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標題電子ミュジーク・コンクレート(13) [  標題電子MC(補完計画)]

1.MS-20ユーザーのためのXILS 3基本操作




目次

1-0. はじめに

1-1. XILS 3の構造とマトリックス(パッチパネル)の使用
1-1-1. 各モジュールの完全独立
1-1-2. マトリックスの使用
1-1-3. ミキサーに代わる出力LEVELつまみ

1-2. 各モジュール(基本モジュールのみ解説)
1-2-1. VCO
1-2-2. VCF
1-2-3. EG/VCA

1-3. 音声出力部




1-0. はじめに

この記述は、ソフトウェアシンセサイザーXILS 3の使い方を、(1)英語のマニュアルを読むのが面倒くさい日本人が気楽に読める日本語簡易マニュアルとして、(2)実際にXILS 3をいじってみてマニュアルに書かれていないが初心者時は注意したい事を書き加えて少しだけ実用性を増すようにと書かれている。(3)シーケンサー機能や外部入力機能(MS-20のESPに相当)を使わずにシンセサイザーとしての基本機能に限るならば、この日本語記述とそこからの類推でXILS 3の使い方がわかることを目指している。

欠点として、(1)私自身が超初心者である。その初心者が英語マニュアルを読みつつ実際に試しながら記述しているので、至らない点、今後修正されうる点がある。(2)XILS 3はあまりにも多機能なので、その全モジュールについて一気に全部調査することも日本語解説を書くことも私には無理があった。そこで、シンセサイザーとして基本的なVCO、VCF、VCA+EGとその周辺について「XILS 3操作の基礎を固める」という書き方をしているが、裏を返せばそれ以外(シーケンサー機能等)には触れていない。(3)私が使っているXILS 3は無料の機能制限版なので、音色バンクの保存等はできない。それでこの記述も機能制限版で実現可能な範囲内のことを書いている。




1-1. XILS 3の構造とマトリックス(パッチパネル)の使用

1-1-1. 各モジュールの完全独立

XILS 3はVCOやVCFなどの各モジュールが完全に独立しており、それらの出力/入力をマニピュレーター(エンジニア兼演奏者)が「マトリックス」と呼ばれるパッチパネルを使って接続することで音が出る。




1-1-2. マトリックスの使用

パッチパネルの使用という意味ではMS-20とコンセプトが似ているが、さらに徹底している。MS-20ならばVCOからVCFを経てVCAまでの音声ストリームと、キーボードからVCOへなどのCVストリームには既定のお膳立てがあり、パッチパネルを使わなくても「もっともありがちな接続」が内部で出来ているが、XILS 3にはそういうお膳立てがない。完全に自由な接続が可能な分だけ、接続しても無意味な組み合わせも当たり前に存在し、マニピュレーターには信号の流れを完全に把握して「マトリックス」にピンを刺す技量が要求される。マトリックスにひとつもピンが刺さっていない状態は、キーボードから最終出力まで何も接続していない状態を意味し、音が出るはずがない。

xils3_matrix.png
「マトリックス」は規則正しく穴の開いた四角形のボードで、イメージ的にはボードの裏側に縦横に何本ものコードが平行して走っているかのような動作をする。穴にピンを刺さない状態では縦のコードと横のコードの交差点は接続していないが、縦横のコードの交差点にある穴にピンを刺すとその部分でコードが接続するというイメージだ。もしも横のコードがVCOの音声出力で縦のコードがVCFの音声入力ならば、これでVCOとVCFがつながったことになる。

マトリックスの左側には全部の出力が書かれ、各出力の表記から水平にたどる一列分の穴が、その出力(上の喩えの「イメージとしてのコード」)を意味する。マトリックスの上側には全部の入力が書かれ、そこから垂直にたどる一列分の穴が、その入力を意味する。マニピュレーターは穴にピンを刺す(実際にはピンの抜き差しはマウスのクリック)ことで目的の接続を得る。




1-1-3. ミキサーに代わる出力LEVELつまみ

前述のとおりに各モジュールは独立し、マトリックスを介して接続されるが、ここでMS-20の動作と比べてみたい。MS-20が同様の動作をする際には時としてミキサーが必要になる。たとえば2つのVCOの音声出力とHPFの間にVCO MIXERがあるように。もしもこれがないと、2つのVCOからの音声をどんな比率でHPFに入れるかが指定できない。XILS 3はミキサーのかわりにマトリックスという方法を用いており、マトリックスの部分にボリュームを付けるわけに行かない。そこで、基本的に各モジュールの中に出力LEVELつまみが存在する。




1-2. 各モジュール(基本モジュールのみ解説)

あまりにも沢山の情報があるので、今は最低限必要な基本的モジュールに絞って見てゆく。

1-2-1. VCO

VCO1(および各VCOに共通部分の説明)

xils3_vco1.png
3つあるVCOのうちの1番目。つまみ類は右パネルの左上にある。

モジュールのつまみのうち、いちばん左側にある大きなつまみはVCOの発振周波数を調整するつまみだが、複雑な構造と操作法になっている。この大きなつまみは中央部のつまみと外側のリングに分かれており、外側のリングはオクターブごとの音程シフトとLOW(VCOをLFOとして使える)を切り替える。中央部のつまみは音程の微調整だが、これをマウスの左ボタンでいじると粗い調整、右ボタンでいじると細かい調整ができる。

SHAPEつまみは波形の変更だが、MS-20のパルス幅変更とは違い全波形に影響する。サイン波にも変調がかかり倍音が現れる(試してみたが、これは結果がわからなかった)。鋸歯状波は追加の鋸歯波形を生む。矩形波(VCO2とVCO3にある)はパルス幅の変更。三角波(VCO2とVCO3にある)は立ち上がりが変化して鋸歯状波になる。

LEVELつまみは2つある。各VCOは2つの波形をもち、それぞれの波形にLEVELつまみがある。2つの波形の比率を調整しつつミックスして出力可能。ただし、出力はこのつまみだけでなく、マトリックスの接続も関係していることを忘れてはならない。たとえば鋸歯状波をFILTER(VCF)に入力して音を出している最中に、サイン波のLEVELをいじっても音は変わらない。

VCOへのCV入力は、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)で確認・設定できる。基本的な接続は、KEYB 1をOSC FREQの1,2,3すべてと接続する。これに関連するものとして、同じ左パネルでKEYBOARDをクリックした時に右上のほうに見えるKEY FOLLOW 1つまみがある。普通はCVをVCOに渡して正しい音階を発振するために、つまみが中央(Range: 50.00)にセットしてある。なお、キーボード出力KCVはVCO以外のCVとすることもあるので、そのために別個にKEYB 2出力とそのレベル調整用KEY FOLLOW 2つまみがある。

VCOからの音声出力は、右パネル左下のマトリックスで他のモジュールと接続する。たとえば、もっともありがちな接続であるVCFへの接続をするならば、まず、どのVCO(1~3;複数選択可)の、どの波形(複数選択可)を出力するか決める。MS-20のように半分お膳立てされたパッチワークとは異なるので注意:各VCOごとでなく、VCOの個々の出力波形ごとに「接続するかしないか」を決める。ここで接続しなかった波形は、たとえそのVCOを(もうひとつの波形で)接続したつもりになっていても、もちろん出力されない。(でもモジュールのつまみ類が並んでいるセクションでは、いかにも波形が有効なようにつまみを操作できてしまうからまぎらわしい。)そして、決めた波形(複数あるならば全て)をSIGNALSセクションのFILTERに接続する。




VCO2についてはVCO1に準じるので解説しない。

VCO3
xils3_vco3.png
VCO3も基本的にVCO1/2と同じだが、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)にVCO3の音声出力がある。このマトリックスはCVを接続するためのもの。つまり、VCO3の発振周波数をLOWに設定してVC-LFOとし、これをVCO1、VCO2、VCFなどのCVとする意図がある。XILS 3にはLFOというモジュールがなく、必要に応じてこのVCO3をLFOとして使う。




1-2-2. VCF

xils3_vcf.png
XILS 3のVCFはLPFひとつであり、HPFはない。

モジュールのつまみ類は右パネルの右上に収まり、FILTER OSCILLATORという名前が付いている。いちばん左側はLPFのカットオフ周波数、その右が一般にレゾナンスと呼ばれるもの(MS-20ではPEAKと呼ばれる)。レゾナンスつまみを右一杯に上げると入力なしでも共振して音を出すのは教科書どおりだが、そのモードが3種類設けられており、トグルスイッチで切り替える。試してみたところ、トグルスイッチが下の状態では自己発振にならないようだ。

いちばん右側のつまみは音声出力LEVEL。「マトリックス」を使ってVCF以外の音声出力とミックスする場合は、このLEVELでVCFの音量を調節することになる。

VCFへの音声入力とVCFからの音声出力はどちらも右パネル左下のマトリックスで他のモジュールと接続する。

VCFへのCV入力は、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)と、右パネル左下のマトリックスの2つに分かれている。カットオフ周波数をエンベロープに連動させるには、右パネル左下のマトリックスのTRAPEZOIDをCONTROLSセクションのFILTERに接続する。連動の強さはENVELOPE SHAPERのTRAPEZOIDのLEVELで決める。カットオフ周波数をキー音程に連動させるには、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(左上)を使う。いまVCOのKCVとしてKEYB 1を使っているならば、使っていないほうのKEYB 2をFILTERに接続する。次に、同じ左パネルでKEYBOARDタブをクリックすると、右上にKEY FOLLOW 2つまみがある。これでKCVの効きの強さを調節し、同時にFILTER OSCILLATORのFREQUENCYでCV全体のゲインを調節する。




1-2-3. EG/VCA

xils3_eg.png
XILS 3は各モジュールが独立しているが、VCAは例外的にEGと一体化している。つまりこのEGは、(マトリックスを使用してVCOやVCFのCVに併用するのは可能だが)常にVCAを通して音声出力する時に使われ、それ以外の特殊用途には使えないことになる。

XILS 3のEGは特殊な仕様だ。よくあるEGはADSRの4パラメータを備えるが、XILS 3のEGはtrapezoid(台形)と命名され、エンベロープを台形として扱う。各パラメータや2つの出力LEVELについてマニュアルには何も書かれていないので、試してみるしかない。また、ぜひともADSR式のEGをと望むユーザーのために、[ENVELOPE SHAPER]の文字をクリックするとADSR式のEGに切り替わるようになっている。

マトリックスを使った入出力の接続は、上記のとおりこのEGがtrapezoidと呼ばれるので、ENV.と書かれている部分だけでなくTRAPEZOIDまたはTRAPEZと書かれている部分もEGの入出力だ。(基本的にEG用のトリガーやエンベロープに関係する名称としてTRAPEZ(OID)、VCAの入出力である音声信号にENVの名称が使われているようだ。ただし例外としてMS-20のESPに相当する機能ではエンベロープがENV. FOLLOWと書かれている。)また、CVとしてはEGへのトリガーだけでなく、DECAYパラメータもCVでコントロール可能のようだ。これらについてはマニュアルに詳しく書かれていないので、試してみるしかない。今のところ、右パネル左下のマトリックスのENV. SIGNALが音声出力、SIGNALSセクションのENVが音声入力を意味し、左パネルでMATRIXタブをクリックした時に現れるマトリックス(右上)のKEYB ONとKEYB OFFを両方ともTRAPEZに接続するとトリガーになることは確認済み。




1-3. 音声出力部

xils3_main_level.png
XILS 3のEG/VCAを通った音声は、2系統の音声出力部に入る。

マトリックスの基本的な接続は、右パネル左下のマトリックスのENV. SIGNALをSIGNALSセクションのOUT 1とOUT 2の両方に接続する(もちろんEGにはVCF等からの音声が入っているものとする)。この音声出力はCVによるコントロールも可能だが、普通はそこまでしないだろう。

2系統の音声出力部に入った音声は、まずOUTPUT FILTERというスタティック・フィルターを通る。OUTPUT FILTERのつまみは右パネルの中央右寄りにある。大事なのは、このフィルターを使わないならばトグルスイッチを中央(OFF)にしておくということだ。これを忘れると、VCF以外のフィルターもかかった音が出てしまう。このOUTPUT FILTERのON/OFFはマトリックスのピン差し込み状態からはわからないので、忘れやすい。

2系統の音声出力は、そのままステレオ出力の左と右になるのではない。右パネルの右下に2系統それぞれのPAN EXT.があり、ステレオ出力での左右の位置を設定できる。また、2系統それぞれのLEVELもある。

全体の音量調節つまみは右パネルの右端、電源ボタンらしきものの下にある。

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