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スキャン日記 二日にわたる長き闘い [手記さまざま3]

1日目

今回の本は料理本。これこそ私の求めていた本だ。美しい料理の写真に解説。しかしオーバーヘッドスキャナでスキャンするととんでもない低画質になる。つくづく仮保存にしか使えないと思い知らされる。単に解像度の問題ではなく、この本のスキャン結果はたいてい暗かった。本によっては元の本よりもやたらと明るい画像になることもあるのに、この本はやたらと暗い。何が違うのか。サイドライトを使わずメインライトを使えば明るくなるが、本の中央部がテカるから使いたくない。サイドライトはテカらないようにするために、撮影できるぎりぎりの光量なのだろう。しかも照明にムラがある。左右のサイドライトはどうやら光の出る部分がそれぞれ2つに分かれているようで、左右に2つずつテカる場所ができる。テカるのはサイドライトにもっとも近い場所だけなので、小さい本ならばそこを避けて置けるが、大判の本はそうできない。しかもサイドライトからもっとも遠い場所は光量が足りず暗くなる。とくに左下がなぜかしばしば限界を超えて暗い。このスキャナで撮影すると、モニターでうっすらと影になっていても、画像では光量がある閾値を下回るととたんにひどく黒くなるように思える。それと、被写体の色で自動的に明るさを変えているようだが、ひとつの被写体に白いテキスト部分と暗い写真部分があると、自動調節が誤動作して暗めになった結果、写真部分が黒潰れを起こすことがある。
この本は一部のページに端まで暗い写真があるので、最初は観念して「領域をスキャンする」モードで作業しようとした。でもそれだと補正がないからページの歪みがひどい。湾曲して出っ張っている所は大きく、ページの端は小さく見える。そのうちに、「湾曲した本」モードでも大丈夫そうなページもあると気づいた。そこで、可能な限り「湾曲した本」モードで頑張ってみることにした。結局、表紙、裏表紙は「フラットペーパー」で、見返しは暗緑色でとても領域認識できないので「領域をスキャンする」にしたが、その他のページはすべて「湾曲した本」モードで頑張った。

とにかく暗くなりやすかった。多くのページがモニターに映した時点で、元の本よりも明らかに暗かった。ただでさえ元の本よりも暗いので、ページの端が暗い写真だと領域誤認識で切れる。そこで、頭を使う必要と、妥協する必要があった。私はスキャンしながら、この本のレイアウトを見て行った。レイアウトは2種類に限られた。(1)料理の写真が左右両ページの下方にあり、上方は白地に解説のテキストが書かれている。(2)料理の写真が左右どちらかのページ一杯にあり、もう片方のページは綴じ代付近に写真の続きがあるものの、それ以外は白地に解説のテキストが書かれている。(1)の場合は、写真が暗い場合、本を正位置に置いてスキャンするとサイドライトからもっとも遠い所に暗い写真が来て、領域誤認識を起こして写真が切れる。そこで、(1)の場合は本を逆さにしてスキャンする。サイドライトのテカりが写真部分に来るのは妥協しなければならないが、被害を最小限にするために本をサイドライトからできるだけ遠ざける。本を逆さにした結果、サイドライトからもっとも遠い所には白地にテキストがあるから、遠ざけても領域は認識される。いっぽう(2)の場合は、本を正位置に置くか逆さに置くかは写真による。ページ端に少しでも明るい色のあるほうをサイドライトから遠い側にする。ライトから遠い部分はかなり暗くなるので、本をサイドライトにできるだけ近づける。その結果テカりが多く映るがそれは妥協しなければならない。(2)の場合は領域誤認識を心配したが、ページの端から次のページがわずかに覗き、それが白地のことが多く、おそらくその白が領域認識に有利に働いたようで、写真が切れなかった。


2日目

新たなる格闘が始まった。まずは前日のスキャン画像に一括して色調補正を加えるが、それをそのまま全画像に採用するのでなく、それを基本として、気に入らない画像は他の画像(再スキャン画像等)と入れ替える。

では基本となる色調補正はどう決めるか。RalphaのToneCurveにCbCrの前回使用データとしてグラフ左下を少し下げたものが残っていた。基本的な色調補正はどうやらこれで大丈夫なようだ。それに加えて今回はYのグラフ左端を少し上げる。ここを上げると黒の最低レベルが底上げされて画像全体が白っぽくなるが、今回のスキャン結果は影が黒潰れしているので全体のイメージを良くするために敢行する。グラフのマス目ひとつ分上げるとさすがに画像が白っぽくなりすぎて薄っぺらく見えたので、マス目半分まで上げる。さらにColorAdjustのChromaを使う。これは今までの色調補正で使い慣れて、どの値にすると結果がどうなるかがわかっており、使いやすいから。今までの本では-99でオリジナルの本と同じくらい、-62でオリジナルの本よりも鮮やかめになった。

基本となる色調補正は以上のとおりに行った。次は、それでも気に入らない画像を他の画像と入れ替える作業に移る。この作業は全画像を3つに分け、それぞれについて行う。

[1/3]表紙と見返しは画像補正なしとChroma-62+Y+CbCr(以下、-62と記す)を比較してどちらかを採る:
表紙は画像補正なしで良いことを確認済み。裏表紙、見返しもこれに準ずる。扉の小さな絵の色調は悩んだ。画像補正なしのほうが鮮やかだが、他の写真に合わせて-62としよう。

[2/3]中のページ全部は2段階で作業する。まず-62とChroma-99+Y+CbCr(以下、-99と記す)を比較する:
思った通りだった。-62は不自然に色が濃い目だが、意図的にそうしたほうが料理は美味しく見えるかもしれない。-99はナチュラルな濃さだが、インパクトに欠けるかもしれない。これは全画像にあてはまった。そこで両方とも保存する。

次に、今朝一番で一部を再スキャンした画像と比較する。
再スキャンした画像とは何かというと、昨日スキャンした画像を-62画像補正したものを最初から見てゆき、全体の暗さや一部の黒潰れが気になるものを再スキャンしたものだ。再スキャンの方法は前回よりも改善する必要があった。具体的には、(1)本の上下を逆さにしてテカり/黒潰れの起こる場所を変えてみる。(2)どうやらスキャン領域の中心部に暗い写真が来ると明るさ補正が働いてモニター画像が明るくなるようなので、本を左右にずらしてモニター画像が明るくなる位置はないか探す。(3)どうしても画像が暗くなる場合はメインライトに切り替えて撮影する。ただしメインライトを使えば本の中央部にテカりが生じるのと、全体が緑がかった色調になるのは避けられない。

再スキャン画像もまずは色調補正しなければならない。サイドライトによるスキャン画像とメインライトによるスキャン画像に分け、サイドライトによるスキャン画像は上記「基本となる色調補正」を施す。メインライトによるスキャン画像は別に色調補正しなければならない。

メインライトで撮影した画像は、XnViewの「自動レベル」で白くあるべき部分が白くなった。ただしメインライトでの画像は緑がかる度合いが一定でなく、完全に白くなるのは緑がかる度合いが弱い場合。強く緑がかった画像はXnViewの「自動レベル」をかけても白くあるべき部分が完全に白にならず、薄い色が少し残る。そもそもレベルとは色相のことではないのだろうから仕方ない。個々に緑がかる度合いの違う画像をいちいち補正する気にはならない。これらの画像をそのまま-62の参考画像とする。-99のほうには上記「自動レベル」補正したものをさらにRalphaでChromaを-62として参考画像とする。数値的にまぎらわしいが、-62に追加するのはChroma0、-99に追加するのはChroma-62だ。これは見た目で判断し、「鮮やかめ」を-62に追加、「ナチュラル」を-99に追加した結果だ。本来ならば「オリジナルよりも鮮やかめ」「オリジナルと同程度」とすべきだが、今回は黒潰れ改善のためにあまりに画像をいじりすぎたのでアバウトな結果となった。

[3/3]巻末インデックスと裏見返しは画像補正なしと-62を比較してどちらかを採る:
巻末インデックスは画像が少し明るくなる-62を採用。裏見返しは明るくする必要がなく、画像補正なしを採用。カバーつき裏見返しはカバー袖の写真の色調を優先して-62を採用。

後記

1. こんな時間のかかる作業は、好きな本にしかできない。今回は料理の写真満載の本なので久しぶりに見て感動し、お腹を空かせながら作業できたが、そんな本ですら作業が終わる頃には写真を見ても食欲は湧かなくなった。見飽きるだけでなく、スキャン結果の画像がひどい。とくに黒潰れ。

2. 少し前にスキャン作業した本で初めてメインライトの必要性を理解したが、今回はさらに理解した。大判の本でサイドライトから遠い場所が黒潰れを起こす場合は、テカりを覚悟の上でメインライトを使わねばならない。どうせ大判の場合はどこかにテカりが出る。それが画像上部になるか中央部になるかの違いだ。中央部がテカってとくに困るのは、絵や写真でなく文字が書いてある場合だろう。読めなくなるから。メインライトはなぜか緑がかっているが、XnViewの「自動レベル」で白くあるべき場所をかなり白くできる。複数画像一括変換もできるらしい。こうしてメインライトを使うべきとわかっても、個々に違う度合いで緑がかった画像の補正についてはまだ何一つ試していないので二の足を踏んでしまう。サイドライトを使って黒潰れした画像よりもはるかに良いとわかってはいるのだが。

3. 今回のサイドライトによるスキャンは一部の画像にとんでもない黒潰れを出した。画像全体の明るさはオリジナルの本と見比べて、容認すべきはそのままとし、認められないものはメインライトで再スキャンしたので、極端な失敗画像はなくなったはずだ。それにもかかわらず、黒潰れ部分が炭のように黒く、まるでそこが焦げているかのように見える。私が持っている中でおそらく一番魅力的な料理本が、人に見せられる魅力のない画像になってしまった。私は今でも全体をメインライトで再スキャンしたい衝動にかられる。しかしそれはいけない。メインライトを使えば確かに全画像が明るくなり、細部まで見え、炭のような黒潰れはなくなるが、必ず中央あたりにテカりが出てそこの文字は見えない。たとえ再スキャンしてもそれが限界なのだ。この程度のスキャン結果のために、多くの時間をかけ健康を犠牲にして再スキャンするのは間違っている。


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