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従業員よ、あなたは自分の仕事を誇りに思うからそれが出来るのですか [非常勤講師外伝]

最近、接客業の従業員に感心することがある。

あるデパートの靴店で、レシート1枚で1回福引ができますと言われた。その前に行った服店では買物をしたのに何も言われなかった。そのことを隣にいた母がポロッと言うと、なんとその靴店の店員は「それは申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げたのだ。同じデパート内の店とはいえ、別の店のことだ。それどころか今どき、自分の店のことでも自分のミスでなければ知らぬ顔の店員は多い。私たちはこの店を一度離れ、もう一足靴が必要なことに気づいてすぐに戻ってきた。そして店頭で一足の靴を見ていると、あの店員が来て「私の名前を呼んで」靴の説明をした。母は、「ついさっきの事だから名前を覚えていたのね」と言っていたがそれは違う。私は教師だが、教師はある意味接客業だ。名前を覚えることの面倒さは知っている。彼にとっては、もう去った客だったのだ。また戻ってくるとは普通思わない。私ならこの時点で相手の名前は忘れる。

そして別の日、上野広小路の某デパートのレストランで食事をすることになった。正月三箇日が過ぎてあまり経っていなかったので、初詣で帰りと思われる客でレストランは一杯、料理が運ばれるまでにかなり待った。その時、注文をとったウェイトレスがまた来て、「お料理はただいまお出しする所です。たいへん遅くなりまして申し訳ありません」と言って深々と頭を下げた。今どき珍しく礼儀正しい。私の今までの経験では、客が痺れを切らせて「まだなのか」と聞いた時点でウェイターが厨房へ聞きに行き、慌てて詫びるパターンばかりだった。料理を運んだ時にも、このウェイトレスはまた詫びて頭を下げた。

私も昔は同じことをした。ある職場に就職したのは、前任者の専任の口が突然に決まって辞めてしまい、その授業を誰かにやってもらわねばらなかった、という経緯だった。前任者は行ってしまったから私は顔も見たことはない。引継ぎの手紙を見ただけだ。でも私が授業に臨む時にはその大学の代表としてそこにいると思った。だから、目の前の学生にたいして、まず授業を中断させたことと、担当者が変わったことを詫びて、頭を下げた。

今も同じことをするかって? できないだろう。その後大学は私に、「来年度からこのクラスは必修でなく、履修したい人だけが任意に取ることに決めます。この任意で取るクラスをあなたに割り振ります。任意で取るクラスだから一人も履修しませんでした。給料は払いません」ということを堂々とやってみせた。私は激怒すると同時に、これからの生活不安に怯え、じきに精神を壊した。そして学校を憎悪した。私をここまで苦しめるものは潰れろ。潰れろ、大学!

今回、私は靴店の店員と、レストランのウェイトレスに感心した。自分も頑張らなければと思った。でも、もしまた学校が馬鹿をやってくれたら、私はもう頭を下げないだろう。

靴店の店員さん、レストランのウェイトレスさん、あなたは自分の仕事を誇りに思うからそれが出来るのですか。


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