SSブログ

カネはないがカミはある [非常勤講師外伝]

非常勤講師は時間給です。ところで、学校には夏休みと冬休みと春休みがあります。これの意味するところは、休みの間は仕事がなく、給料がないということです。

こんなものすごいシステムでも、昔は納得されていました。なぜなら昔は、非常勤講師は新米先生が常勤になるまでの数年間する仕事か、あるいはすでに常勤の職をもっている先生が副職としてするものだったからです。

でも事情が変わりました。昔の文部省、つまり今の文部科学省の前身が、常勤でないパート勤務、つまり先生ならば非常勤を雇用することを奨励したらしいのです。確かにそれをすると雇用者側は出費を抑えることができて助かる。

でも参ったのは非常勤をやってた私たちでした。数年頑張れば常勤になれると思っていたら、何年勤めても非常勤のまま。年収は一般企業の新入社員よりも少ない。10年勤め、15年勤めると、年収は上がるどころか少子化の影響で仕事を減らされて下がり始めた。

だから今どきの非常勤講師はカネがないんです。

でも、たったひとつ他の職業よりもたくさん持っているものがある。それがカミです。

まず試験のたびに問題用紙を印刷しますよね。これ、人数よりも数枚多く印刷するのが常識です。だって、万一汚れた紙が混じるなどして枚数が足りなかったら大変でしょう。でも実際には多く印刷した分が余るばかりでなく、数人の欠席者があればその分も余ります。これに担当授業の数を掛けると、すでに十数枚の紙が手元に残りました。試験は大学なら最低前期後期で二回、高校なら中間期末全部で五回。また掛け算しましょう。

高校の場合は、中間期末の試験以外にもたくさんのプリントを作って手取り足取り教えてやらないと駄目なので、これらのプリントについても毎回少しずつの余りが出ます。

大学の場合はそういうプリントなしでも済むのですが、そのかわりに年度初めに教科書を買いそびれる学生がいるのです。教科書なしで授業を受けさせるのは教育上よくないので、教科書を注文して必ず後日手に入れるという約束のもとに、教科書が届くまでの授業数回分だけをコピーして使わせます。実はこのコピーも一人か二人分余分に用意しなければなりません。というのは、教科書を買いそびれましたと言いに来る学生は後から増えるのです(笑)。最初の授業を欠席して二回目か三回目にふらっと来て実は教科書がないとか。さらには何も言いに来ないで授業が四回五回と進み、その頃になって私がボーッとしている学生に気づいて問うと教科書を持っていないと言う。こうして余分に印刷したものも、結局少し余ります。それどころか、せっかくその人のためにコピーを用意したのに、翌週から授業に来なくなってしまうことも。これでまた余る。

もちろん、授業の都合で教科書以外に補助教材としてプリントを使うなら、その都度また余りが出ます。

こうして、非常勤講師の手元にはかなり分厚い紙束が残るのです。人によってはこれをポイと捨てたり、学校がリサイクルの置き場を用意していてそこへ置いたりしますが、私にとってはカネがない代わりの唯一の莫大な収入(笑)ですから、このカミは大事に家へ持ち帰り。メモ用紙に使います!

非常勤講師。それは、カネはないがカミはある人間たち。ただしそのカミは、必ず裏に何か印刷してある。テスト問題とか(笑)。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(2) 

nice! 0

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 2