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人生補完計画 カセットテープ音声のデジタル化保存(18) [  カセットテープ(補完計画)]

今日は、早朝から午後2時過ぎまでかけて作業をしていた。今それが終わった所だ。カセットテープ音声のデジタル化の最後の仕上げとして、MTRで録音した曲素材の保存だけが残っていた。それができるかどうかは、大昔に買ったカセットMTRが動くかどうかにかかっていた。

この記事を最初から読んでくださった有難い方は、「デジタル化は1年かけてゆっくりやると書いていたはずだが」とお考えかもしれない。ひとつには私の悪い癖が出て急いでしまったのと、もうひとつには自作ソフトを使ってデジタル化後に自由にピッチを変更できるようになったので、カセットテープ再生時のピッチをあまり気にせずにどんどんデジタル化したのとで、こんなに早く終わった。

とにかく、残すところはMTR用カセット数巻となった。

MTRというのは「マルチトラックレコーダー」の略で、本来はスタジオなどで音楽をレコーディングする時、個々の楽器の音をそれぞれのトラックに録音するものだ。これを後から音量や左右音場などを決定してミックスダウンし、曲として完成させる事になる。プロ仕様のMTRはあまりに高価だが、なんと普通のカセットテープを使った商品が、しかもミキサーまで付いてこれ1台でピンボン録音が出来るという商品が売り出された。ピンポン録音はけっして効率の良い方法でも質の高い方法でもないが、限られたトラック数でミキシングを行う際の定番の方法だった。

私が昔買ったTEACのTASCAM PORTA05も、カセットMTRのひとつだ。

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こういう個人向けの安価なMTRの大きなメリットのひとつは、1人が何度も演奏したものを後からミキシングして曲を完成させられる、つまり本来何人もの人間(楽器の数だけの演奏者とレコーディング・エンジニア)がいて初めて可能なレコーディングがたった1人でも可能だという事だ。安価なMTRが出る前には、2台のテープレコーダーを使って質の悪いピンポン録音をするしかなかった。

さて、話は昨日へと遡る。昨日私は朝起きて布団を上げてすぐに天袋の奥をごそごそ探しはじめた。カセットMTRはすぐに見つかった。しかしACアダプターが見つからない。アダプターはついに見つからなかった。それで私がどうしたか。今度は押し入れの奥をごそごそと探し、別の機械のACアダプターを探し出した。KAWAIの12V, 500mA, プラグの外側が+というのがあった。たぶんデジタルシンセのACアダプターだ。PORTA05の電源は11-15V, 400mA, 外側が+だ。電圧はこれでいい。電流は余裕がない。ACアダプターが1000mA供給できるタイプだと良かったが。それと、ACアダプターが供給するのは変圧後単純にダイオードで交流を直流に直してからコンデンサーで平らにならしたものだと思う。つまり完全に平坦な直流ではなく波打っている。もしもACアダプターが粗悪でひどく波打っていたり、機器のほうにそれを平坦にする回路がない場合は、それが電源ノイズとして出てしまう事もある。ここまで来たら試してみるしかない。試した。

ACアダプターをMTRにつなぎ、電源スイッチをスライドさせた。モーターが動き始める。PORTA05は電源を入れると始終モーターが回りっぱなしなのだ。さてカセットを入れてPLAYレバーを押し下げた。あ、動いた。すごい。先日のTechnicsといい今回のTEACといい、はるか昔のカセットレコーダーがいまだに動く。でもSONYの製品はとっくに動かなくなったぞ。カセットデッキもバブカセも。そういえばずっと前にある友達がSONYの話題の際に、時限爆弾がどうのと話して・・・いや、それはもう言うまい。ただ私が所持する(所持していた)機器に限れば、TechnicsもTEACもいまだ現役、SONYは全滅、これだけは事実だから、事実だけを書くべきだな。

こうしてカセットテープは走行したが、実は私はまだ音が聴けなかった。昔のヘッドホン端子は標準プラグ、今どきのはミニプラグ。まあ色々あって、その日はそこまでとし、続きは翌日に回した。このへんで一息ついて、取扱説明書を読んでおくべきだと思ったし。KAWAIのACアダプターは、ひとまず再生だけなら問題なさそうだ。録音はさらに電気を食うが、今回は録音の予定はない。

通常のカセットデッキは取扱説明書なんかなくても操作できるが、PORTA05の取扱説明書は必要だ。ミキサー部を録音時と再生時のどちらにも使用するのだが、録音時のミキサー使用法と再生時のミキサー使用法が異なる。私の理解そのものが怪しいので、以下の記述には自信がない。再生時は4チャンネルあるミキサーがそれぞれテープの4つのトラックに対応するが、録音時にはテープのトラックは関係なく単に4つまでの入力を扱えるという意味合いになる。そしてこの4入力を2出力にミキシングし、テープの4つあるトラックのうちの2つまでに同時に録音できる。ということは、ミキサー部にあるPANは、再生時には見た目の通りに音を左右に振り分ける機能をもつが、録音時には右とか左は言葉そのままの右左ではなくて、録音するトラックがどれかを示している。理解できなくはないが、見た目の通りの機能でない部分があるのは、理解しにくくややこしい。

他にも、TAPE CUEって一体何だ?とか、説明書を読んで初めてああなるほどと思う部分がある。

いじっているうちに色々思い出してきた。PORTA05はミキサーの各チャンネル入力からエフェクターへ信号を送って、それを戻す事ができる。エフェクターへのOUTは各チャンネルにボリュームが付いているから良いが、戻ってきた信号は必ず左右両方に入ってしまうのでいまひとつ使えねえ機能だった、ような気がする。

説明書を読んで疲れ、その日はそこまでになった。

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一晩寝て翌日になった。この日も朝から作業した。まずはヘッドとピンチローラーの掃除だ。ピンチローラーは、カセットを入れずにPLAYすると勝手に回るので、綿棒をくっつけておくだけで掃除できる。と思い、まずは電源を入れた。すると!まだPLAYレバーも押し下げていないのにヘッドが勝手に動いた。ピンチローラーはキャプスタンに密着しているが回っていない。なんだこりゃ?壊れた?ひょっとして、壊れた?電源を入れ直す。変化なし。PLAYレバーを押し下げたりSTOPレバーを押し下げたりする。変化なし。おいおい、ちょっと待て。昨日はテープが正常に走行していたじゃないか。

冗談じゃないぞ。「昨日完動、今日ジャンク」なんてのは御免だ。裏蓋を開けて直すことにする。裏のネジ5つを取る。蓋を開けようとするが、開かない。何かがつっかえている。何だ?ヘッドだ!動いてせり上がったままのヘッドがつっかえて、蓋が開かない。

ちょっと待ってくれ、私は今、ヘッドがせり上がったのを直したい。そのためには蓋を開けて中を調べなきゃならない。でも蓋を開けるためには邪魔なヘッドを何とかしなきゃいけない。でも、そもそもヘッドがせり上がったのが直らないから蓋を開けたいわけで。もしも邪魔なヘッドが何とかなるなら、そもそも蓋を開ける必要もないわけで。なんじゃいこりゃ!?

しばらく四苦八苦しているうちに、記憶が蘇ってきた。はるか昔にも同じ事が起きたような。その時は、裏蓋を開けなかったような。それでどうして直ったんだ?そこの記憶がない。思考を切り替えた。もしも自分が機械の開発者だとしたら、どんな動作を想定するだろうか?もしも、せり上がったヘッドが何かの理由で強く押されたら、機械はそれに対処すべくどんな動作をするだろうか?もしも私が開発者なら、強い力でヘッドが押されたら、理想的にはその力を回避すべく、ヘッドを強制的に元の位置へ戻すだろう。やってみよう。私はヘッドを指で押した。変化がない。その力を少し強くしてみた。とたんにヘッドは引っ込んだ。おそらく、はるか昔にも私はこうやって直したんだろう。その後、何度もPLAYやSTOPを試したが、それきりヘッドが意味もなくせり上がったままになる事はなかった。

私はヘッドやピンチローラーの掃除を済ませ。ライン出力端子のサビを落とし、時間をかけてカセットテープの中身をパソコンに取り込んだ。もちろん4トラックを同時に取り込む方法はないので、2トラックずつ2回に分けてだ。こうなると、取り込んだ4つのトラックに相当するwavをMTRのように再生するソフトをプログラミングしなきゃならんな。

私はMTRのライン出力をPCに入れて音を聞けたのだが、最後にヘッドホン出力も試そうと思った。そうしたら、PHONESのボリュームを動かすとガリガリとすさまじい音がした。ボリュームがイカれている。たとえば古いラジオなどで、ボリュームを回すとガリガリ音がする、あれだ。思い出した。はるか昔にも、このPHONESはイカれていた。もちろん買った当初はイカれていなかったのだから、その後何年も経って久しぶりに使ってみたらイカれていたという事になる。先に書いた、ヘッドがせり上がったまま動かないという現象もその時に起きたのだろう。ミキサーの4つある入力のうち、1つか2つのボリュームも動かすとたまにガリガリ言った。他は問題ないが、完動品ではないな。私はこのMTRに掃除機をかけて、またビニル袋に包んで天袋へ戻した。今回、昔のカセットはすべてパソコンに取り込んだのだから、もしも今度このMTRを使う時があるとすれば、それはアナログの動作を懐かしんで新規に自作曲を作って楽しむ時だろう。そんな時が来るかどうかはまだわからないが。偶然にも未開封のクロムテープが1巻見つかった。いつの日か、これを使ってアナログ気分に浸るのも悪くない。

MTRが見つかった時はカッコいい写真をいっぱい撮ってやろうといい気になっていたが、その後上記のとおり問題が起きて焦り、時間が過ぎ、結局MTRの写真はあまり撮れずに天袋へ戻した。でもやっぱり外見以外で写真を撮るとしたら、ヘッドだ。4つのトラックに対応する4つの磁気読み取り部があり、MTRに特徴的な姿をしている。
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