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さかなへんと床屋さんと私 [手記さまざま]

スマホの充電を忘れて、スマホなしで床屋へ行きました。私より前に数人のお客がいたので、私は椅子に座って待っていました。暇つぶしにスマホを触ることもできないので、目の前のコミックスの背表紙をボーッと眺めていました。私の目の前には築地ナントカ三代目という本が並んでいました。最初は、「ああ、築地の市場がなくなっちゃう」などと思っていた私ですが、そのうちに背表紙に書いてある魚の名前が気になりはじめました。アジ、イワシ、カツオ、サバ、サケ、ウナギ、タイ・・・。さかなへん、さかなへん。全部漢字で書けるかな。さかなへんの一文字じゃないのもいます。サンマ。ウニは、ええと、どんな字だっけ。穴子ってのは当て字だろうか。思い出せない字をいっしょうけんめい考えていると一時間があっという間に過ぎました。そして私はどうしても思い出せない漢字を思いつつ、床屋さんに呼ばれて鏡の前の椅子に座りました。

私は床屋さんに髪の毛を切ってもらいながら、話し始めました。築地ナントカ三代目の背表紙に魚の名前がいっぱい書いてあったこと。大抵の名前は漢字がわかること。床屋さんが話に乗ってきました。
床屋さん「そうですね、鯵、鰯、鰹、鯖、鯛、キス・・・」
私「キスってどんな漢字ですか。」
床屋さん「魚へんに喜ぶです。」
私「おおー! で、ひとつどうしても思い出せないのがあるんです。マグロなんですけど。」
床屋さんの鋏を持つ手が止まりました。
床屋さん「マグロ・・・マグロ・・・気持ち悪い。」
き、気持ち悪いって・・・思い出せないっていう意味ですね・・・
その時は私も床屋さんも、とうとうマグロが思い出せないで終わりました。帰宅したら漢字を調べようと思っていた私ですが、まあよくある話で、帰宅するまでの間にすっかり忘れていました。

それから数日が経ちました。私はPC大好き人間なので、今日も元気に、いや元気を出すために、PCの前に座っています。私はPCに向き合えば元気が出るんです。すると、ディスプレイを眺める私の脳裏に不意にある漢字が浮かびました。鮪!ああ、やっと思い出した。どうして思い出せたかというと、私がインターネットを始めた頃、何か古い画像を表示するのに鮪というのが出回っていたんです。その頃はすでに99パーセント使われないソフトで、おそらくはインターネットが流行るより前のパソコン通信時代に使われたものなんでしょう。私はパソ通というのをやらずにインターネットから始めた人間なので、そのへんは知りません。ただ、鮪という名前が不思議だったので、今まで忘れないのです。

人間というのは妙なものです。魚へんの漢字を思い出そうとして、パソコン通信にまで思考が迂回して、それでも最後には漢字を思い出す。その思考経路が正しいのかどうかは私にはわからないけれど。

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