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初めての内覧 [ここは地獄の3丁目]

初めての住宅内覧というのを体験した。物件はURが管理する賃貸。URからもらってきた鍵貸し出し票と本人確認の保険証等を持って住宅の管理事務所に行き、鍵貸し出し票を渡し、かわりに鍵を借りる。一番意外だったのは、URを仲介しなくても管理事務所で相談して鍵を貸し出してもらえるらしいという事だった。それならば次回からはURを通さずに事を運んだ方が交通費と時間の節約になる。今回の内覧に必要なものは、上記の貸し出し票と本人確認書類。URからもらった紙には、他に持って行ったほうが良いものとしてスリッパ、懐中電灯、巻き尺、メモ用紙と筆記具が書いてあった。私がそれに追加したのはデジカメ。

内覧の印象は私と親とで随分違った。親の第一印象は部屋が小さいという事だった。「タンスや戸棚を運んできたら、もう私の寝る所がない」と言って妙にショックを受けていた。いっぽう私は初めからそんなものだと思っていたので、何でもなかった。以前に書いたが私は越してきたら人生終わりだと思っている。資金がないから、越した住居は小さいと初めからわかっており、今の家の思い出ある多くのものを捨てなければならない。仕事人間だった私がリストラを体験して職場に不信感をもち、仕事を生き甲斐に出来なくなり、それ以後唯一生き甲斐にしている昔の思い出を捨てろという事だ。生ける屍として存在しろと言われているのだ。初めから地獄を内覧しに来たのに、それ以上何のショックがあろうか。なるほどな。やっぱりか。それだけだ。それに、以前に家のうすべり(ござ)を換えようとネット検索した時に、団地サイズの1畳がうちの1畳よりも小さいのはわかっていた。親はそれを忘れていたそうだ。

その物件で、私は個人的に3つのことを思った。まず、押し入れの襖の敷居がすぐ横の出入口の引き戸の敷居を兼ねていることを不審に思った。向こうから人が部屋へ入ろうとする丁度その時に部屋の中の人が押し入れの襖を開けると、入ろうとする人は目の前で入り口を閉められてしまう。

次に思ったのは、これは親が見つけたのだが、襖をぴったりと閉めた状態で、上に隙間が開く。ここは賃貸だから、初期状態のこういう点はしっかり記録しておき、出て行く時に自分の仕業とみなされ修理をさせられないように気を付けなければならない。

3つめは、私個人の事だが私としてはここに記録しておかなければならない。物件は2DKだったが、2つの部屋が小さいと感じたのと反対に、キッチンと仕切りなく続くダイニングが私には大きすぎる。そもそも現在、うちにダイニングはない。長年、あるひと部屋にテーブルを出してはそこへ料理を運んで食べていた。その状態で50年くらい生きてきた。今更広いダイニングは無用。そのぶん部屋のほうを広くしてほしい。つまり私の勝手な理想は、ダイニング要らないからそのぶん部屋を大きく、だ。ダイニングスペースを部屋として使うという方法もないことはないが、キッチンと直結しているから揚げ物を作る時などは油臭くてリビングルームって感じじゃないだろう。ニンニクくさい料理の時、私はその場でゆっくり読書ができない。食事系の空間と仕事系の空間は仕切りたい。

管理事務所まで来て初めて知ったこと。この物件は高いビルの上から2階目だが、こういう高い所は鳩の糞害があるという。とくに今は人が住んでいないから。行ってみると、確かにベランダに鳩の糞があった。

内覧の時、周りの住居が出す音にも気をつけてみると良いそうだ。周りは嫌に静かだった。その静かさの中で音を立てないでそーっと歩くのが私。構わずスタスタ歩くのが親だった。私は、越したら最後、こうして音を立てないように気をつけて暮らさなきゃならないんだなと思った。親は無頓着だ。管理事務所に戻ってから聞いたところでは、この物件の上も下もご老人が住み、隣はサラリーマンで昼間はいないそうだ。部屋が狭いといつまでもこだわる親とは違い、私は、これは住みやすい物件だったんじゃないかと思った。