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古銭 [手記さまざま4]

私は若い頃、父や父方の祖母から古銭を受け継いだ。一円札や十円札もある。母方の祖母からは板垣退助の百円札を束で受け継いだ。私はそれらを長年大事に仕舞っていた。ところが、今年の2月に叔父が急死したのをきっかけに、私は今住んでいる家を出なければならなくなった。小さな転居先へ持って行ける物は限られ、自分の大事な思い出の品を捨て続けている私は、受け継いだ古銭も手放さなければならない。私は祖母から受け継いだ古銭を売ることに抵抗がある。抵抗があるだけでなく、そもそも売るにふさわしい金銭的価値がない。確かに天保通宝や寛永通宝、明治や大正のお金もあるが、ネットで調べたところ、希少価値のお金でないときわめて金銭的価値が低い。こういう古銭は売るためのものでなく、親から子へ、子から孫へと受け継ぐことに意義がある。私には残念ながら受け継がせる子がいないが、それでも自分が生きる限り所持していたかった。それが、今住んでいる家を追い出され、ウサギ小屋のような新居には生活必需品しか持って行けない。手放すにしてもまさかゴミとして処分するわけに行かず、土に埋めるのも抵抗があり、残る方法は、ご先祖から受け継がせてもらった物をこともあろうに二足三文で「売る」という見下げ果てたものだ。受け継がせていただいたご先祖に申し訳ない。申し訳ない気持ちから、私は自分一人でこれを売ることができない。この古銭だけは、親に手伝ってもらって、親に売ってもらいたいと思っている。

ゴールデンウィークに入り、やっと時間が出来たので、今日は私が古銭を年代順に飾った額2枚、紙幣を年代順に収めたクリアホルダー1冊、残りの古銭を入れた箱1つに目を通し検閲してから、親に見てもらった。