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個人的仏教探索 (9) [個人的仏教探索]

今回と次回の記事は、「後期密教について学ぶための私の調査メモ」という形になっている。なにしろ後期密教は特殊な対象であり、すぐに全体を把握できるほど簡単な物ではない。そこでまずは自分の足元から少しずつ断片的な知識を積み上げてゆき、いずれはこれを全体の把握へと結びつけてゆきたい。


イダム

イダムとは、チベット密教にだけ存在する概念で、個人ないし宗派にとっての守護神。それはもちろん主尊として尊崇する仏でもある。具体的にはチベットに伝えられたインド密教の「無上瑜伽タントラ」の秘密仏。秘密仏は複数存在するので、そのうちのひとつが自身のイダムとなる。

インド密教では、秘密仏は解脱を目指すさいの成就法の観想対象であり、自らが同一化しようとする仏だったが、守護神としての機能は想定されていなかったと思われる。ところがチベットには密教伝来以前から守護神という考え方があり、そのために密教の仏は守護神(イダム)となった。

さらにチベットでは、一種オカルト的な儀式とその効果も信じられていたらしい。もしも敵対者に自分のイダムを知られてしまうと、そのイダムを調伏する儀礼を遂行され、イダムを無力化されてしまう。それは守護神を失い身を滅ぼすことだ。だから人々は自分のイダムや自分の宗派のイダムを口外しなかった。秘密仏は、実際色々な意味で「秘密の」仏だったわけだ。


タントラ

タントラとは、密教経典、とくに性的ヨーガの実践を主張する経典のこと。それはつまり、「無上瑜伽タントラ」のことだ。

ある高名なタントラの成就者は、タントラの道について、それは選ばれた者だけが知ることができるのであって、余人に知らしめてはならぬという意味の文を書き残したそうだ。

「無上瑜伽タントラ」は「父(ふ)タントラ」「母(も)タントラ」「双入不二タントラ」に分けられ、それぞれにまた複数のタントラが存在する。父タントラには敵を調伏する修法が多く、母タントラは性的ヨーガの実践に積極的だった。双入不二タントラは父・母両タントラを統合止揚しようとするもの。


性的ヨーガ

仏教徒が輪廻からの解脱を実現する方法として、努力して少しずつ煩悩を排除してゆくという一般的方法をあえて採らず、ある秘密の技法によって一気に解脱に達しようとする方法が性的ヨーガ。そしてそれを説く経典がタントラ。

後期密教では、人間の体の中に「霊的な器官」があると思われていた。一番下のチャクラは会陰部にあり、これはまだ性的な力にすぎない。この力を順次上のチャクラに送り、次第に浄化し、頭頂にある最上のチャクラに送ると修行者は解脱するという。現代では実際に性的な行為をするのでなく、観想によって精神的に修行するそうだ。しかし8-10世紀頃のインドでは修行者が実際に女性と性交することでヨーガを実践していたらしい。
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