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第四の生き甲斐を探します64 作品3、DBX入りっぱなし [手記さまざま5]

実はwavの中に早笛が2回録音されていた。2つにたいした違いはなく、なぜか2回目は最初のほうの音が1回目よりも小さいのに終わりのほうの音は1回目よりも大きいといった違い程度なのだが、今後DTMに使う音源としてはひとつ無視できない要素があった。それは、2回目はなぜか録音レベルが低いということだ。なにしろ今どきのデジタルデータではない。今はデジタル化してwavになっているが、元はカセットテープ録音だった。いくらDBXノイズリダクションがかかっていたといっても、極端に音量を上げればヒスノイズが出てくる。2回目の早笛の直後にシテ謡が始まることから考えて、当時の私は2回目を採用するつもりだったのだろう。でもこれからのことを考えれば採用するのは録音レベルの高い1回目だ。今回はまず、そういう既存wavの整理から始めた。

早笛は1回目の部分だけを切り出したので、地謡やシテ謡よりも早くに終わることになった。Reaperでは短いwavは終了時にループするのがデフォルトの設定のようだ。トラックに表示されているwavを右クリック-アイテムの設定-「アイテムのループ」のチェックを外す。

そのうちに私は困ったことに気づいた。早笛のwavを最初に聞いた時から気にはなっていたのだが、音が大きくなるはずの所で逆に小さくなる。リミッターでもかかっているかのようだ。変だ変だと思いつつこの記録を書き、「いくらDBXノイズリダクションがかかっていたといっても」と書いた所ではたと気づいた。カセットテープをデジタル化した時の再生機器がMTRでなく普通のカセットデッキなので、DBXは解除していない。DOLBY B/Cならばネット上にwav化された音声のデコードプログラムがあるが、DBXはDOLBY NRほどポピュラーでなかったせいかネット上に議論はあるがプログラムはない。そしてDOLBY NRでエンコードした音声はデコードしなくてもそれなりに聴けるが、DBXでエンコードした音声はデコードしないと聞くに堪えない。いやはや、再挑戦の最初からポンコツではあったが、こんな問題まで生じていたか。

私は、エフェクターでできる範囲のことをした。音が大きくなるはずの所で逆に小さくなるのを何とかすればいい。音の大小の違いを少なくする。コンプレッサーか。調べたところコンプレッサーは大きすぎる音を小さくするだけで、小さすぎる音を大きくはしてくれない。しかし他に見つけられなかった私はこれで何とかするしかなかった。Reaper標準装備のコンプレッサーはReaCompの他にReaXcompがある。ReaXcompは周波数帯ごとに設定を変えられる。音が不自然に小さくなるのは高い音が強く鳴りだす部分なので、高音部に限りコンプレッサーを切り、極端にGainを上げ、不自然に小さくなる高音が相対的に目立たなくなることを願った。その結果かなりシャリシャリした音になったので、イコライザーでハイカットを試した。

VST-ReaXcompを追加
1から3までのGainを0.0
4のRatio(:1)を1
4のGainを30.0(マウス操作ではここまで上げられないがキーボードから数値を打ち込める)
全体のGainを-14

VST-ReaEQを追加
1から3までいじらず
4のTypeをLow Pass

今回はその他にも、既存wavの問題点をいくつか修正した。

早笛のLはRと比べて元々音が小さかった。それをRと同じレベルまで大きくすると、無音部のヒスノイズも大きくなった。とくに上記ReaXcompで高音のGainを上げたのでヒスノイズが目立った。早笛のwavは他よりも早く終わるので、そのとたんにヒスノイズが止まってあからさまに変になった。そこでK5 WAVE Filterというフーリエ変換を使った波形変換ソフトでノイズを除去した。

シテ謡はなぜか掛合が始まる所から全体的なレベルが上がった。この部分からシテ謡の録り直しをし、その時に録音レベルが違ったのかもしれない。Reaperのフェーダーでピークレベルを後半に合わせると前半のレベルが下がってしまった。そこでSoundEngine Freeで掛合が始まってからのレベルを前半と大体同じに調整した。

地謡は、聞いてもわからないがReaperのレベルメーターを見ると謡っていない部分にヒスノイズがうごめいていた。これをK5 WAVE Filterで除去した。

シテ謡・地謡ともに、聞いてもわからないがSoundEngine Freeで波形を見ると謡い終わってしばらくしてブツッと小さくノイズがあった。アナログ機材の録音を止めた時のノイズだろう。これを除去するために、長い無音部分の音量を最小にした。これで、長い無音部分は、K5 WAVE Filterで取り残したわずかなヒスノイズも完全になくなった。

あとひとつ、思い出したことがある。作品3は早笛で始まるのではなかった。早笛よりも前に、ワキの謡があった。それはシタールの音色で完成していたが、カセットMTRには録音しておらず、現存していない。シタールのノートにはエクスプレッションが設定してあり、謡そのままに節回しが付いていた記憶がある。でも音色がシタールだから、ずいぶんイメージが違った。これからそれを再現する気力は年をとった私にはもうない。