種のゆらぎを表現するのに軽くかけるのは良いかもしれない。

PAN(パンポット)は、LegacyCellからMS-20を呼び出すならばLegacyCell側のミキサーにもある。MS-20につながっているエフェクトがMono InでWet(原音をミックスしない100%エフェクト音の状態をこう呼ぶそうだ)だとMS-20内でのPANは意味がないという事だけ気をつける。

EXTERNAL MODULATIONは、私はよくわからんので使わない。使わないつもりでも、ここのSOURCE設定によっては勝手に音が変わる。だからSOURCE 1とSOURCE 2をNoneにしておく。

MS-20がソフトウェアという形で忠実に再現されて、私は子供の頃の夢だったMS-20をいじる事ができたのだが、残念だった事がひとつある。話には聞いていたが、楽器屋さんであるヤマハが当時発売したCS30はアコースティック楽器のシミュレーションに向き、いっぽうコルグのMSシリーズはシンセならではの音を出すのに向くという。実際にいじってみても、そんな感じがする。でも私は自分が弾けないさまざまな楽器の代わりにシンセを使って表現したい場合が多かった。ギュギューンとかピコピコとか鳴らしたいわけではなかった。




3. 次回予告。MS-20でオルガン的な音を作った

これでようやく、MS-20を存分に使うための準備が整った。次回の記事では、私が実質的に初めてMS-20を使ってまともな音作りをした記録を残したい。現在のこの記事は(3)となっているが、(2)から次回の(4)まで、いや予定としてはその次の(5)まで、すべて私が一日のうちの晩になってから寝るまでの数時間でやった事だ。いざ記事にしてみると長すぎて、こうして数回分の記事に分ける事になった。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(2) [  標題電子MC(補完計画)]

1. KORG Legacy Collectionに再挑戦(前回の記事の続き)
2. 今後(次回ではない)の予告。ヴァーチャルVCS3が出たと思い込んだ




1. KORG Legacy Collectionに再挑戦(前回の記事の続き)

私はずっと前にKORGのLegacy Collectionを購入したが、もともと子供時代に憧れていたMS-20を触りたかったにすぎず、買った当時に昔を懐かしんでいじっただけで終わった。それ以上本格的にいじるにはMIDIキーボードが必要だった。そうでなければ、音色を作るためにEDIT画面でつまみを回してはMAIN画面でキーボードの鍵をクリックするという面倒くさい作業となる。MAIN画面でつまみを回すこともできるにはできるが、つまみがめっちゃ小さいし文字は小さすぎて読めん。キーボードがあればEDIT画面で鍵を押しながらつまみを回せば音を出しながら調整ができるはずだが、キーボードはないから、音を出しっぱなしにしてつまみを回すにはホイールとVCAをつないでホイールを回してからEDIT画面でつまみを回すのだが、そうすると今度は音が鳴りっぱなしだ。鍵盤があれば当たり前にできる作業がこんなにもややこしくなる。結局MIDIキーボードなしではこれ以上の音作りは作業が大変、しかしキーボードを買うにしては私は鍵盤楽器が弾けず予算もなく置き場所もないという理由で、せっかく買ったKORGのソフトは何年も放っておかれた。

その間に、PCのキーボードをMIDIキーボードがわりにできないかと調べはした。それはある程度可能だった。そのためには仮想MIDIケーブルと、ソフトウェアMIDIキーボードがあれば良い。何年も前の調査なので詳細は忘れたが、仮想MIDIケーブルとしてMidiYokeが見つかり、ソフトウェアMIDIキーボードとして「ペンちゃんの不思議なけんばん」が見つかった。どちらのソフトも実によく出来ていて感心すると同時に、自分がプログラミングできずに他人のソフトを使う結果になったのが悔しかった。残る問題点は、MIDIキーボードのかわりにPCのキーボードのキーを押す時、「ペンちゃんの不思議なけんばん」がアクティブになっていないと音が出ない事。これでは、キーを押して音を出しながらMS-20のつまみを回す事ができない。

さて、今回また音作りをしようという意欲が湧いた。私はミュジーク・コンクレートにも興味があるので曲の全部が音階を伴うわけではないが、それでも音階を伴う部分は必要だ。若い頃に買ったデジタルシンセも管楽器シンセもすでに手元になく、音階を演奏するならば私はKORGのLegacy Collectionに頼らなければならない。そこでまた引っぱり出してきた。

何年も経つうちに、KORGはいくつものLegacy Collectionを出していた。まぎらわしい。私が購入したのはずっと前だから、当然最新バージョンではない。調べてみた。内容物
MS-20
Polysix
Mono/Poly
LegacyCell
MDE-X
から考えてLegacy Collection ANALOG EDITION 2007と思われる。Legacy Collectionは2013年に64ビット版がリリースされ、すでにLegacy Collectionを購入済みならば無償でアップデートできるが、そのLegacy CollectionとはANALOG EDITIONのことではない。ANALOG EDITIONの販売はすでに終了している。やはりまぎらわしい。ANALOG EDITIONとしての販売は終わっているが、個々の内容物(たとえばMS-20単体)のアップデートは可能となっている。

ずっと前、購入時にMS-20をいじったのとはわけが違う。なぜなら、ずっと前には子供の頃の憧れ、つまりMS-20のつまみが並んだフェイスを前にして色々いじって音を出したいという(演奏者ではなく)エンジニア的な興味を満足させるのが目的だった。ところが今回は曲を完成させなければならない。つまり、自分の頭の中にある音を作り出すだけでなく、演奏しエフェクトも付けて多重録音しなければならない。それが具体的にどういう違いとなって表れたか。ずっと前には私はMS-20だけに興味があった。PolysixやMono/PolyやLegacyCellは、昔のアナログシンセ特有の外見(MOOGやVCS3のような)をもっていないから興味なかった。ところが今回は、なりふりを構っていられない。曲を作るためには、LegacyCellが必要だ。MS-20単体では音にエフェクト(私が使うのはおもに、擬似的に空間を感じさせるためのリバーブ)が付けられない。また、MS-20単体では音に厚みが出ないが、LegacyCellから2台使って合計4つのVCOをオクターブずつずらせば音に厚みが出る。

そういうわけで私はすでに昨日、LegacyCellの学習を始めた。しかし機能が多くて複雑なので、私は背伸びをするのをやめ、むしろ確実狙いで一歩ずつ進むことにした。確実狙いとは何か。学校のお勉強のように大上段に振りかぶって基礎から全部頭に叩き込んでいたら、実際に作りたい音を出せるようになる前にギブアップするかもしれない。だから、知識は中途半端でいい。とにかく自分の作りたい音を出す。そのために必要な事だけがわかれば良い。これを目的とする。そのためにはどうするかと考える。自分の作りたい音はたくさんある。つまり、作りたい曲はたくさんある。でも私はいわば「入学したての一年生」みたいなもので、何も知らない。だから作りたい曲の中で、いちばん単純な曲を選び、その中のメインとなる音から作り始める。こうすれば、初めの一歩から興味と希望をもって作業できる。作業そのものが自分の最終目的のひとつに直結しており、しかもいちばん単純な曲だから曲作りが成功しやすい。もしもそれに成功したら、改めてその次のステップへ進めばよい。このやり方で行くことにした。




2. 今後(次回ではない)の予告。ヴァーチャルVCS3が出たと思い込んだ

この後、私自身の備忘録として昨日の学習結果を記録するはずだったが、すでに記事が長くなったのでひとまずここまでにしよう。それだけではない。偶然にもヴァーチャルVCS3の記事をネット上で見つけてしまった!・・・と私は思い込んだ。

タダだ!なんとタダで、あのVCS3と同様のフェイスをいじり、どんな作業でどんな音を作れるマシンだったかを体験する事ができる!・・・と思い込んだ。

うおおお、タンジェリン・ドリームも使っていたあのVCS3を!・・・と感動しまくった。でもこれが勘違いだった。それに気づいたのは、この記事を書いた翌々日の事だった。記事UPの前に急いでこうして訂正している始末だ。似ているだけだったのヨ。でもタダで触れるのは事実なので、数回後の記事にこの件も書こう。

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標題電子ミュジーク・コンクレート(1) [  標題電子MC(補完計画)]

ミュジークはフランス語で音楽。この基礎語の語頭に上記の規定語が付いて標題音楽、および電子音楽。それからミュジークの後の形容詞を加えてミュジーク・コンクレート。

1. 何が始まったのか
2. 廃屋に行ってでも音を探したい
3. 次回予告。KORG Legacy Collectionに再挑戦




1. 何が始まったのか

少し前の記事に書いたが、私はプログレッシブ・ロックを調べるうちに若い頃の気持ちが蘇り、昔作れなかった曲を今完成させたくなった。私はその曲作りについて、これから記録を残してゆこうと思っている。ただ、その対象となる曲が巷の曲とかなり異なるので、始めにそれを明記しておかなければならないだろう。

一口にプログレと言っても年によって流行があり、国によって特色がある。そしてもちろん個々のアーティストごとの個性も。私は初め、1974-75年のタンジェリン・ドリームに引かれ、アナログシンセサイザーと(あくまでタンジェリンとの関連においてだが)ミニマル・ミュージックに引かれた。でもその後興味の対象が変わってきた。大学生の頃には私はさらにエクスペリメンタルに、さらにアグレッシヴになっていった。ミュジーク・コンクレートに引かれ、レコーダーとマイクを持って野外を歩いて音を採取した。能楽の笛や謡曲との関連で、西洋音階の世界に日本人が満足しきっている事に反発した。タンジェリン・ドリームの曲は1974-75年の曲から1972年の曲へと興味が移り、心臓の鼓動を早めて高揚するビート(一般的な音楽の効能)ではなく、逆に心臓の鼓動を少しずつ遅くして極限まで精神をリラックスと無に近づける音作りを探し始めた。それは、実際に死なない程度に擬似死を体験するのが理想だった。

ようするに若い頃の私はとても熱心に色々探究し、その探究する物がことごとく人様の興味とは異なっていた!

今、私は数十年ぶりに始めた曲作りの2日目だ。昨日思い立ち、手持ちのソフトの使い方を学びつつ、いくつかの音を作った所だ。この先どうなるかは知らない。何かの壁に突き当たり頓挫するのか、それとも私の望む曲が出来上がるのか。私はこの思いが続く限り、このブログに記録を残そうとしている。アクセス件数が一桁でも知った事ではない。これは私個人にとって大事なのだ。

記事は執筆してから見直して投稿するまでに数日かかる事があり、記事の中で「今日」と書いても数日前の場合が多い。




2. 廃屋に行ってでも音を探したい

私が作りたい曲は1970年前後を思わせる実験的なものなので、色々な要素がある。西洋音楽の音階をもつ部分もあれば(さすがにこれを全否定すると私ごときに曲は作れない)、そうでない音の推移をする部分もあり、音そのものでなく逆に音と音の間にある「間(ま)」と呼ばれる部分に意味がある場合もあり(こういう逆転は当たり前にある。たとえば言語学では欧米の言語も日本語も母音に重きが置かれるが、ヘブライ語等では逆に子音に重きが置かれて母音は時として変化する)、そしてミュジーク・コンクレートとして自然界の音を使う事もある。

数十年ぶりに曲を作りたいと思い立った時、まず私に出来そうだったのは、自然界の音集めだった。この数十年の間に、私が昔買ったシンセサイザーはことごとく壊れた。だから音階をもつ部分の音を作るならば、ずっと後で私が購入したKORGのLegacy Collectionの使い方をこれから学ぶしかない。すぐにでも出来るのはミュジーク・コンクレート部分の音集めだ。今私が欲しいのは、廃屋の傷んだ板張り床(フローリングという美しいイメージてはないぞ、腐った板張りの床だ)を歩き、地下室へ行く音だ。私の住む地域に廃屋はないか。ネット検索した。あった。歩いて行ける距離ではないが、過去に人が惨殺された空き家という「いかにもデマそうないわく付き」でネットに載っている。私は肝試しがしたいのではない。音の素材を手に入れたいだけだ。惨殺や幽霊に用はない。夜中の危険な行動も御免だ。昼間の明るいうちに足元に注意しながら音を録り、帰ってくれば良い。そう考えた。ネット上には動画があった。その廃屋で若者が夜中に肝試しをしている。動画を見たら、残念な事にこの廃屋は木造でなかった。コンクリートだかモルタルだか、そういう材質だ。これではたとえ私が行っても目当ての音が録れない。腐った板張りでないから。もちろんこれで諦めたのではない。今すぐにその音が手に入らないとわかっただけだ。そこで私は同じ日のうちに、別の事を始めた。ミュジーク・コンクレートの部分が今作れないなら、他の部分、電子音楽の部分に着手する。KORGのLegacy Collectionの使い方を学ぶのだ。




3. 次回予告。KORG Legacy Collectionに再挑戦

そういうわけで、その日のうちにLegacy Collectionの使い方を学び始め、2つの音を作った。Legacy Collectionが初めて世に出てから何年経っただろう。ひょっとして、もう10年近く?人々はとっくにその使い方を学んだ。何の参考にもならない私の記事、これから使い方を学ぶ私の記事を見る人はいないだろう。それでも私は記事を書く。私は他人のためでなく、明日の自分自身のために書かねばならない。

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記録 [  標題電子MC(補完計画)]

私の「人生補完計画」は、実はものすごいスピードで進んでいる。カセットテープ音声のデジタル化が終わったのはご存じのとおり、VHSビデオテープ録画のデジタル化も実はとっくに終わっている。今は、そこから派生してVHSビデオのHi-Fi音声トラックにダビングしたLPレコード音声(これもデジタル化は終了)のレコードジャケット写真がネット上にあればそれを取得(これもすでに終わっている!)したが、そこからさらに派生して、プログレッシブ・ロックにかんしては昔自分が出会わなかった曲の中に好きな曲があったのではないかと探求する段階にまで来ている。これもほとんど終わった!PCの前に毎日座りすぎて目が疲れ肩が疲れ腰痛が出そうになりそれでもやめなかった!ついにお尻が変調をきたし、それでここ数日は作業のテンポが落ちている。

数日前にアモン・デュール(I)と出会い、ド下手な演奏でも皆であらん限りの羽目外しをして叫んでいる姿が心に響いた。そこに、私の求めるものがあった。といっても私がヒッピーになるわけがなく、学生運動をするわけがなく、別の意味でだ。私はまた子供の頃のように曲作りに憧れ始めた。私の場合はタンジェリン・ドリームの影響が強いので、それはアナログシンセによる曲作りだ。

私の子供の頃のアナログシンセへの憧れとは何か。10万円くらいしたMS-20が当時親からもらう小遣いで買えるはずもなく、私がシンセを買えたのは、シンセがデジタルになってさらに安価で手に入るようになってからだった。音の出し方も音自体も、アナログ時代とは変わってしまった。それでも私は音を作るべく、デジタルシーケンサーも買った。自分の頭の中にあるイメージを着々とシーケンサーに打ち込んでいった。それから数十年が過ぎ、天袋に入っていたシーケンサーを出してみたら、すでに壊れていた。だからフロッピーに入っていた音楽データも読み出せなかった。その他にも、シンセやシーケンサーを手に入れるよりもはるか昔に、頭の中にイメージした音と、それを表現するレコードジャケットのイメージがある。音のほうは(シンセがなかったので)残せず、ジャケットイメージは画用紙に絵の具で描いた。

さて今、私は何がしたいのか。初め私は苦悩した。子供の頃には、たとえ他人の音楽から受けた印象ばかりが強い亜流でも、頭の中に音が響いた。それを形にしようとした。ところが「おじさん」と化した今の私は、もう頭の中に音が響かない。これでは曲が作れない。昨日、布団の中でもう一度考えた。私にはもう曲が作れないと再認識した。それに、作れない曲のために四苦八苦するのが楽しいわけがない。充実するわけがない。では私は何がしたいんだ。何が楽しいんだ。子供の頃に作っていた未完の曲を完成させたい。子供の頃にシンセがなくて形にできなかった音のイメージを形にしたい。子供の頃に一度作ったのにシーケンサーが壊れて再生不可能になってしまった曲をもう一度作りたい。

お気づきのとおり、これは初めからゴールが見えている作業だ。新たな曲が頭に浮かばないのだから、過去の曲を形にした時点で私の作業は終わる。他の人が次々と新しい曲を作ってゆくような創造的作業ではない。でも他人が何だというのだ。もともと人に聴かせる曲を作るのではない。私が形にするのは、子供時代の、西洋音楽の基礎知識もなくただ頭に浮かんだ音を形にしたいと望んだだけの、それなのだ。他人は誰一人聴きたがらない曲を、私はただ自分自身のために、再現するのだ。

子供の頃の私はミュジーク・コンクレートにも憧れた。作りたい曲は自然音ばかりで構成されるのではないが、時には素材として自然音が必要になる。ただし自然音は季節により得られる音が違う。私が欲しいのは夏の音だ。今はもう夏が過ぎてしまったので、本格的な作業は来年の夏を待たねばならない。私はそれまでに、少しずつ曲実現のための手順を考えたり、電子音などの季節に関係なく作れる部分を作っておいたりしよう。

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