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サンプリング調査と安全宣言の実体 [震災後の放射能漏れ問題]

米の出荷停止については11月16日の速報から一夜明けて本格的に報道があり詳しい情報が入ったが、このブログでは速報の時点で一度記事を書いたのと私個人の忙しさのせいで、それ以後の記事は書いていなかった。遅れたが、これからの食の安全を考察する資料として改めて記したい。情報源は11月20日の日本テレビ「真相報道バンキシャ!」。

福島県大波地区の1戸の農家から、国の暫定基準値500ベクレル/kgを超える630ベクレル/kgの放射性セシウムが検出され、この地区の米は、米として初めての出荷停止になった。出荷停止対象は大波地区の全コメ農家154戸。先月、福島県はコメの安全宣言を出していた。それなのに、なぜ?

福島県が行った放射性物質調査はどのようなものだったのか。まず予備調査として収穫前に大波地区154戸中の1戸の米を調査、さらに本調査として収穫後に、空間線量の高い農家2戸の米を調査、いずれの調査も国の基準値を下回った。本調査の2戸はそれぞれたったの28ベクレル、33ベクレル/kgだった。こうして大波地区全体の出荷が可能と判断された。

今回高い放射線が検出された農家は、県の調査対象ではなかった。この農家の田んぼは隣の小国地区に隣接している。この小国地区は放射線量の高い「特定避難勧奨地点」を含んでいる。この小国地区の山から流れ落ちる雨水は下の沢を流れ、例の生産農家の田んぼはその沢のすぐ脇にある。ここからは専門家による推測となるが、田んぼが、山から雨水と共に流れ落ちたセシウムを沢の水から取り入れた可能性がある。あるいは周囲の木から雨水と共に落ちたセシウムが直接田んぼに入った可能性もある。

この生産農家は、自分の米が安全だと確認するためにみずからJAに調査してもらったが、皮肉にも高い放射線が検出された。福島県は今後、調査を強化すると言っている。

上記の記事から、私はいくつかの事を考えた。まず、食の安全について「今」気にするべきは何か。原発事故以来、時期によって気にするべき事柄が変わってきている。事故直後はもちろん雨と共に直接降り注ぐセシウムが大問題だったが、その後、雨と共にセシウムを吸い込んだ稲わらの汚染、それを食べた牛の汚染、稲わらと同様に水を吸いやすく乾燥するとセシウムが濃縮する腐葉土やシイタケ原木の汚染へと注意すべき対象が変化した。そして今は、国や自治体の検査をすり抜けるセシウムへの対応が中心的な問題と思われる。私の10月5日の記事には、当時の狭山茶の事が書いてある。放射性セシウムが基準値の2倍を超える狭山茶が販売されていた事件だ。当時埼玉県は、「茶葉の大部分を産出する地域で検査すれば良いだろう」「もっとも多く葉が摘まれる時期に調査すれば良いだろう」という考え方をしていた。そしてその場所時間で高い値の放射線が検出されなかったので県は安全宣言をした。ところが、場所的時間的に調査範囲以外から高濃度のセシウムが見つかる結果となった。今回の福島県の放射線調査と似ている。私は埼玉県がどうの福島県がどうのと言いたいのではない。他のどの県でも、今現在行われている「サンプリング調査」とはこの程度のものなのだという認識を国民ひとりひとりが持つべきだと言いたい。「安全宣言」もまたその程度のものなのだ。「だからどうするんだ」というのは確かに難しい事だ。上記の記事でも、高い濃度のセシウムが検出されたのはたった1戸で、他の多くの福島県産の米は基準値未満だったわけだ。しかしまた、上記の程度のサンプリング検査をすり抜けた米は他にもあるだろう。だからどうするのかは各自がこれから考えてゆかなければならない。いずれにせよ、自分や自分の愛する子供を守りたかったら、現実の認識はしておくべきだ。

もうひとつ思った事がある。今回の生産農家は、もちろん悪事を働いたのではない。普通に例年通りに一生懸命仕事をして米を生産しただけだ。そして念のためにとJAに調査を依頼したところ、セシウムが出てしまい、周囲の農家も巻き込まれて出荷停止になってしまい、なんだか悪者のようになってしまった。自分から調査をした偉い人のはずなのに。こういう悲しい皮肉が時々起っている。7月16日の私の記事では牛に与える稲わらから高い放射線が検出された話が書いてあるが、この時も肉牛農家は自分から調査を依頼した偉い人だった。

残念ながら仕事に行かねばならない。今日の記事はここまでだ。

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