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ござダニ退治奮闘記 [ここは地獄の3丁目]

今年の1月に記事を書いたが、私は今住んでいる家への愛を示すために、擦れた畳の上に敷く敷物を買った。「い草上敷き」、要するに「ござ」だ。江戸間の四畳半いっぱいの広さがある。品物が到着したらすぐに敷くつもりだったが、私は腰、足、尻、目と、立て続けに病気になり何も出来なくなった。その後も腰の調子は良くならず、ついに夏が過ぎ秋が来た。今年の始めよりは体調がましになった。私は考えた。一気に全部やろうとするから何も出来ない。腰痛の状態では重い洋服ダンスを動かせないと考えるから何も始まらないんだ。洋服ダンスの事は考えるな。とにかく「ござ」のダニ退治だけをする。その先は考えない。そうすれば、とにかく動き始めて、ダニ退治だけは終わるだろう。
そう、ダニ退治。今時のい草はみんな中国産でダニがいると教えてくれたのは、畳屋さんだった。何年も前、畳を買って敷いてもらった時に、中身が発泡スチロールなのを親が見つけてビックリして文句を言った。親の世代にとっては、畳の中身が発泡スチロールだなんて、あり得ない事だから。そうしたら畳屋さんが言うには、ダニのいる中国産のい草や藁を少なく使うために、今はみんな中身が発泡スチロールだそうだ。だから私は「ござ」と一緒にダニアース2本も買った。ネットで調べてスプレー式がいいと思った。買った「ござ」を使う前に、まずダニを退治しなければならない。で、買ったら上記の通りに私が病気になり、「ござ」もダニアースも半年以上も放置したという次第だ。
そしてようやく作業の日が来た。四畳半用のござは大きい。狭いベランダでどうやって広げたらいいのだろう。でも世の中は「なるようになる」さ。やってみるしかない。そう思って始めた。やってみると、「なるようにしかならなかった」。ベランダの手すりと物干し竿が同じ高さで並行するように設置し、そこにござを渡した。それから折り畳まれているござを広げようとしたが、物干し竿に渡されたござは平面でなく折れているから広がらない。そんな事は始めから予想していたが、他にどうしようもなかった。折れたござを無理やり広げようとすると折り目がよじれた。これでは、ござを大事にしているのだか壊しているのだかわからない。それからダニアースを噴霧開始。初めはダニアースを自分が浴びないように注意した。眼鏡をかけ、マスクをし、ウインドブレーカーを着、風上からスプレー。しかしそんな綺麗事は言っていられないと知った。広いござにスプレーするには、しかも大きすぎて容易にひっくり返す事ができない状況では、風下へも行ってスプレーするしかない。私は結局ダニアースの霧を顔と体に浴びながら、ガンガンと作業を続けた。世の中に綺麗事はないのだ。綺麗にする作業は汚れる仕事だ。ダニアースの1本目は比較的早く空になった。商品を買った時は色々調べたから、1本をどの位の範囲に使うべきか考えていたはずだ。でもそれは半年以上前のこと。覚えているはずがない。それに今は必死だ。ダニアーススプレー2本では決定的に足りない。それに追い討ちをかけて、苦労して折り目を広げたりひっくり返したりするうちに今スプレーしているのが表側だか裏側だかわからなくなった。これはもう最終的には、ござを作った中国の良心を信じるしかない。ダニは退治してくれたと信じるしかない。中国は、い草のダニを退治してくれる国だろうか。どうやって信じるんだ。