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レコードプレーヤーがついに(6) [  レコード(補完計画)]

プリメインアンプの修理か、フォノイコライザーの購入か。

今回は精神的な話になる。じつは先日、フォノイコライザ-とスタイラスクリーナーを買った。「それのどこが精神的なのか」と言われるだろう。私はレコードプレーヤーを修理したが、同じ時に買った同じメーカーのプリメインアンプももっている。レコードプレーヤーの修理にはコンデンサの交換が必要だった。ならば同じ年月が経過している同メーカーのプリメインアンプもコンデンサがイカれているだろう。単純な増幅ならば私もこんなに騒ぎ立てないが、フォノイコライザーは周波数により増幅値が違う。その特性を決める大きな要因のひとつがコンデンサのはずだ。そこで考えた。道はおもに2つ。

1つめの道は、プリメインアンプを修理に出して、修理屋さんに事情を話してコンデンサの交換と半田クラッキングのチェックをしてもらう。

2つめの道は、新しいフォノイコライザーを買う。

ちなみに出費は、2つの道であまり変わらない。なぜならレコードプレーヤーの修理に2万円あまりかかったのでアンプもその程度の可能性があり、私の財布で買えるタイプのフォノイコライザーが同じく2万円あまりする。(実際には修理には梱包や発送に別途料金がかかり、フォノイコライザーは値引きして売られる。しかしフォノイコライザーはそのぶんグレードアップを考えることもでき、このへんの事情は変動的なので考えない。)これが私が道を2つ設定して考え始める大前提となった。

考えた末に、私は2つめの道を選んだ。変だと思わないか?私は数十年前のレコードプレーヤーを修理してまで使おうとしているんだ。それなら、プリメインアンプのほうも修理するのが筋じゃないか?子供時代に使っていたレコードプレーヤーに思い入れがあるのなら、プリメインアンプにも思い入れがあるだろうに。なんで今回は修理に出さなかった?そこだ。私が今回の記事を精神的な話だと書いたのは。

私はレコードプレーヤーを修理したように、プリメインアンプにも思い入れがある。捨てたくはない。子供の頃はそれどころかステレオ機器の中で一番好きだったと思う。だって、レコードプレーヤーでもカセットデッキでもチューナーでも、どんな種類の音源を聴く時にも必ず使うのがプリメインアンプだから。

ただ、現在は少し事情が変わった。昔のテープデッキはとっくに壊れて処分し、チューナーも不要になって処分した。カセットテープのデジタル化のために新しく買ったテープデッキはいちおうプリメインアンプに接続しているものの、カセット音声をデジタル化した今ではプリメインアンプを通してカセットの音を聴くことはまずない。いまプリメインアンプを使うとすればレコードを聴く時だけだ。

それに、せっかくプリメインアンプを修理しても必要なのは当面フォノイコライザー部分だけで、アンプのライン出力をPCのライン入力に接続してレコードのデジタル化作業をするのが当面の予定だ。少なくともこの大変そうな作業を終えるまでは、アンプからスピーカーへ音を出してゆっくり楽しむことにはならないだろう。

さらに言うなら、たとえコンデンサを交換したとしても他の部品、抵抗や半導体やトランス、そしてもしあればコイルなどは数十年前のままだ。数十年前の性能が蘇るとは限らない。まともな性能を出すのが目的ならば、新製品を買うほうがいいに決まっている。

それで私は、レコードのデジタル化にさいしては上記2つめの道をとることにした。

将来的にプリメインアンプもコンデンサを交換したくなったら、その時は予算の都合がつく範囲で修理を依頼すればいい。

ここまで決心するのに、上記2つの道の間で数日間考えた。アンプを修理に出さずに新しいフォノイコライザーを買うということは、アンプにたいする思い入れを捨てるということにならないかという思いもあった。

レコードプレーヤーも修理を決める前は少し考えたが、どうして新品を買わずに修理したかというと、ひとつには私が子供のころとは時代が変わったという理由がある。現代は、とっくに商品の価格破壊が生じた後だ。外国製の安くてそこそこ使える商品に人気が集まり、性能は優れるが高い国産品は存続できなくなった。その結果、手頃な値段の製品がたくさん出回っているが、それが性能的にどこまで望めるかは口コミやレビューの類を参考によく調べなければならない。現代も性能重視の商品は存在するが、それは需要が少なくコストダウンが望めないこともあり高価で買えない。だから私が子供時代に手に入れたプレーヤーのとくに機械的な部分(床面からの衝撃を吸収する機構等)には今でも魅力があると考えた。

いっぽうアンプは、私が子供のころはまだトランジスタを多用する時代だった。果たして内部にICを使っているだろうか。オペアンプは使っていないと思う。LSIはないと確信する。このへんの技術革新は同時に性能向上にもつながった。たくさんのトランジスタ、抵抗、コンデンサを基盤に半田で取り付けるよりは、そのかわりに一個のチップを取り付けたほうが故障も少ない。音楽の微妙な表現ということになると一概には言えないが、それを追求すると特殊な真空管の使用にまで行き着いてしまい価格的に手が出せなくなる。そういう次元を諦めるならば、オペアンプが使える現代のフォノイコライザーを買うのは悪い選択肢じゃない。安いかわりに性能や経年変化に不安が残る商品が出回る現代だけれども、アンプは、機械駆動部の多いプレーヤーに比べると私は比較的不安が少ない。

個人的には、ネットで調べれば調べるほど類似した悩みは増える。つまり修理(またはそのまま使う)か、それとも新品購入か。修理(またはそのまま使う)という選択肢は私にとって、第一義には昔の愛機への思い入れを大事にするという意味合いがある。たとえばレコードの交換針。私ははるか昔、まだ自分のプレーヤーのカートリッジの交換針が売られているうちに、将来のために針をひとつ買っておいた。あれはアキバの石丸でのことだった。当時4780円もした針を買うのは、小遣いの限られた私には決心が必要だったのを今でも覚えている。その大昔の自分が決心して買い置きした努力が、数十年の時を経ていま役に立つ。それが私自身にとって大事なはず。ところが他方ではネットで調べると、針も長年放置すると内部のゴム部品が硬化すると書いてあった。音質を重視すればカートリッジごと新品に交換するほうが良いということか。そもそも今回私が購入したフォノイコライザーはMC型カートリッジ対応なので、MMからMCへ乗り換えるという手もある。と、ここではっと気づく。そもそも私は、今よりもずっとレコードに興味のあった子供時代にこのMM型カートリッジと針で聴いていた。今さらこの歳になってそれを変える必要があるのか?昔の自分が決心して買い置きした大事な品を不要にしてまでもする意味のあることか?私にとって本当に大事なのは何だ?音質追求ではないはずだ。

こうして精神的な惑いを抱えながら、私は少しずつ進む。精神的でない話は、また後日。その頃にはフォノイコライザーが届いているだろう。

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