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標題電子ミュジーク・コンクレート(3) [  標題電子MC(補完計画)]

1. 今回作りたい曲とはどんなものか(前々回、前回の続き)
2. MS-20の邪魔な拡張機能をリセットする
3. 次回予告。MS-20でオルガン的な音を作った




1. 今回作りたい曲とはどんなものか(前々回、前回の続き)

前回の続き。私はKORG Legacy Collectionの使い方を学びながら、自分が作りたい曲の中でいちばん単純なものに着手した。ではその曲とはどんなものか。これが何とも不思議なものだ。

話は私の中学時代にまで遡る。中学の音楽の先生はユニークな人だった。頭の毛も鳥の巣のようでユニークだったが、授業も型にはまっていなかった。ある時、1枚の紙を渡され、何の予備知識もなしで音楽を聞かされ、感想を書かされた。今までに聞いた事のない不思議な音楽だった。私は紙に「暗闇の中で何かがうごめいている」と書いた。でもこれは、私が感じた感想でないかもしれない。なんか記憶にあるのだが、隣の女の子が書いている文句をちらっと見たら、そう書いていた。それを見て確かにそうだと思い自分も同じ事を書いたような気がする。この時点で私は自分自身の感想を出せずに、隣の女の子の感想に呑まれてしまったのかもしれない。とにかく音楽の時間が終わってから、私は隣の音楽準備室のドアを叩いた。そして先生に、さっきの音楽の名前を尋ねた。それはタンジェリン・ドリームの「ルビコン」だった。

以上の体験が「何とも不思議」なのかというと、そうではない。話にはまだ続きがある。私は近所のレコード屋で「ルビコン」を取り寄せてもらった。やがて来たレコードを買って帰り、小さなレコードプレーヤー(当時はまだ中学生だからステレオをもっていない)で再生した。すると、出てきた音が私の記憶と違った。私が音楽室で聞いた音はこれじゃない。

私は、自分でまったく新しい音楽を創造できるような天才ではない。むしろ、どこかで聞いた音楽を自分が思いついたメロディーだと思い込んでしまう凡才だ。だからその後、この歳になるまで、私が音楽室で聞いた音をもつ曲を探している。でも見つからない。一体あれは何だったのだろう。ルビコンのはずなのにルビコンでない。探しても見つからないから、それを手に入れるには、自分で演奏するしかない。

その曲がどんな感じかというと、電子音楽には違いない。そのメインの部分は、オルガン風の音がどこかで鳴っている。モノフォニーで、和音を奏でない。西洋音階には違いないが、明確な調性を決定できない。なにしろ音程が全部で2つしか出てこないから調が明確には定まらないという意味で。音は旋律を奏でるのでなく、長く引き伸ばされる。暫く引き伸ばされた後、音が落ちてまた引き伸ばされる。暫くして、音が元に戻り引き伸ばされる。これを繰り返す。引き伸ばされるオルガン音の途中で、別の電子音が鳴る。音程はオルガンとユニゾンの関係で高い音。16分音符2つ。これに残響が付く。これがメインの部分だ。

このメインの部分に、尾ひれが付く。この尾ひれは、音でなく映像だ。私の脳裏に浮かんだ映像。その一部は当時音楽室で私の頭に浮かんだイメージだと思う。別の一部は後から曲として完結させるために、私が付け加えたイメージかもしれない。尾ひれの中でいちばん重要なのは、「暗闇の中で何かがうごめいている」部分。これはオルガン音が長く続く間に、暗闇の空間の正面部分に見えてくる。つまりこの暗闇は本当の真っ暗闇ではなく、どこか(おそらく左上方)から薄明かりが差し込んでいる。その光が当たって、何か得体の知れない軟体動物のような物がうごめいている。さて、場所はどうやら地下室だ。暗くて壁は見えず、空間の広さはわからない。ひょっとすると「地下室」ではなく「異空間」なのかもしれない。ただ、「異空間」は音にして表現しにくいから、子供の頃の私は尾ひれとして、地下室へ降りる朽ちた木の階段をギシギシと下りる感じを曲冒頭に付け足してプロローグとした。いっぽう曲の末尾にも、地下室から出て朽ちた木の扉を開け、緑が茂り夏の陽光が満ちる世界へと出るイメージを付け足した。実際に聞いた音は、ルビコンpart 1の冒頭でボーンボーンと暫く鳴った後に急に明るくなる、あそこの感じに似ている。扉を開けて緑と光の中へ出るというのは私が後から付け足したイメージだ。




2. MS-20の邪魔な拡張機能をリセットする

いよいよMS-20の出番だ。今回まず作るのはオルガン的な音だが、その前にどうしてもやらねばならない事があった。MS-20の拡張機能が勝手に音を変えるのを止めさせる事。

私はMS-20の使い方ならば、大体わかる。といっても若い頃にはこれを買う事ができなかったから、本を買ってひたすら読み、何度も読み、そのうちにページの端が擦れてケバ立ち、頭の中に焼きつくほど本を読んだ結果の知識だ。そのせいで、この歳になっても忘れない。たかが本の知識なのに、実際にいじってみると大体予想通りの結果が出る。Legacy Collectionとして売られたソフトウェアMS-20は機能拡張されていて、EDIT画面を出すといちばん左端に、昔のハードウェアMS-20にはなかった部分がある。この拡張部分は昔読んだ本に出てこないから、さっぱりわからなかった。今回解説PDFを読んで理解はしたが、ただでさえ初心者の私がそこまで手を広げると疲れてギブアップしかねない。だから拡張部分は原則として触らない。ただ、左下のPANは使っている。

で、私にはこの左端の拡張部分が結構邪魔だ。この部分がないオリジナルのMS-20ならば、子供の頃からイメージトレーニングして感覚的に掴んでいる。それで、プリセット音の各種設定をデフォルト値に戻して基本から音作りを始めようとした。そうしたらなぜだか音が戻らない。ちょっと焦って自信なくしそうになったが、やがて気づいた。左端の拡張部分の設定が関係していた。この拡張部分の設定をデフォルト値に戻して、本来のMS-20操作面だけで意図する音が出るようにしなければならない。

VOICESセクションについて。ASSIGNは、私はモノフォニック・シンセとして使うのでMONO。ある鍵を押した状態で別の鍵を押すと、後から押された鍵の音が優先される。POLYだと(最大同時発音数の範囲内で)同時発音する。TRIGGERはMULTI。ある鍵を押した状態で別の鍵を押した時、SINGLEだと鍵は押しっぱなしとみなされEGのATTACKやDECAYは効かない。MULTIだと後から鍵が押された時点でATTACK, DECAYが効く。UNISON DETUNEつまみ。これが曲者だ。これが0でないと、たとえVCOやVCFの設定を基本に戻しても変な音が出やがる。エフェクターを通してもいないのに、ある種のエフェクトをかけたような音になる。

PITCHセクションについて。BEND RANGEはホイールを回さない限りは関係しないようだ。TRANSPOSEはオシレーターのピッチ調整だそうで、確かにこれを動かすと同じ鍵を押しても音程が変わる。0にしておく。

EXT.AUDIO GAINはAUDIO IN EXT SIGNAL INを使う時のレベル調整だそうで、ミュジーク・コンクレートもやりたい私はAUDIO IN EXT SIGNAL INを使うかもしれない。気にしておこう。

ANALOGは、わざと音程をランダムに不安定にする。ある種のゆらぎを表現するのに軽くかけるのは良いかもしれない。

PAN(パンポット)は、LegacyCellからMS-20を呼び出すならばLegacyCell側のミキサーにもある。MS-20につながっているエフェクトがMono InでWet(原音をミックスしない100%エフェクト音の状態をこう呼ぶそうだ)だとMS-20内でのPANは意味がないという事だけ気をつける。

EXTERNAL MODULATIONは、私はよくわからんので使わない。使わないつもりでも、ここのSOURCE設定によっては勝手に音が変わる。だからSOURCE 1とSOURCE 2をNoneにしておく。

MS-20がソフトウェアという形で忠実に再現されて、私は子供の頃の夢だったMS-20をいじる事ができたのだが、残念だった事がひとつある。話には聞いていたが、楽器屋さんであるヤマハが当時発売したCS30はアコースティック楽器のシミュレーションに向き、いっぽうコルグのMSシリーズはシンセならではの音を出すのに向くという。実際にいじってみても、そんな感じがする。でも私は自分が弾けないさまざまな楽器の代わりにシンセを使って表現したい場合が多かった。ギュギューンとかピコピコとか鳴らしたいわけではなかった。




3. 次回予告。MS-20でオルガン的な音を作った

これでようやく、MS-20を存分に使うための準備が整った。次回の記事では、私が実質的に初めてMS-20を使ってまともな音作りをした記録を残したい。現在のこの記事は(3)となっているが、(2)から次回の(4)まで、いや予定としてはその次の(5)まで、すべて私が一日のうちの晩になってから寝るまでの数時間でやった事だ。いざ記事にしてみると長すぎて、こうして数回分の記事に分ける事になった。

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