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それでもやっぱり先生だから [女子大生]

女子学生がたくさんいる学校で先生をやっていて人生にメリットがあるのは、若い女性のやりとりを見て元気をもらえることです。逆にふと悲しくなるのは、けっして彼女たちの仲間には入れないことです。

先日、授業が始まる前に教室のいちばん後ろの席で準備をしていました。そのうちに何人かの女子学生が入ってきて私の前の席に座りました。そこが定席なのでしょう。ひとりの学生が何か大きな缶を取り出しました。見るとディズニーシーのお土産らしい。缶の蓋を開けるとお菓子がざくざく入っています。何十個入りって言ってたかな、なんかすごい量です。
「丸い缶って置き場所に困るよね」
「この缶空いたら何入れる?」
「ネックレス?」
「どうやって取るの? 缶の蓋に穴あけてそこから鉤で吊り上げる?」
「それって大変そう」
「蓋の裏に棒つけてネックレス下げて、蓋を持ち上げたら出てくる?」
「それいいかも」
なんか楽しそうです。

私はこういう時、ふっと自分がおじさんで先生だということを忘れてしまいます。自分の顔や姿は自分で見えない。見えるのは女子学生だけ。聞こえるのは女子学生の話す声だけ。まるで自分が女子学生のような不思議な感覚に陥ることがあります。彼女たちの友達だったら当たり前にする行動をしたくなります。つまり、「ねえねえ、ディズニーシー行ったの?」と言いながら会話に加わりたい。でもそれは、タブーなのです。理由はもちろん、私が彼女たちの友達ではなく、おじさんで先生だから。

始業時間までには教室にたくさんの学生が来ました。私が出席カードを配りながら教壇から教室の最後部まで行くと、さっきの女子学生が周りの友達にディズニーシーの土産を配っていました。私は何食わぬ顔で教室の前まで戻りましたが。じつは残念でした。お菓子をもらえないことがではなく、仲間になれないことが。その学生がお菓子を配った相手は、広い教室の中でも同学年の友達なのです。

授業を始めると、教室の最後部、といってもさっきとは別の場所で、別の女子学生が何か持ち出して隣の友達に話しかけています。遠くてよくわからないけどパンダ・・・?のようです。ペンケースなのか、マスコットなのか、そのへんはよく見えません。私はパンダを見ると近寄って触りたいんですが、なにしろ授業中だから授業を続けなければいけません。授業が終わったら見せてもらおうと思っていたけど、パンダの学生はさっさと帰ってしまったからチャンスを逸しました。それに、学生の持ち物を見せてもらう時は気をつけなければいけません。私が先生だから、注意しに来たのだと勘違いする場合があります。

教室というのは楽しい場所です。女子学生が楽しいことをしています。それを見て元気をもらえます。でも、そこにはルールがあります。近くにいてかまわない。見てかまわない。でも決して仲間になろうとしてはいけない、というルールです。もし私が勘違いをして友達のように振舞ったら、その時は相手の顔が驚きと困惑に変わるでしょう。私はおじさんで先生だから。


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