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誰も見ていない非常勤 [非常勤講師外伝]

以前に私は、学校が非常勤講師を見ていないと書きました。つまり、どんなに教え子から注目される授業をしてもそれを学校は知ろうとしないし評価しようとしない。そのくせ時には私に、身に覚えのない濡れ衣を着せることもあった。私を見ようとしないから、他人が何か言ったことを能天気に信じ込む。

さて、国会での発言を聞くと。政治家も同様に非常勤講師のことは頭の隅にもないように聞こえます。この前もこんな言葉が聞こえました。学校の先生は一般企業より良い給料をもらっているというが、それは本当なのか。教員免許状の定期的更新というように締めるばかりでいいのか。教育を良くするためには現場の教員の環境を良くしなくてはいけない、と。学校の先生の収入が良いと言われている、という大前提そのものが、政治家の頭に専任教師のことしかない証拠です。その大前提に疑問を投げかける発言をした政治家でさえも、この曖昧で短い発言からは、私には年収70万円の非常勤のことまで念頭に置いて発言なさっているとは思えません。

それでは学校は専任教師がその大半を占めているのか? いいえ、頭数から言えば非常勤講師が大半を占めています。確かに大事な仕事は専任がすべて行います。たとえばクラスの担任、諸行事、成績とりまとめ、保護者との面談。だから専任の仕事は大変です。非常勤講師はただ自分の授業を担当するだけです。そこまではそうなのですが、学校で行う多くの授業の過半数、いや大部分は非常勤講師が担当しています。専任には上に挙げた沢山の仕事があるから。つまり多くの非常勤講師が日常的に生徒に接します。その非常勤のことが頭にまったくなくて、それで教育が良くなるのでしょうか。

これほど非常勤を誰も見ておらず、仕事は減らされる一方だと、やる気を出せと言われても「どうやって?」と反問することになりかねない。今までは、学校に失望しても、専任になることに嫌悪感すら覚えるようになっても、それでもいざ授業が始まって教え子に接すると「この子たちのために頑張ろう」と思ったものでした。でもこのまま誰も非常勤を見ず、境遇が悪くなるばかりなら、どうなるだろう。昔の中国に、「倉廩実ちて則ち礼節を知り、衣食足りて則ち栄辱を知る」と言った人がいるそうです。どんなに良い授業をしても、どうせまた仕事が減るのか。もうこの職場からは、食ってゆけるだけの給料をもらえない。いいかげんな授業をしても、誰も見ていない。今まで良い授業を心がけていた私が馬鹿じゃないか。

さあどうする、政治家。さあどうする、学校。


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