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人生補完計画 カセットテープ音声のデジタル化保存(17) [  カセットテープ(補完計画)]

今日は私の考察の2本立てとなる。人々が読みたい記事ではないかもしれないが、私自身の人生補完計画の記録として書き留めておかなければならない。

2本立ての1本目は、新しく発見したデジタル化の問題点について。それは、おそらく音楽ばかりを録音した方は気づかないだろう。私は若い頃にイタリア旅行をした。その時、録音できるウォークマンを持って行き、町の音を録り、宿屋に帰ってからはイタリア人の生活について忘れないうちにマイクを前に喋って記録した。そうやって宿の部屋でマイクを前に喋っていると、外で救急車のサイレンや教会の鐘の音など、日本とは違う音が鳴った。私はそれに興味をもち、そういう音が外で鳴りはじめると喋るのをやめて、その音を録音した。これを、カセットを再生して聞くと、当時の情景が目に浮かぶ。いかにも窓の外、遠くのほうでサイレンや鐘が小さく鳴っているという感じだ。

ところがデジタル化すると、普通の音量ではこの音がほとんど聞こえないほど小さかった。PCの音声出力を一杯に上げてもまだ聞こえにくいほど小さい。元音であるカセット再生時にはこんな事はない。

初め私は、これはデジタル音声の特性なのかと思った。でもそのうちに、ひとつ思い当たった事がある。

カセットデッキのレベルメーターは+6dBまである。メーターが振り切れるレベルというのはつまり+6dBかそれ以上だ。しかしそれをSoundEngine Freeで録音する時、録音レベルはどんなに高くても-3dBからせいぜい-2dBに制限しなければならない。無茶をしても0dBが限度だ。だから、テープデッキ側の出力レベルよりも、SoundEngine側の録音レベルのほうがさらに低くなっている。録音した音が小さければ、それだけ録音レベルの低さが影響する。

音楽の録音なら、こんな事は気にする必要がない。誰だって、メーターが振り切れるようなレベルでカセットに録音はしなかったから。しかし屋外での録音は違う。

アナログ機器はある意味いいかげんで、0dBを超えて録音する事も可能で、それどころかレベルメーターが振り切れてもさらに大きな音が録音されている事がある。ところがこれをデジタル録音すると、0dBを超えた部分は完全にクリッピングされる。つまり、アナログ機器のダイナミックレンジは小さいが、そのダイナミックレンジ計測に含まれない、音の歪みを度外視した限度超えの部分がやたらと大きく取れる。屋外での録音で風が吹いたり大きな音がしたりすると、それが生じてしまう。そしてそのピークに合わせてデジタル化すると、本来の音声が小さく録音されてしまう。

屋外の、風が吹いたり不意に大きな音がしたりする環境でアナログ機器を使って録音したものは、デジタル化するさいに再生機の出力のピークに録音レベルを合わせるべきでないのかもしれない。マイクに風が当たってボーボー言っている部分はあえてクリッピングさせておき、本当に必要な部分の音声レベルを確保するべきなのかもしれない。


2本立ての2本目は、今さらながらSoundEngine Freeがデジタル化する音について再確認した件。

私は以前の記事に、アナログ音声とデジタル音声は聞いた感じが違うと書いた事がある。カセットテープ音声は例えて言えばポップスに適した中高音に張りのあるスピーカーのような音で、それをデジタル化したらクラシックに適した全帯域フラットなスピーカーのような音になった、と。(ただし、この「音のカラー」の違いは、元音がどんなものかによって目立つ場合と目立たない場合がある事を付記しておく。)

この「音のカラー」の違いがデジタル化作業のどの時点で生じるかについては、以前に確認済みだ。PC内の、サウンドキャプチャーボードとでも言うのだろうか、ライン入力用のハードまでは問題ない。つまりwavファイル化する前のライン入力をPCに接続したヘッドホンで聞くと「音のカラー」はまだ変化していなかった。その後、SoundEngine Freeを使ってwavファイルにする過程か、そのwavファイルを再生ソフトを使って再生する過程のどちらかで「音のカラー」は変わる。そしてPCの音声出力部とヘッドホンには問題ない。なぜなら同じ出力部とヘッドホンで私は「音のカラー」を聴き分けているからだ。

怪しい2つの過程のうち、再生ソフトはMedia Playerを使ってもGOM Playerを使っても同様の音が出るから、これのせいでない可能性のほうが高い。(まだまだ怪しいことは怪しいのだが。)

仮にSoundEngineを使う過程で「音のカラー」が変わるとしたら、その可能性は2つある。SoundEngineの特性としてこういう「音のカラー」が作られるのか(たとえばSoundEngine自体がwavファイル化の処理をしている場合はそうなる)、それともSoundEngineを使わなくてもウチのPCでwavファイルを作るとこういう「音のカラー」になるのか(SoundEngineがハードまたはOSの機能を呼び出してwavファイルを作らせている場合はそうなる)。

さて、白状すると、私は今まで録音用ソフトとしてSoundEngine Freeしか使っていなかった。複数の可能性を比較検討したわけではない。

ここで私は愚かにも初めてある実験をした。つまり、Windows付属のサウンドレコーダーとSoundEngine Freeで同じ音を録音し、その結果を比較した。本来、こういう作業はデジタル化前に済ませておくものだ。デジタル化も終盤に入ってからこういう比較実験をして、もしもサウンドレコーダーのほうがナチュラルな音で録音できるという結果が出たら、今までデジタル化してきた100巻以上のテープは一体どうすりゃいいんだ。

その実験結果だが
1.まずサウンドレコーダーとSoundEngine Freeではライン入力の適正録音レベルがひどく異なる。SoundEngine Freeはカセットデッキからの入力にたいしてレベル3か4が適正だ。安カセットで磁性体への記録があまり良くない場合にはテープデッキの出力が低く、この場合はたとえば9あたりまで録音レベルを上げる。逆に屋外での録音で不意に大きな物音がしたり風が吹いたりでカセットデッキのレベルメーターが振り切れる場合は録音レベルを2か、場合によっては1まで落とす。これらの録音レベルは、ものすごく低い。だってMAXが100なのに設定は3か4、時には1なんだから。これにたいしてWindows付属のサウンドレコーダーは、録音レベルが5くらいではほとんど聞こえないほど小さな音になる。適正値はおおよそ20だろうか?

2.SoundEngine Freeは精確なレベルメーターが付いており、現在の録音レベルが適正かどうかがよくわかる。いっぽうサウンドレコーダーは、レベルを知るインジケーターは付いているが、そのインジケーターの線がどこまで来れば適正レベルなのかがわからない。全体の7割程度まで来たら良いかと試したら、元音によってはひどく音割れする場合もあった。もっとずっと低いレベルが適正らしい。しかしこれも、耳で聴いて音割れが認められなかったから「たぶんこれ位」という事で、サウンドレコーダーは精確な録音のためのソフトではない。

3.肝心の音の質についてだが、「音のカラー」に際立った相違は感じられなかった。もっとも、SoundEngine Freeで作ったwavは再生すると音が小さく、サウンドレコーダーで作ったwmaは(録音レベルが適正でなかったのか)音がとても大きかったので、それをボリューム調整して比較する事になり、双方を公平な条件で聴き比べたとは言い難い。

結論としては、ネット上でよく書かれているように、SoundEngine Freeを使って正解のようだ。つまり、私が気にしているデジタル化後の「音のカラー」の違いはSoundEngine Freeに固有のものではないらしく、加えてSoundEngine Freeは使いやすく多機能なソフトだ。

という事は、私にとって今後の指標は次のようになる。アナログの元音とデジタル化後の音は、完全に同じではない。アナログで言うところのS/N比やダイナミックレンジのような単純に数値的な優劣はデジタルのほうがはるかに上だが、デジタル化の結果アナログ特有の「音のカラー」は失われる事がある。しかしデジタル化保存が避けられない以上、それをそういうものだと受け入れ、その上で、どうやったら元の「音のカラー」つまり「懐かしいあの感じ」に近づけるか模索を続けてゆく必要がある。

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