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非常勤講師とベルシダーの法則 [非常勤講師外伝]

どうして非常勤講師は精神を病むのか。この問題を考えるには、ベルシダーの法則が参考になる。

ベルシダーの法則とは簡単に説明するなら、人は縦方向の圧力には強いが横方向の揺さぶりにはいつ壊れるかわからないということだ。

昔、非常勤講師は、専任になる前段階としてその学校にいた。いずれは専任になれるはずだった。ところが文部省(今の文部科学省)がパート採用を奨励したこともあり、学校は専任をあまり雇わず非常勤を多くして経費を節約するようになった。だから数年後には専任になれると思っていた非常勤講師は、そのまま十年以上も非常勤講師のままとなった。そればかりか、一般的には仕事に慣れてベテランになれば給与もアップするはずなのに、少子化のために毎年給与は減らされる一方だった。上へ向かって昇進しようと思っていたのに、どんなに努力しようとその努力とはまったく関係なく立場が悪くなっていった。しかしそれでも非常勤講師は壊れなかった。縦方向の圧力には人は結構強いのだ。

さて、毎年減り続ける仕事と給与は、ついに限界の状態まで来た。ある年、ある職場が馬鹿をやった。つまり、誰が見ても理不尽な形で仕事を削減しようとした。急な変化は、それまで大人しくしていた非常勤講師たちを立ち上がらせた。少しずつ穏やかに変化させてゆけば事が荒立たないものを、そんなこともわからぬ馬鹿なのだ学校は。それはともかく、私はこの職場を憎み、呆れ、見捨て、別の職場に肩入れするようになった。非常勤講師は、ふつう複数の職場をかけもちしているのだ(そうでないと生活に必要なだけの金を稼げない)。ところが今度は、そっちの職場も馬鹿をやった。私はこっちの職場も憎み、呆れ、見捨て、今度は最初の職場に肩入れするようになった。賢明なあなたはもうわかっただろう。この時点で私は、一度自分が見捨てた職場にまたすがることになった。その職場が馬鹿をやったことを知りつつ。

職場Aから職場Bへ、職場Bから職場Aへ、自分がすがっているものがいずれも馬鹿者だと知りつつ、あっちからこっちへと肩入れ先を変えねばならない。だから私の心は自分が「根無し草」だということを認識してしまった。そして生活不安が生じた。横方向の揺さぶりは、人を病ませる。

では、壊れてしまった人はどうすればいいのか。ベルシダーの法則を発見したイデ氏は、身をもってそれも示してくれた。どんなに絶望的な状況でも、決して人生を諦めるなということだ。


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