SSブログ

初めての中近両用眼鏡 眼鏡屋編 [手記さまざま4]

眼鏡屋へ行く前、私には2つの選択肢があった。単焦点レンズで今までよりも度の低いものにするか、中近両用レンズにするか。

裸眼でも小さい字が見えなくて近づけるとピンぼけになることを認識した今では、その状態にさらに近視用レンズを加えるのは無謀にも思えた。私は中近両用レンズを試してみようと思った。2018年にレンズを作った時には、UVカット入り、強化コーティング付きでもたいした金額でなかった記憶がある。今回のレンズでうまく行かなければ、また試せばいい。私はそう考えた。しかしレンズの金額については、私は後で驚くことになる。

私が眼鏡屋に話した望みは、近視+老眼、遠近両用でなく中近両用、UVカット入り、だ。眼鏡屋の店主は元気なおじいさんで、昔からこの店にいる。私は心の中で、(あなたまだ現役だったんですか)と話しかけた。店主いわく、近視+老眼のレンズを決めるのは、計算なのだそうだ。店主は紙に数字を書いて説明した。計算自体は単純な加減算なのだが、数値の意味する所を知らない素人には何となくしか意味がわからない。それから私は簡単な目の検査の後、眼鏡屋にあるレンズ入れ替え可のメガネフレームに様々なレンズを入れて試すことになった。

ネット上にはただ遠近両用・中近両用とだけ書いてあったが、実際には様々な段階があるそうだ。おもに外で使うための設定(これが遠近両用ということだろうか?)。おもに室内で使うが外を歩く時も使いたい設定。室内で使う設定。おもに机で使うが室内を歩く時も使いたい設定。もっぱら机で使う設定。実際と多少の違いはあるだろうが、店主が見せてくれた紙では、おおよそそんな感じに何段階にも分かれていた。

遠近両用や中近両用の眼鏡は、レンズの上の部分が遠くを見る所、下の部分が近くを見る所だ。近くを見る時は顎を突き出して目を下へ向けるか眼鏡をしっかり鼻の上へ上げてレンズの下部分を通して物を見る。遠くを見る時は顎を引いて上目遣いにするか眼鏡を鼻に落としてレンズの上部分を通して見る。私は遠くを見る時の度と近くを見る時の度をそれぞれ何種類も試して、各々満足のゆく度を見つけた。私はそれでうまく行ったと思い込んだ。

私はもうひとつ必要なことを思い出した。確かに私はこの眼鏡をおもに室内(会議室くらいのスペース)で仕事をする時に使いたい。しかしその他に、通勤時にもかけたい。私はたとえ裸眼でも、外を歩けないことはない。世界がぼやけるので嫌だが、それでも歩ける。しかし眼科医から「紫外線に気をつけてください」と言われてしまった私は、外を歩く時に裸眼で歩くのは駄目だ。UVカット付きの眼鏡をかける。

外を歩いてみよう。満足のゆく度のレンズを入れた状態の眼鏡で、私は眼鏡屋の外へ一歩踏み出した。店の手前は、段差ではないが小さな坂になっている。私は2018年に遠近両用を提案された時に、階段などで違和感があるので若い頃から慣れていたほうが良いと聞いていた。それが良かったのか、それとも災いしたのか、私は手前の小さな坂を注意しようと下を向いた。そうしたら、めまいがした。これは歩くのが恐い、と思った。

レンズの中の、遠くを見る部分と近くを見る部分の度がかけ離れるほど、そういう感覚が出るらしい。逆に2つの部分の度を近づけると、めまいを起こすような感覚が出にくくなる。しかし、度を変えるということは、自分にとって最適の度から外れるということだ。たとえば私の場合、外を歩く前に見つけた満足のゆく度では、手に持った紙の小さな文字(10.5ポイントの上付き文字くらいの小ささだが実際に当たり前にこれがある!)を目に近づけたり遠ざけたりしてみると、目からの距離が30cmから25cmまで焦点が合うというように、良く見える範囲にゆとりがあった。ところが外を歩いてめまいを感じたので度を変更した後では、目からの距離が30cmでだけギリギリ良く見えるというように、範囲にゆとりがない。

こうして、せっかく室内用としては満足のゆく度を見つけていたのに、それをご破算にして、外を歩いてもめまいを起こさない度を見つけることになった。結局、遠くを見る時の度、近くを見る時の度、歩いてめまいを起こしにくい度という3つの度について、どれも支障が出ないような妥協点を探すことになる。私の場合、階段を上り下りしてもめまいでふらつかない度にするために、近い場所は目からの距離が30cmでだけギリギリ良く見える度に妥協しなければならなかった。

店主は、老眼はこれから進んで行くと言う。5年後、7年後には、今日作るレンズでは合わなくなる。その時にはまたレンズを作り直さなければならないと言う。老眼が進めばレンズの度を変えなければならず、私の場合は遠くを見る時の近視用の度とかけ離れてゆくので、階段などでめまいを起こす感覚は強くなる。しかし今日作るレンズでその感覚に慣れてゆくので、その時が来るまでには、今日感じたほどのめまいは感じなくなっているだろうという話だ。その時が来て私がまたレンズを作るかどうかは謎だ。なにしろ、私は仕事をするために眼鏡を必要としているが、その仕事というのが慢性腰痛の辛さで辞める思いと闘いながら何とか続けている仕事だ。5年後、7年後に、慢性腰痛の私がまだ仕事をしているだろうか。もしもそれができていたら、それはめでたい。もしもそんなめでたいことがあれば、その時は自分にご褒美でまたレンズを作ろうではないか。

話し好きの店主が同じことを繰り返し喋り、私が疲れ果てた頃に、レンズの度が決まって支払いとなった。店主が言うには、老眼の単焦点レンズの倍の値段だそうだ。店主が出してきた紙にはレンズの種類が3種類あり、その各々にレンズの厚みが3種類ある。選択肢は計9種類だ。強化コーティングとUVカットは全部に適用されていた。(今回は強化コーティングなしで安く上げようと思っていたのだが、こうなっては仕方がない。)店主が言うには、私の度は高くないので、レンズの厚みを薄くする必要はなく、レンズが薄い(そのぶん値段が高い)選択肢6つは見なくて良いとのことだった。後はレンズの種類3つのどれを選ぶかだ。私は真ん中の値段のにしたが、それで3万5千円だった。2018年に作ったレンズはたいした金額でなかった記憶があるが、今回は高いと感じた。店主は単焦点レンズの倍の値段と言うが、私は半額の1万7500円だって「たいした金額でない」なんて思わない。2018年の近視用レンズはもっと安かったはずだ。店主はオプションでブルーライトカット機能があると言ったが、これ以上金を払うつもりはない。第一私はパソコンのディスプレイを見る時に眼鏡をかけない。この機能は不要だ。