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不眠 [手記さまざま3]

ひとつ前の記事のタイムスタンプを見た人は誰もいないと思うが、午前3時前だ。つまり私はそれより前に目が覚めた。なんで午前2時台に目が覚めたのか。いや厳密には、なんで午前2時台にトイレに起きた後、眠れなくなったのか。それはもちろん、心配事が出来たからだ。

心配事さえなければ、トイレに行った後でまた眠れる。今回の私もまた布団に入ることまではした。でも布団の中で心配事を思い出してしまい、それが頭の中を巡ってしまい、これはもう眠れないと観念して起き上がった。

人の心配事は様々だが、今はコロナウイルスが世界中で不測の事態を招いているから、何かしらコロナウイルスに関係してくる。私の場合、仕事がコロナウイルスで面倒になった。

私の仕事は大学の非常勤講師だ。今の時期は新年度の授業に向けて、あらかじめ使用教科書の第1課に目を通し、授業進行の予定を立てる。それは今年の私もやっていた。そこにコロナウイルスの影響が来た。大学はどこも5月のゴールデンウイーク明けまで休講となり、その休講を補うために各教員には学生への課題等が義務付けられた。問題はここから先だ。まず、よく考えてみるとわかるが、大学にとって、4月の間じゅうの全教科の全授業時間にたいして補講を設けることは不可能だ。そこで、通達の字面は体よくさまざまな選択肢があるように書かれているが、結局ただひとつの選択肢へと導かれる仕組みになっている。

具体的にはこうだ。4月の休講ぶんの授業については、課題やレポート、そしてWebを用いた学生との小テスト出題・採点システムで補うこととし、どうしても学生と顔を合わせないとできない授業は後日ほんらいの授業時間以外にも授業を設ける。字面は体よくできているが、すぐに気づくことがある。さきに書いた通り、多くの教員が「自分の授業は学生と顔を合わせないとできません」と申告すれば補講日を確保できずにカリキュラムが破たんする。だから「後日ほんらいの授業時間以外にも授業を設ける」は、原則無しだ。

さらに気づくことがある。課題やレポートというのが選択肢のひとつとなっているが、その課題やレポートをどうやって学生に届けるのか。学校へ郵送しても、学校の教務課はそれをたくさんの学生に届けてはくれない。この課題やレポートを学生に届ける手段は、事実上、上記の「Webを用いた学生との小テスト出題・採点システム」に限られる。ようするに、体よくさまざまな選択肢があるように書かれているが、実は選択肢は原則ただひとつ、「Webを用いた学生との小テスト出題・採点システム」だけなのだ。

このシステムが何年も前から学校に設けられていることは、私も知っていた。でもそれは授業を行う上でのひとつの選択可能な方法にすぎないはずだった。コロナウイルスのような不測の事態がなければ、このシステムに頼る必然性はなかった。それで、私はこのシステムを一度も使った事がなかった。そこへコロナウイルスが来た。この複雑怪奇なシステムを可及的速やかに使いこなせるようになり、あと1週間くらいで訪れる本来の始業日までに学生への課題をアップロードせよということだ。まいった。

まいったのは、これだけではない。考えてみればすぐにわかることだが、新1年生のための授業を受ける学生は、当該教科の予備知識がほとんど、あるいはまったくない状態で初回授業に訪れる。その学生にたいして、顔を合わせる授業なしで4月のすべての授業に相当する分量の課題を出せという。何も知らない新1年生に出せる、それほどの分量の課題とはいったい何だ。まいった。

コロナウイルスのせいで、今年の大学の授業は滅茶苦茶になる。いちばん気の毒なのは学生だ。本来ならば大学から十分にガイダンスを受け、人によっては入部したサークルの先輩から口コミでお勧め授業や得する授業の取り方を教わり、最初の2回ほどの授業では講師との相性や授業との相性が悪ければ履修を変更できる。それらのことが、今年はかなり制限される。ガイダンスは受けるが、おそらく大勢が集まることをできるだけ避け、時間的にも長々とはしないだろう。先輩からの口コミは皆無。講師や授業との相性はわからぬまま履修が確定する。

そんなことを私は、午前2時台に布団の中で考えてしまった。もう眠れるわけがない。こうなったら起き上がって何か仕事をするしかない。


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