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退屈な散歩をどうやって続けるか(1) [手記さまざま2]

今回は、とっくに飽きた散歩を何とか続けるために試行錯誤した話です。

健康のために自分に散歩を強いている方、散歩コースはどうしていますか。一年365日、同じコースでは飽きるでしょう。どうやって散歩に変化を付けていますか。貧乏人の私は毎日交通費を出して遠出はできませんので、散歩は家から歩いて行ける距離に限られます。これがつまり悩みの種です。どの道もとっくに知り尽くして飽きています。ではどうするか。私は今、そのことで試行錯誤しています。
今までにいくつもの案を考え、その多くは実行しました。まず、今までにブログ記事に書いたものは何かというと、猫たちに会いに行く。照明のない玄関をもつ戸建て住宅を探す。行った場所の思い出を元にフィクションを作ってブログ記事にする。やがてそれらの試みにも飽き、私は新しい試みを模索しました。
私は以前の記事に「お化け団地」について書きました。その中でもとくに背の高い建物は最上階からの眺めが良さそうです。その眺望を目的にして散歩をしたら、飽きることなく散歩ができるかもしれない。そう考えた私はすぐに実行に移しました。初日は郵便局にも用事があったので朝9時前に行きました。エレベーターで最上階まで。そう、高い建物はエレベーターがあるというのが大事です。私は慢性腰痛なので長い階段が登れません。散歩は平地で行い、目的地の団地まで来たら上へ登るのは「目的達成後の娯楽」と考えます。思ったとおり、上からの眺めはとても良いものでした。どこからか煙草の煙が上がってきました。煙草の煙が嫌いな私ですが、偶然に臭ってきた煙にすべて腹を立てるわけではありません。私が煙から逃げられればそれで良いのです。翌日は、昼間に用事があったので、団地には夕方に行ってみることにしました。夕方の景色も美しく、私はここまでは満足していました。さてエレベーターで降りようとしたら、私と入れ違いでエレベーターから男性が出てきました。最上階に住んでいる人なのでしょう。私はエレベーターに入りました。すると、煙草の煙が充満している!エレベーターの狭い箱の中で吸うのはやめてくれ!逃げ場がない!私はとっさに1階まで降りるのをやめて、途中の5階のボタンを押しました。ところがエレベーターというものは、私が思っていたよりもノロかったのです。ノロノロノロノロ10階、ノロノロノロノロ9階、こりゃたまらん。と思っていたら8階で扉が開きました。誰かが乗ってくる。私はとっさに「すみません」と言ってエレベーターから飛び出しました。エレベーターを待っていた女性は驚いて間違えたのか、もう日も暮れたのに「こんにちは」と言ってました。挨拶されたら挨拶を返すべきだとは思いましたが、私は狭い密室の中で嫌いな煙草の煙に苦しめられてその余裕がありませんでした。「すみません」と言うのが精一杯でした。今後あの団地に住む人をまた驚かせたくはないし、私自身もエレベーターの箱の中でまた煙を吸いたくはないので、二度と行かないことにしました。
それでも腰痛改善散歩は続けなければなりません。そこで私は散歩コースの家々の窓に思いを馳せることにしました。歩いていて見上げると、家々の2階の窓に見えるもの。それは天井と照明だけですが、それぞれの家に固有の風景があります。ある家の天井の照明は、私がまだ子供だった頃に我が家に付いていた照明と同じです。とても懐かしい。家族でデパートに行って、私自身がその照明を気に入ってそれがいいと譲らなかったものでした。長年使っているうちにカバーがひび割れてきて、ある日パリンと割れてしまいました。それで仕方なく新しい照明に買い替えました。その昔のお気に入りの照明器具がいま見られるのです。退屈な散歩を有意義にしてくれる懐かしさです。あるいは、ある家の照明は豪華なシャンデリアです。あんなに豪華な内装にしていたら、さぞかし自慢でしょう。美しい内装を見るのは気持ちの良いものです。もうひとつ、昭和生まれのオジサンだけの感覚があります。じつに古臭い竿縁天井に、大昔に流行った四角い吊り電灯。私はそういう時代にそういう中で育ったので、今もその中に居たいと思う時があります。散歩でそういう家を見つけると、その部屋の中で正座して辺りを見回したいという気持ちが生まれてきます。でも他人の家ですから、道路から見上げるのがせいぜいで、家の中に入ることは永遠にありえません。私はそれが自分に許される限度だと思って、毎晩その限度の行為、つまり道路から窓を見上げるということを続けていました。ところが歩きながらふと不安に思いました。道路を歩くのは私の権利のはずですが、毎晩キョロキョロしながら歩く男が目撃されたら、人は不審者と思うのではないか。道路からキョロキョロ見るのも駄目なのだろうか。でもせめてキョロキョロしないと、毎晩の散歩が退屈でしょうがない。そう思いつつ歩いていたその時、私が見上げていた家の二階の窓が急にガラガラっと大きな音を立てて開き、人影が現れました。私はビックリしてそちらを向くのをやめました。それ以来、「ひょっとしたら不審者と思われているのではないか」という不安が強くなり、キョロキョロしながら歩くのがしにくくなりました。私はまた別の方法を考えなければなりませんでした。

この記事は結構長くなってしまったので、読んでくださるあなたが疲れないように、前後編に分けましょう。今回はここまで。


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