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昔のマンガ本を捨てる(69) [  昔の本(補完計画)]

JOJOを片っ端から捨ててゆく、その4回目です。

JOJO第二部の記事は、実験的にオノマトペを取り入れます。漫画のコマの中で実際に使われているオノマトペです。テキストだけで漫画の雰囲気をどこまで再現できるかという試みですが、JOJOのオノマトペはそれ自体が突飛なので、文の途中で突然オノマトペが出てくるとちょっと読みにくいかもしれません。ひとまず実験させてください。



第5巻の最後のほうで、JOJOの物語は第二部が始まります。主人公はジョセフ・ジョースター。エリナの孫です。彼はイギリスで生まれ育ったイギリス人で、舞台のアメリカにはエリナと共にロンドンから越してきたばかりですが、その性格は私から見ればむしろアメリカ人っぽいです。登場して14ページ目ではアメリカギャルを見て「スカートめくりてー」と言うほどの軽さ。彼にはフィッシュ・アンド・チップスよりも、ケチャップとマスタードをたっぷりかけたホットドッグにかじりついてる姿のほうが似合いそうです(作中には出てきませんが)。彼は生まれつき体内で波紋を練ることができる体質です。あと、重要なシーンではありませんが喧嘩の中で、彼は「おまえの次のセリフは『なんでメリケンのこと、わかったんだ、この野郎!』という!」と言います。その直後に相手が「なんでメリケンのこと、わかったんだ、この野郎!」と言って、ハッとします。この、敵の先を読んでセリフを予言する闘いの流儀は、この先エシディシ達との闘いでも彼が使うやり方です。

場面が変わってメキシコ。そこにはスピードワゴンとストレイツォがいます。2人ともすでに年をとっています。スピードワゴンは財団を設立するほどに成功していて、このメキシコの地でたくさんの石仮面と、"柱と一体化した男"を発見し、それら恐ろしいものを今のうちに破壊してもらおうとストレイツォを呼び寄せたのでした。ところがストレイツォはあろうことか、石仮面の不老不死の力を手に入れたいと思っていたのです。彼はスピードワゴンを殺します。ジョセフが家族同様に大事にしているスピードワゴンを殺すことで、ジョセフを激怒させ、おびきよせるために!



第6巻。ジョジョがストレイツォに先制攻撃。スピードワゴンの敵討ちです。場所はニューヨークの街なか、ストレイツォは石仮面の力で吸血鬼になり若返っています。「ストレイツォ 容赦せん!」という決め台詞は、人間の波紋使いだった頃と同じです。
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ジョジョはストレイツォをマシンガンで蜂の巣に。でも体に食い込んだ弾丸は何の効果もなし。頭部に向かう弾丸は目からビーム(体液)で全部撃ち落とす!ここでやっとこのビームに名前がつきました。名づけて空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)。ジョジョの放つ波紋は、初回は特殊な素材のマフラーに防がれて失敗。次にジョジョはたくさんの手榴弾でストレイツォを爆破。でも肉片がウジュウジュと気持ち悪く寄り集まり、ストレイツォはギャーンと再生。

さあ、ここで第二部のジョジョらしいシーンがあります。同行している少年スモーキーが言います。
「こんな化け物をやっつける策が、さらにあるのか!ジョジョ!」
ジョジョ「ああ・・・あるぜ!」
少年「ええ!あるのか!?」
ジョジョ「ああ・・・たったひとつだけ、残った策があるぜ」
「たったひとつだけ!そ・・・それはいったい?」
「とっておきのやつがな!あの足をみろ!やつは足がコマ切れになりすぎて、まだ完全に回復しきれてねえ!そこがつけめだ!」
「そ・・・それで、たったひとつの策とは?」
「こっちも足を使うんだ」
「足だって!足を、どうやって!」
「逃げるんだよォ!スモーキーッ!!どけーッ、ヤジ馬どもーッ!!」
「わあーッ!!なんだこの男ーッ」
これはただの逃避ではなく、一気に逃げ出す「笑えるシーン」と、その後に続く「奇抜な策による逆転勝利」という図式なのです。ジョジョが逃げる時は必ず次の攻撃につながります。仮に策を考えるための時間稼ぎだったとしても、彼は常に「勝つために」戦術的撤退をするのです。そういえば第22巻で、おやじになったジョセフがアヴドゥルに言いますよ、「このジョセフ・ジョースター、若いころから作戦上逃げる事はあっても、戦いそのものを途中で放棄したことは決してない」と。

吸血鬼になったストレイツォは簡単にジョジョに追いつき、そしてまた空裂眼刺驚!しかしジョジョは波紋を流したグラスでそれを受け、ストレイツォの体液は波紋ではじかれて逆にストレイツォの頭に直撃!ジョジョは続けざまに波紋のパンチ!ストレイツォは死に際にジョジョに「柱の男」の存在を告げます。

そして話はなんと、ナチスドイツ!登場する人物はシュトロハイム少佐!後の話では究極生物を倒すために尽力もしますが、この時点ではまだ残忍でいけすかないナチでしかありません。
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でも良いニュースがひとつ。スピードワゴンが生きていました。ナチスが自白剤で柱の男について喋らせるために治療したのです。ナチスは柱の男を研究所に運び、無謀にも血を吸わせて蘇生させます。蘇生した柱の男にシュトロハイムはサンタナという名をつけます。なんと、人の能力をはるかに超える石仮面の吸血鬼ですら、サンタナにとってはただの食糧だった!サンタナの力を甘く見ていたシュトロハイムは後悔しますが、サンタナはすでに目の前に。人間の言語や攻撃を次々に学習して人を殺します。その時、研究所に潜入したジョジョがサンタナと対峙!次の第7巻ではいよいよジョジョの攻撃だッ!



第7巻。

たくさんのドイツ兵が殺され、スピードワゴンもシュトロハイムも思うことは同じ。サンタナを野放しにしたら人類が滅ぶ。一刻も早く消滅させなければ。ところがジョジョは、未確認生物に出会った時に最初から悪者と考えて攻撃するのはよくないと言い、サンタナに向かって「ハロォー。ご機嫌いかがー?ハッピー、うれピー、よろピくねー。サンタナさん、さあ、ごいっしょに。」なんじゃいこりゃあーッ。彼の言っていることに一理あるとしても、この状況でこの軽いノリはぁーッ!でも実はこれこそが、第二部のジョジョのいい所。そのいい所を2局面に分けて解説しましょう。まず「作品が読者に与える効果」という局面(冷静に作品研究する場合)では、ともすればひたすらシリアスになりかねない深刻なストーリーに、ジョジョのこういう軽いノリが「ぶっとびかっとび楽しい雰囲気」を作ってくれるので、第一部とは全然違う独特の世界を味わえる漫画になっています。そして「読者がのめり込んで体験する主人公ジョジョ」という局面(ジョジョを大好きな読者の気持ちを考える場合)では、こういう軽いノリを見せるジョジョですが頭の中では戦法をしっかり考えています。敵の裏をかく戦法を。彼は「やる時はやる」男なのです。

さて、サンタナはジョジョを完全無視!ムッとしたジョジョがサンタナにちょっかいを出し続けると、突然サンタナの肋骨があらぬ方向へ向いてギャンと伸びジョジョを攻撃ッ!
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サンタナの技の名前はリブス・ブレード。別名、露骨な肋骨!ジョジョはとっさに波紋防御!サンタナはようやくジョジョに興味をもちます。吸収されて食糧になるはずの人間の体が、吸収されずにはじき飛んだからです。サンタナは、この時代の人間がみんなそうなのかを確かめるためにスピードワゴンの頭に指をグニョオオ!ジョジョが怒る!でもジョジョの波紋は効きません。サンタナの体表はストレイツォのマフラーと同じく波紋を流してしまいます。ついにサンタナに蹴りを入れられるジョジョ。気絶したジョジョをサンタナは自分の体に取り込んでゆく!
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ところがこれは敵の裏をかくジョジョの作戦でした。サンタナに半分取り込まれたジョジョはその状態でサンタナの内部に波紋!サンタナの体は上半身と下半身に分断!

ジョジョはサンタナの上半身に鎖を巻きつけて、ギラギラと太陽の輝く戸外を目指して引きずってゆきます。洞窟壁画によればサンタナは太陽に弱い存在だから。ところがビシビキビシビキッ!サンタナの肉が離れ飛びジョジョの足にくっついた!サンタナの技の名前はミート・インベイド。別名、憎っくき肉片!荒木先生が技の名前で遊んでるッ!そして読者もそれが楽しいッ!!ジョジョはもう動けません。その時飛び出したのはなんと、シュトロハイム!あのナチ野郎が飛び出してきたッ!
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シュトロハイムは言います。「あの扉をあけれぱいいんだな!陽の光はそこまでとどく!」シュトロハイムよ、お前は、ただの残忍ナチ野郎ではなかったのか。しかしサンタナの肉はシュバ、ゴッと飛んでシュトロハイムの足を捉えます。「あ、あと!数センチのところで!」その時シュトロハイムは恐ろしいことを口にします。「そこのかべにオノがかざってあるだろう。それでおれの脚を、断て!おれの脚を切断しろッ!!そうすれば、あの扉に手がとどく!」うぉぉぉぉッ、読者はそれまでシュトロハイムを残忍でいけすかないナチ野郎だと思っていたが、今ッ、こいつがヒーローに思えてきたぁぁぁッ!ジョジョは思います「考え方は違えど敬意を表すぜシュトロハイム!」そして彼の足を、ドガッ!扉は開けられました。

ギラギラと照りつけるメキシコの太陽の光を浴びて、サンタナの体はビッ、バシィと崩壊してゆきます。が、次にサンタナがとった行動はッ!シュトロハイムの脚の傷口からズルンと中に入った!シュトロハイムはまたしても恐ろしい決断をします。取り出したのは、手榴弾!彼の意図は、自分の「体を『あけて』太陽をおがませてやるぜサンタナ!!」彼はジョジョに、サンタナの他にも「柱の男」が見つかっているという事実を告げます。彼の最期の言葉は「フフフ。人間の偉大さは-恐怖に耐える誇り高き姿にある-ギリシアの史家プルタルコスの言葉だ。フフフ、さらばだ、いまいましいイギリス野郎」

シュトロハイムがバラバラになっても、中のサンタナはそのまま。でも照りつける太陽の下でピシ、パキと肉体は崩壊してゆきます。今や奴の逃走経路はただひとつ。近くにある井戸の中へ!逃走を妨害しようと放つジョジョのパンチは、ああッ波紋の威力不足っ、腕が折れたぁぁぁッ!でもその時ジョジョは言います「てめえの次に吐くセリフは『思い知ったか・・・この原始人が』・・・だ」その直後サンタナは「思い知ったか!この原始人がッ!」そして「ハッ!」正午の陽光は、井戸の中へ飛び込んだサンタナを背後から焼くだけでなく、井戸底の水面に反射して正面からも焼いたッ!

こうしてサンタナは石になりました。でも喜んでばかりはいられません。他にも「柱の男」が発見されたとシュトロハイムが言いました。スピードワゴンとジョジョはローマへ。そこで「ある人物」に会わなければなりません。

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ローマでジョジョが会ったのは、歯が浮くような愛の言葉を公然と真顔で女に言うイタリア男、シーザー・ツェペリ。彼はジョジョの波紋が弱いと言います。「柱の男」には、きっとまぐれで勝ったのだろうと。読者がこの先の巻も読み進めれば、シーザーの考えが間違っていることに気づくでしょう。ジョジョの波紋は「弱い」のではなく、何の修行もしていないので「効率が非常に悪い」というのが真実(後にジョジョに会ったリサリサはジョジョを試し、これをすぐに見抜きます)。そして、ジョジョがサンタナに勝ったのはまぐれではなく、「敵の裏をかく戦法」を行なうことができる人間だからなのです。とにかく、ジョジョとシーザーは反りが合いません。

ローマには3体の「柱の男」がいました。なんとそれら3体はすでに復活!最初に目覚めた1体ワムウは、他の2体エシディシとカーズを「わが主人(あるじ)たち」と呼びます。サンタナはこれら3体と同種ながらも、能力的に劣る個体だったことが語られます。これら3体が復活して求めるものは「エイジャの赤石」。赤石はかつてローマ皇帝が持っていたので、3体の柱の男たちはこの地ローマまで赤石を求めてやって来て、そこで眠りについたのです。

一方ジョジョとシーザーは、ローマのナチスが管理する柱の男たちの所へ向かいます(実際にはもうナチスは、復活した柱の男たちに皆殺しになっているけど)。ジョジョたちとナチスとの仲介人はマルク。車の中でマルクが、来週ドイツへ帰って結婚すると言います。マルクはこの話をしながらデレデレ。でも読者にはわかってしまった、この流れは「死亡フラグ」が立ったぁッ!案の定マルク瞬殺。柱の男たちはただ歩いているだけ。それに触れてしまったマルクは、触れた半身がなくなった!でも柱の男は何事もなく歩いてゆきます。人間が蟻を踏んでも気づかない時のように!おまけに会話まで続けます。エイジャの赤石さえあれば、彼らは太陽を克服して完全生命体になれるのだと。マルクはシーザーの友人でした。怒るシーザー!でもシーザー自慢のシャボン波紋攻撃は相手に通じません。この物語を先まで読んだ読者ならば、ワムウが風を操る男なのでシーザーの武器「シャボン」は都合が悪いと知っているでしょう。シーザーが風に対抗できるシャボンを必殺技として作り出すのは、もっとずっと後の話です。

シーザーのような波紋使いがここにはもういないと確認して、3体の柱の男たちは去ってゆきます。そう、修行すらしていないジョジョは彼らの眼中にない!その時ジョジョは、「おほおほ、おほほん、おほーん。ここ!これ、ここよ、ここ!ここにちゃんとおれがいるのを見おとさないでほしいのよぉーん」ジョジョが取り出したのはアメリカンクラッカー。紐の両端に固いボールが付いていて、それを強く上下に振ってカチカチいわせて遊ぶ玩具。これに波紋を伝わらせて武器にしようというのがジョジョの意図ですが、自分の頭にぶち当てて「オーッ ノーッ」と叫ぶ始末。ああ、まるで道化を見ているようです。ジョジョ本人は真面目らしいですが、波紋の修行を積んだシーザーですら敗れた相手に、できたてホヤホヤで練習も十分でないそんな道具で一体どう立ち向かうのでしょう。さあどうするジョジョ!第8巻に続く。

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