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親知らずと歯磨き奮戦記 (1) [歯ブラシメモ]

しばらくブログに書かなかった間も、実は色々なことがあった。歯医者の定期健診が半年に1回ある。ここ数回は特に何もなく、ただ歯石を取るだけだった。私が頑張ってフロスなどを使っているので、歯石も昔ほど溜まっていないようだ。でも私は2つのことを歯医者さんに言い出したく、言い出せなくて困っていた。

ひとつは、犬歯を抜いて欲しいということだった。私の小さな顎の中には、とても歯が整列して生えるだけのスペースがない。つまり歯は前後に飛び出してやっと生えている。そして下の歯が、左右どちらも犬歯のあたりの1本が手前や奥に押しやられてしまい、その両側の歯がまるで並んで生えているような状態だ。何と表現したらいいか、押しやられた歯を抜いてもその左右の歯が整列して隙間がなく見えるほどだ。

そして押しやられた歯とその左右の歯で囲まれた部分に三角形の空間ができる。これが困る。食事のたびに間違いなくここに物が詰まる。以前に歯を1本抜き、さらに別の歯を歯根治療したさいに、私はこの三角形の空間を何とかしてもらいたくなった。左右の押しやられた歯を1本ずつ抜けば、毎食後に物が詰まらなくなる。ところが、左右の押しやられた歯のうち左側のほうは、なんと隣の歯根治療の歯にかぶせたクラウンの支えのような形で使われてしまった。つまり三角形の空間まで含む形にクラウンが形成され、これが押しやられた歯にぴったりくっつけられた。私は残念だった。確かに大きな食物のかすは詰まらなくなったが、これでは逆にクラウンと隣の歯との間にフロスを入れることもできず、歯間の掃除のしようがないからだ。

そうこうするうちに今度は右側の押しやられた歯の内側に小さな虫歯が出来たそうだ。つまり例の三角形の空間に食物が詰まり、しかも私の愛用のウルトラフロスではきれいに掻き出せないために放っておくしかなかった。その結果だ。この虫歯を削って詰め物をした。おそらくどこの歯科医院でも同じだと思うが、先生は忙しい。診察して、「虫歯が出来ていますね、処置しましょう。」という話になり、私が「えっ?えっ?」とか思っている間に処置が始まり、終わる。先生と話し合う時間などない。私は「しまった!」と思った。抜いて欲しいと思っていたのに、抜くどころか治療されてしまった。これで左右両方の歯を抜いてもらうチャンスがなくなってしまった。右側の三角形の空間には今でも毎食後に物が詰まる。

さて、私は2つのことを歯医者さんに言い出せなかったと書いた。もうひとつのほうは、親知らずのことだ。私は親知らずを4本とも持っている。そしてこの4本がとても好きだ。まだずっと若かった頃は、親と死に別れる前に生えてきたこれらの歯に愛着をもって、親知らずなのに親知ってるなどと冗談を言って喜んだものだ。そしてこの4本は、なんとこの年になるまで1度も悪さをしたことがない。親知らずは生えてくると痛いと聞いたが、そんなことは1度もなかった。黒くなっている部分があるので私は気にしたが、歯医者さんは着色しているだけだと言った。でもその着色を取ってはくれなかった。

そこで私の歯磨きは、何とかして年月をかけてこの愛する歯の着色を自分で取ることが大きな目標になった。4本のうち3本は横を向いて生えていて、そのうち下の2本は普通のブラッシングでは隣の歯との隙間に届かない。プラウトを使ってみた。右側はプラウトが届く。正確には隣の歯との隙間のいちばん奥までは届かないが、着色した部分には届く。左は隣との隙間が狭くてプラウトが入らない。そこでLサイズの歯間ブラシを買ってきて、これを突っ込んで磨いた。もちろん毎回毎回欠かさず磨いた。話が長くなった。歯医者さんに言い出せなかったことを書くんだった。歯間ブラシでないと届かない左の歯だが、手前にちょっと出っ張りが出ている。これが邪魔して歯間ブラシが入りにくい。いや、この出っ張り部分さえなければ、普通のブラシやプラウトでも届くかもしれない。私はこの出っ張りをちょこっと削ってほしかった。それを定期健診のたびに言い出そうとして、ためらってしまった。

さて今回の定期健診で、歯医者さんが何を言い出したか。たぶん事情を知っている人や歯科関係の人ならとっくに察しがついているんだろうが、私にとっては晴天の霹靂だった。手術で親知らずを抜こうと言い出した。私がここ1年以上毎日丹精こめて手入れしている愛する歯をだ。その理由が、「隣の歯が虫歯になるかもしれないから」だった。私はさらに唖然とした。私は今まで親知らずそのものをどうやってきれいにしようかと、そればかり考えていた。しかし歯医者さんが気にしていたのは親知らずでなく、その隣の歯だったのか。考えたこともなかった。

ただ犬歯を抜いてもらえないというだけなら、仕方ないと思っただろう。ただ親知らずを抜きますと言われただけなら、とても嫌だが、それを言い出す勇気のない私は断れなかっただろう。ところが実際には、悪さをしていて抜いて欲しい犬歯は取っておき、1度も悪さをしていない愛する「親知ってる」は抜くという。皮肉にも私の要求と真逆のことを歯医者さんは考えていた。「心をもつ動物」の一人である私は、さすがに自分の心と真逆のものを突然突きつけられては、拒絶反応を示すしかなかった。実際には私は言葉を発することができずに硬直していたが、その形相はきっと私の考えていることを他人に知らせるに充分だったに違いない。

きっと私があまりにもものすごい顔をしていたんだろう。歯医者さんは「とりあえず様子を見ましょう。」と言った。そして歯科衛生士さんに言って、プラウトの使い方を私に教えさせた。その時私は何も言わなかったが、プラウトでは結果が同じことはわかっていた。なにしろ私は毎日愛する歯をプラウトで磨いているのだから。とにかく私には半年間の猶予が与えられたわけだ。その結果いかんで、愛する歯の運命が決まる。

歯科医院からの帰り道、私はすごいことを考えていた。紙やすりを買ってきて小さな短冊状に切り、それで毎日歯を削ろう。歯茎にばい菌が入って化膿しても、そんなことはどうでもいい。愛する歯を守るために、出来ることをすべてやろう。とにかく親知らずの隣の歯をきれいにする。絶対にきれいにする。プラウトでは隣の歯の側面に毛先がうまく届かない。他の方法を試すんだ。

この報告には、もちろん続きがある。今も色々なことが進行中だ。でも今日はたくさん書きすぎた。また日を改めて書こう。
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