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耳の詰まりは放置のまま治療終了 [その他の病気]

私が通院する耳鼻科では、最初に受付で現在のおおまかな症状を伝えておいて、先生に会った時に詳しく話すという方法をとっている。私は受付で、耳の詰まりはまだあると伝えておいた。さて診察室に呼ばれて、先生の第一声が「耳の詰まりというのは?」だった。私はこの第一声を不審に思った。なぜなら最初に来院して問診票に私が書いた症状が耳の詰まりだったから。それで「今までお話ししていた、あれのことです」と言った。すると先生はそれには答えずに「今日はまだ聴力検査をしていないんですか。先に検査をしましょう」と言った。会話が噛み合わない。先生が右耳の詰まりよりも、私の右耳が左に比べて聞こえにくいことを気にしているのは私も察していたので、まあそういうことだろうと思った。聴力検査の後、先生は「右耳の聞こえかたはこれで固定しているようなので、治療はここまでにします」と言った。耳の詰まりの治療については一言もなく終わった。受付で支払いをする時、処方箋を渡されなかった。もう薬も出ないということだ。ということはつまり、今まで処方されていた薬は耳の詰まりを改善する目的ではなく、右耳の聞こえかたを改善するためのものだったということだ。医師の思うことと患者の思うことの間に食い違いがあるのは珍しいことでないが、今回は「何を治療するか」という根本目的に相違があったので珍しいといえるだろう。私はそれを少し前から察していたので、「先生、耳の詰まりのほうは?」と蒸し返すことはしなかった。とにかく自分の耳の聴力検査のデータが手に入った。これは大きな収穫だ。今はそれで満足し、かなり軽度になった耳の詰まりは自然治癒を待つとしよう。

さて、聴力検査の結果はというと、私としてはショックだ。前の記事に書いたが、聴力検査最終日になるであろう今日、自己最高記録を出すために、私は前日作戦を練った。私の右耳が左耳ほど聞こえないのはどうしようもないと私も思っている。その現状の中で自己最高記録を出すためにはどうしたら良いか。聴覚器官は変えようがない。あとは、神経を研ぎ澄ますことと、あらかじめどんな音が出るのかを学習しておくこと。さらに作戦を練るに、私の右耳の苦手分野は8000Hzだ。4000Hzは右耳と同じほど聞こえるというのに、8000Hzは右耳でたいていの周波数が聞こえる値よりもさらに低い。つまり8000Hzがダメダメな部分だ。ここだけを他の周波数と同じくらい聞こえるようにできれば、それだけで私としては成果を得た気になれる。なぜならカセット録音を聴く私にとって、8000Hzという高音はぜひとも聴きたい音だ。ここだけでいい。ここだけ改善してくれれば。うちにはオーディオテストレコードをデジタル化したwavがある。その中に8000Hzのサイン波も記録されている。私はこれをあらかじめ聞き、どんな音が聞こえるのかを学習しておく。2000Hzと4000Hzも聞いたが、8000Hzだけはそれと同じボリュームでは聞こえなかった。ボリュームをさらに上げてようやく聞こえた。なるほど、これが私の右耳の「聞こえ方」なんだ。

私にはさらに望むことがあった。カセット録音を聴く私は、前々からセンターの音がセンターで聞こえる環境が欲しいと思っていた。私の右耳は左ほど聞こえないから、センターの音が左寄りで鳴る。これをWindowsの機能で補正できないか。使い勝手が悪いのだが、タスクバー右下のスピーカーの絵を右クリックして「再生デバイス」を選び、スピーカーのプロパティのレベルという所にある「バランス」を調整するといちおう左右のバランスを変更できる。私はこれをいじって、センターの音がおおよそセンターから聞こえるようにした。その状態で松田聖子の赤いスイートピーなどを聴いてみた。これは私にとって新境地だった。音像の定位が今までとは違い、今まで数十年間よく聞こえなかった右の楽器の音がよく聞こえる「新しい赤いスイートピー」だった。でも、感動したかと問われれば逆に不満だった。なぜか。今までは8000Hzはもちろん10000Hzもよく聞こえる左耳がリスニングの大きな部分を占めていた。でも今は左耳は50パーセントを占めるだけで、残りは右耳。その右耳は8000Hzが聞こえていない。だから、今まで聞こえなかった右の楽器音は聞こえても、今までよりも全体的にこもった音に聞こえる。私は高音が好きなんだ。

オーディオテストレコードの8000Hzを聞いた時から思っていたことがある。私はなんとかこの8000Hzを右耳でも聞けるようにならないかと繰り返し聞いた。この周波数を右耳で聞くためにはボリュームを上げなければならない。ボリュームを上げれば聞こえるが、左耳で聞く時のようにきれいに「チー」という音に聞こえず、何か不快に聞こえる。私は何か間違っているかもしれない。耳で聞こえる音は普通の音量だが、ボリュームは上げているんだ。実際には左耳で聞く時よりも大きな音が鳴っている。これは耳に負担をかけるだけで、良い結果を生まないのではないか。

こうして迎えた聴力検査当日。ここで少しのあいだ回想モードに入る。前々回の検査では「フライング押し」をするかという勢いで押し、前回の検査ではそれを悔いて「確実に聞こえたら押す」を実践した。ところがその2つの結果が皮肉なことに同じだった! でも待てよ、「確実に聞こえたら押す」で「フライング押し」と同じ結果が出たということは、聴力が微妙に向上したということではないか。それをふまえ、今回は自己最高記録を出すべく「フライングはしたくないが引っ込み思案にもならないぞ、音が小さく聞こえ始めたという感覚が自分にはもう習得できている、この一戦で自己ベストを必ず出してやるぜ」押しだ。心臓の鼓動音が邪魔をすることも、呼吸音を制御することも、全部学習済みだ。この一戦に賭ける!

そして診察室で結果発表。先生が結果のグラフを見せた時、私は真っ先に右耳の8000Hzを見た。ガーン! なんてことだ。この8000Hzを聞けるように耳に聞かせたはずなのに、逆に10dBも下がってしまった。よく見ると4000Hzも前々回(前回の結果だけコピーをもらっていないので前々回の結果と比べる)の結果よりも5dB下がっている。前日の作戦で大音量で比較的長い間聞かせた結果、聴覚神経を疲れさせてしまったのかもしれない。

結局、耳鼻科の先生は私の耳の詰まりを放置、私は自分の右耳の8000Hzを放置したほうが良いらしい。


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