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無題 [手記さまざま]

書き記させてほしい 僕がどうかなる前に
僕がどうかなった後で 人々が
あの人は 意味もなく不可解に狂ったと
間違った物言いを しないように
すべての結果には 原因がある

僕は仕事の事で苦しんでいる
それが発端だ
そして不安は他の不安を呼ぶ
まるで坂道を転がる雪玉のように
回りの雪をくっつけてみるみる巨大になる

殺したい人間はいる でも憎いのとは違う
助かりたいから
そいつの言葉が僕をひどく傷つけ
僕はまともでいられなくなった
僕は死にたくない 生きていたい
そいつがいると僕は壊れてしまう
そいつを消滅させるしか 僕が助かる道がない
これは正当防衛だ
ある日 自分の部屋で酒を飲んでいて苦しくてたまらず
僕は抑えられない衝動と共に突然叫んだ
死ね!死ね!と叫んだ

もしもあなたが
誰だって苦しみはある自分にもあると言うなら
あなたは突然死ね死ねと叫ばずにいられなくなった事は
ありますか
もしもないなら
軽々しい慰めは謹んでください

その後僕は今日のように
自分の状態を書き記しておこうとした
どうにかなりそうだったから どうかなる前に
今後何が起きても それをけっして
意味もなく不可解に狂ったと思ってほしくないから
結果には原因があると知ってもらうために
今と同じだ
ただその時は書くのを思いとどまった

それからほんの数日後
体が痒くて夜中に目覚めれば
真っ赤な蕁麻疹
日が昇った頃には
腹も背中も両腕もびっしり

医者に行った
食べた物など聞かれた
昨晩は行きつけの立ち食いそば屋でいつもの天ぷらそば
帰宅後は何も食べず 夜中には蕁麻疹
食事は何も思いつかない
僕は思いつく一番大事な原因を言った
ストレスが溜まっています
でも医者は関心を示さなかった
死ね死ねの事でも話したら 少しは関心を示してくれただろうか

僕の心と体が壊れかかっている

昔 おじさんと話をしたのを思い出す
僕は言った
今の彼女とは 困った事に全然趣味が合わない
僕の出来る事を彼女は出来ない
彼女の出来る事を僕は出来ない
するとおじさんは言った
そういう時は相手に ねえ教えてよと言うんだよ
僕には 目から鱗の発想だった
そして僕にはできそうにない
僕は相手の望む事を できなきゃいけない

たぶんおじさんは 正しいのだろう
相手の望むものを 自分が出来なきゃいけないと思うから辛いんだ
自分の内に全部を 抱え込むから辛いんだ
それなら今はもう 恋愛の話はいらない
そのかわりに 人生の話が必要だ

自分の出来ない事を ねえ教えてよと他人任せにするのが許されるのなら
自分の苦しみを 溺れる人のように他人にすがるのも許されるだろう
他人に甘えても いいですか
心から噴き出す 人生の恐怖を
人に頼っても いいですか
そうしたらきっと ずいぶん楽になれる

でも何かを思い出す
遠い昔 人を頼って傷つけられて
忘れるために心に封じ込めた記憶を
たしか人というのは
口を開けば身勝手な事を言う生き物じゃなかったっけ
自分の大切なものは
これを壊されたら最後という大切なものは
決して人に見せちゃいけないんじゃなかったっけ
それが若い頃から身につけた
僕の心の鎧じゃなかったっけ

思い出してきた
人に傷つけられて
心から血が噴き出し
かさぶたとなり
また血が噴き出し
かさぶたとなり
その幾重ものかさぶたが
心の強固な鎧になった

結局人には何も言えない
こうして僕は 振り出しに戻った

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