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人生補完計画 アルコール依存症 (1) [  その他(補完計画)]

家で一人で飲む場合、若い頃は酔うと本当に楽しいから飲んでいた。それが壮年期に入って、ふと気がつくと飲んでも楽しくない時が多くなっていた。それでも飲めば楽しいんじゃないかという理由のない期待から、あるいは精神的に落ち込んでリセットをかける目的で、若い頃と同じ頻度で飲み続けていた。改めて考えるに、飲んで楽しいと思うためには精神的なオカズが必要だ。それは若い頃には音楽だったり、テレビだったり、ビデオだったり、マンガだったり、自作の詩だったりした。飲んで感情の起伏が普通でない状態になると、そういうオカズで普通は味わえないほど感動できた。いわば、禁止されている薬物を使わないトリップだ。それが若い頃の一人酒の喜びだった。ところが人生を何十年も続けると、音楽を聴いてもテレビを視てもなかなか感動しなくなる。体のほうは若い頃ほど元気じゃないので酒の悪い影響が出やすくなる。そこで私は、飲酒の量を減らしたいと思った。

それまで習慣になっているものを実際に減らすのは、現実には難しい。仮に誰かが、「自分のためなのだから強い意志をもって行え」と言ったとする。そんな強い意志がどこにある?人間という生き物を買い被っちゃいけない。そういう理想論しか言えない人は、結局他人にアドバイスする資格のない人だ。強い意志をもっていない人が何かをやめるには、強い意志以外のものが必要だ。どこかの童話を使わせてもらうなら、旅人のコートを脱がすには、強大な北風で吹っ飛ばすか、太陽を照らして暖かくするしかない。童話と違い、北風でもそれが強大ならコートを吹っ飛ばせる。たとえば、「このままだと命が短くなりますよ」「このままだと病気が治りませんよ」という類だ。でもできれば太陽のほうがいい。好きな人がいれば、その人に好かれる自分になるために。子供がいれば、素敵なパパになるために。旅人は、強風でむりやりコートを吹っ飛ばされるよりは、自分から脱ぎたいに決まっている。そしてこの場合、旅人はアルコール依存症の自分自身だ。

(2)に続く。

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