SSブログ

震災後の放射能漏れ問題 まとめ1/2 牛について [震災後の放射能漏れ問題]

7月25日のNHKクローズアップ現代は、じつに有意義な番組だった。これまでの放射能牛問題の疑問点やポイントを扱ってくれた。このところ毎日のように牛関係のニュースがあり、さらに私自身の仕事も忙しかったので、ブログ記事にするのはかなり遅れてしまったが、それでもこの番組の内容は今なおアクチュアルだ。この「まとめ1/2」は、25日のクローズアップ現代を中心に私の感想も差し挟みつつ書く。この番組以後に出てきた事件やネット上で見つけた情報については、またの機会に「まとめ2/2」として書きたいと思っている。

**** はじめに ****

多量の放射性セシウムを含む牛肉と稲藁の関係は、ここで繰り返すまでもないだろう。万一この記事を10年後に読んだ人が忘れているならば、このブログの以前の記事を読めばわかる。だからここではクローズアップ現代が番組冒頭で紹介した、放送の時点でのデータだけを挙げよう。汚染が確認された稲藁は岩手・宮城・福島・栃木の4県のものであり、それが15の道と県で肉牛に与えられた。番組では日本地図が出たのでどの県かもわかる。北は北海道から西は島根まで。放射性セシウムに汚染された稲藁を食べた疑いのある肉牛は、番組放送時点で15道県、2,646頭。このうち38頭の牛肉からは国の暫定基準値を上回る放射性物質が検出されている。

**** 気にするのは牛肉だけで良いのか ****

私は、毎日のように放射能牛肉のことが報道される中で、ふと心配になる。日本人はひとつの物事が注目されると猫も杓子もみんなそればかり報道し、そればかり話題にする癖がある。その他の事は目もくれなくなる。そしてまた別の物事が注目されると猫も杓子もそっちへ行って、それまで注目されていた物はどうでもよくなる。今は牛肉牛肉という状態で他の食品の安全性がほとんど話に上らないが、牛肉以外は今どうなっているんだ?私はそう思った。この疑問にたいする答えは、クローズアップ現代からある程度は読み取ることができる。

クローズアップ現代が言うには、汚染された牛肉の流通を防止することができなかったことで、他の食品にも同じようなことが起きているのではないかという懸念が生まれている。そう、疑問はそれについてだ。そしてその答えは

「福島第一原子力発電所の事故の後、野菜や牛乳など様々な食品が検査対象となっていた中で(後略)」

まあ正直なところ、食品全般についての番組内での言及はこれだけだった。検査対象にはなっている。でもどんな検査?牛肉だって検査対象になっていたけどセシウムはそれをすり抜けた。食品の検査はきっと、牛肉に対して事件発覚以前に行われていたような、膨大な量の食品からほんの一部のサンプルを取り出しての検査なのだろう。食品に機器を近づける程度の検査?それともゲルマニウム半導体検出器を使った検査?そこまで掘り下げてくれたら有難かったが、今回の番組のテーマが牛肉だから、残念ながらそこまでは望めない。

しかしクローズアップ現代では、牛と牛肉については詳しく教えてくれた。クローズアップ現代がひとつの質問を出して言うには、稲藁を餌として与えられているのは肉牛だけなのか?そうそう、それは知りたい。牛肉の話題はたくさん出るが、牛乳の話題が出ない。どちらの食品も牛から産出されるものなのに。気になる。そしてクローズアップ現代がこの質問に答えて言うには、稲藁を与えられているのはおもに肉牛。乳牛は敷き藁として使っているが、一般的には餌として与えていない。豚や鶏はトウモロコシなどの飼料を与えている。なるほど、食品にたいする放射能問題を稲藁由来のものに限れば、とりわけ心配なのが牛肉であり、その他の食品はそれに比べて危険度が非常に低いということか。まあ、乳牛が敷き藁を食うこともあるだろうけど、そこまで言っていたらきりがないからそれはもう言わない。

ちなみに、なぜ乳牛には稲藁を食べさせずに肉牛には稲藁を食べさせるのかについて、クローズアップ現代が言うには、稲藁は牛の消化を助け、出荷直前に与えると肉を霜降りにする効果があるとされる。私は以前に他のニュース番組で、肉牛農家がインタビューに答えているのを聞いたことがある。それによると、肉牛には牧草を食べさせない。なぜなら、牧草に含まれる何とかいう物(ありふれた物の名前だったが忘れてしまった)が牛の脂肪を黄色くしてしまうから。稲藁を食べさせると奇麗な白い脂肪になると言っていた。

結局、この節のタイトル「気にするのは牛肉だけで良いのか」にたいする答えは、「食品にたいする放射能問題を稲藁由来のものに限れば、牛肉だけで良い」となる。

それでは、食品にたいする放射能問題を稲藁に限っていいのか。いや、もちろん他の食品にもさまざまな事情があり、たとえば福島県ではセシウムが付着した果樹の樹皮をはがして果実への影響を防ぐなどの措置が取られている。だから質問の言葉をもっと厳密にしよう。なぜ今、とりわけ稲藁が放射能汚染源として注目されるのか?

**** なぜとりわけ稲藁が? ****

クローズアップ現代によれば、宮城県北部では牧草から国の目安の2倍の放射性セシウムが検出されたが、稲藁から検出されたのは目安の20倍だった。牧草と稲藁の間になぜこれほどの違いがあるのか。いったい稲藁の何が特別に他の物と違うのか。

クローズアップ現代によると、稲や稲藁の構造が多くの水を吸収しやすいということが牧草と異なるらしい。話を続ける前に、稲藁のセシウムが一体どこから来たかをはっきりさせておく必要がある。セシウムは雨と共に来た。雲のような状態の放射性セシウムは3月15日に宮城県北部にまで達していた。この日この地域で雨が降っていた。大気中の放射性セシウムが雨で落とされ、屋外にあった稲藁を汚染させたとみられる。さて、稲の茎を通る導管などにセシウムを含んだ雨水が多く吸い込まれた。ここまでならば、その濃度はまさか国の目安の20倍には達しなかっただろう。ところが外に放置してあった稲藁はやがて乾燥した。乾燥によって水は蒸発するが、セシウムは残る。雨が止んだ後も水たまりから雨水がしみ込む。また乾燥すると水は蒸発するがセシウムは残る。これを降雨のたびに繰り返し、セシウムが濃縮されていったと考えられる。

つまり、稲藁だけがとりわけ注目されるのには理由があり、正しいことだ。他の物をないがしろにしているわけではない。とはいえ、稲藁と同じように吸水性に富み屋外に放置してあった物は同様に気を付けなければならない。クローズアップ現代の放送日より後に園芸用品の腐葉土から高濃度の放射性セシウムが検出されたが、これもまさに稲藁と同じ理由からセシウムを多く含むに至ったと思われる。

話を稲藁に戻そう。稲藁にセシウムが含まれた経緯はわかった。では、それが危険であることはわからなかったのか?どうして肉牛の口に入ってしまったのか?

クローズアップ現代によると、国は事故の直後に一度、屋外にあった家畜の餌に注意するよう呼びかける文書を出した。しかしそこには「牧草、乾草」と書かれるのみで、「稲藁」という言葉はなく、農家への周知も徹底されなかった。稲藁を乾かすために春先まで屋外に置いておくことがあるのを、農林水産省は知らなかった。私が他のニュースで聞き知ったところでは、上記の文書は畜産農家にたいして出され、稲作農家には出されなかった。これはつまり、春先まで稲藁が屋外にあるとは思わなかったからだ。また別のニュースで聞き知ったところでは、畜産農家にたいして出された文書を、実際には知らなかった畜産農家がある。その理由は、各農家に通知をするはずの役所が、大震災直後の混乱でそれどころではなかったかららしい。また、原発から遠く離れた土地で高濃度の放射能が検出され、国の警戒網があまりに狭すぎた件については、クローズアップ現代が言うには、汚染の広がりを示す詳しいデータや地図が4月5月の時点では政府部内でも十分共有できていなかった。私の感想としても、今回の放射能騒動は多くの部分で国の対応が後手に回ったと思える。本来は事前に作られた警戒網で放射能を含んだ物品がブロックされてほしいのに、現実には放射能物品が出荷・流出したことが判明してから初めてその原因が明らかになっている。

放射能から国民を守るための政府の防御措置には、様々な理由からいくつもの大穴が空いてしまったのだ。この日本国の失態を、他の原発をもつ国々はぜひとも教訓としてほしい。「自分の国は大丈夫だ」などと根拠のない自信をもってくれるな。

クローズアップ現代では他のことも言っていたが、これ以外の情報は他のブログ記事に書いておいたのでここでは割愛する。

**** 最後に ****

この「まとめ1/2」の最後に、我々がもっとも確認しておくべき事柄を挙げる。それも私の言葉としてでなく、厚生労働省 大塚耕平副大臣の言葉としてだ。

「この放射性物質との、・・・つきあいは、もう日本はこれから、かなり長い間、あー・・・まあ、受け入れざるをえない状況になっておりますので(後略)」

半減期が30年の放射性セシウムは、それがもつ「毒」の有効期間が少なくとも30年間ある。だから少なくとも30年後まで、日本で暮らす人は日本人であろうと外国人であろうと、放射能のことを心の片隅に置かなければならなくなった。とくに食品と、一部の園芸用品(腐葉土)と、子供が遊ぶ場所(子供は公園でだけ遊ぶとは限らないし、とくに小さい子は土いじりした手を口へ持って行くことだってある)と、それに、買い手のつかない住宅用空き地がすぐ隣にあって、そこに引き抜かれた大量の雑草が「稲藁のように」放置されている場合にはそういうものも、ほんの少しでいいから気にしなければいけない。いつも気にしていたら気分が暗くなってしまうから、たまに、ほんの少し気にすればいいと思う。でもまったくの能天気は絶対だめだ。私は以前に予見したぞ。福島沖のカレイ。土地の除染が済んで人々が福島沖で漁をするようになってからだから、まだ何年先のことかはわからないが、まさにそれゆえに危ない。カレイは人々が忘れた頃、いや、いいかげんに忘れたいと思う頃にセシウムを連れてやってくる。

コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 0